ダメな方の異世界召喚された俺は、それでも風呂と伴侶を愛してる

おりく

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伴侶の章 アレナドふたりの、はじめてがいっぱい

メルヴィン・アレナドは翻弄される 01

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最初にあいつを目にしたとき、なんてキレイな男だろうと思った。

神秘的な青みがかった灰色の瞳、黒曜石のように艶めく髪、透き通る瑞々しい肌、スラリと伸びた四肢…。
他にも挙げればキリがない。

まるで美しいモノだけを集めて創られた、人ならざる者なんじゃねえか……ってな。
あの男に選ばれるヤツはさぞかし秀でた人間なんだろう、とも。
まあ、オレらだったんだけどな!

初対面で、一度で良いからあんな男に抱かれてみたいと思ったことはナイショだ。



しかし驚いたのはジェイデンだ。
その日の朝、部屋を出たときには確かにいつものあいつだった。
穏やかで優しく、どこか影のあるオレの弟。
生い立ちのせいもあっていろいろなモノを諦めてきたからだろう。
アンジェラを名乗って雰囲気は明るくしていたが、本質は変わらなかったのにな。
それがどうだ。
たった半日で見違えるようになった。

ルーシャが「無自覚にべた惚れで、既にメロメロです!!」なんて言っていたが、まさにその通りだった。
シオンを見る目には熱があった。
オレの知らないジェイデンだった。

戸惑いながらも正直うれしかった。
兄弟は何人いるか判らないほどたくさん居るらしいが、オレの弟はあいつだけ。
その弟の閉ざされた世界を開放するヤツが現れたんだからな。

幸運なことにお互い憎からず思っているようだったし。
たとえジェイデンが惚れちまった男が住所不定無職でも、目出度いことには違いない。
まあ、その相手が見た目以外もトンデモナイやつだったが。

実力を見るのにジェイデンと手合わせをさせれば、入念な準備をしてアッサリと喉元に刃を突き付けてみせた。
あいつだって手を抜いてたわけじゃないのに、信じ難いことに細い身体で全ていなしていた。

さすがにオレまで負けないだろうと思っていたが、本気を出させることすらできなかった。
完敗だ。
ヘタすりゃ40キロ近く軽い相手にあんな投げられ方をするなんて、予想できるかってんだ!

まあそれも負け惜しみだ。

オレらに細い細いと言われて拗ねるなんて随分と可愛いじゃねえか、なんて思っていたオレがバカだった。
感情では熱くなっても頭は冷えていて、意地になってオレを投げに来たのかと思えば、着実に布石を打ってやってのけた。
アタマを使いながらの戦闘が淀みなくできるなんて、日々の研鑚を続けなければ不可能なことだ。

見た目がキレイなだけじゃない。
精神も頭脳も技術も文句のつけようがなかった。

ジェイデンの見る目は確かだった……なんて思いながら意識を手放したオレが目を開けて見たものは、オレを抱き上げながら心配そうに見つめてくる、とんでもなくキレイな顔だった。

ああ、昔はこういうシチュエーションに憧れていたな…なんて思ったのがいけなかった。
心を捧げる相手を見つけたジェイデンが羨ましかったのもダメだった。
そこからは顔を隠して負け惜しみを言うことしかできなかった。

よりにもよって、弟と同じ男が欲しいなんて!

しかも褒美に求められたのは胸筋だった。
ランクや依頼で便宜を…なんて事を言われるとばかり思っていたから不意打ちもいいトコだ。
弟の惚れた男に横恋慕するわけにもいかないし、記念に触ってもらうかと分厚い胸を差し出せば、予想外に褒められた。

その後に弟の前であんな辱めを受けることになろうとは…。
なんなんだあいつの言葉は!
このオレがだ!
逆らえないし、逆らう意思さえ奪われたぞ!
それに何だよ、あのパンツ!
はっハレンチだ!!

会話を進めるうち、シオンがオレとジェイデンを本気で欲しがりはじめたことに気が付いた。
オレらを欲しがる奴らは、予め地位や見た目を知っていて初めから発情していたり、知った瞬間に欲の籠もった目で見てきたりした。
たがあいつは、オレらの人となりを知って好ましく感じていったようだった。

ぶっちゃけ発情しそうだった。
喰らい尽くしてしまいたいなんて、初めて言われたぞ!
オレもジェイデンも欲しがるなんて信じられない。
それにオレらの望むものに薄々感づいて、それを叶えようとさえしてくれている。
見た目だけじゃない、中身も極上の男だ。

本音を言えばオレだって囲われたい。

だがオレは王都のギルドマスターだ。
オレが望めば誰かを囲うのは簡単だ。
逆にクソみてえな慣習のせいでオレが囲われるのは難しい。
ジェイデンも一緒なら、囲えるのは王族や公爵家くらいだろう。
ハンターなら最低Sランク。
他にも際立った実績が必要だ。

それならばジェイデンを…とギルドで上を目指してほしいと頼み込んだ。
了承はしてくれたが貴族に良い感情を持っていないのが気掛かりで、夜に部屋を訪ねた。
改めてジェイデンを頼む、オレのことは気が向いたら抱いてくれと懇願するために。

結果は返り討ちにあった。

なんなんだ、あいつ!
格好良過ぎておかしくなりそうだ。
オレが惚れた男を信じろとか、シオンに愛されて幸せになるんだとか、もういっそ今すぐ抱いてくれ!ってくらい嬉しかった。

もうダメだ、あいつ以外なんて考えられない。

それに、オレのイチモツを見ても嫌悪感を持たないどころか、かっ、可愛いだなんて!
しかもシレッと飲みやがった!
あんなキレイな顔なのにエロ過ぎる。
またとっくの昔に諦めていたことが心の奥底から蘇る。
全部全部シオンのせいだ。

あいつがオレを望んでくれたから…。
オレがあいつに惚れてしまったから…。

正直に胎に子が欲しいと白状すれば、予想外に喜ばれた。
きっと孕ませるとも言ってくれた。
信じられないが、それは現実だった。

ジェイデンが覚えていた子どもの頃のオレの夢……。
オレより強い男に望まれて……愛し、愛され嫁ぐこと。

不可能だと20年も昔に諦めたのに、それ以上をくれる男に出会えた。

オレの世界は一変していた。
幸せ過ぎて涙が出たのは初めてだった。

オレの全てはお前さんのモンだ、シオン。
イイ歳して若い男に夢中だなんて恥ずかしいが、愛してるぜ。
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