ダメな方の異世界召喚された俺は、それでも風呂と伴侶を愛してる

おりく

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4章 身体強化とその後のアレやコレ

03

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「メルヴィン、さすがにそれだけじゃわからないと思うよ。ね、シオン?」

もげて死ぬって何だ?
心底聞きたくない単語だぞ。

「男性体として、すごく無念な死に方をするって事しか分からなかった……。」

今夜のことを考えると、メルヴィンとジェイデンに使前にもげて無くなったら困る。

「あっ、そっ、そうか。確かにソッチにも取れちゃう言い方だったね。ええと……、陶器の人形の腕だけを金属にして、高い所から落とした結果を想像してみて。」

………腕以外が砕けるな。
逆だと体幹と足は無事だが、腕が砕ける。
そういう事か。

「もう分かったでしょう?脅しじゃなくて、言葉通りもげることもあるからね。わたしは基礎の活性化の後に、防御を習得することを勧めるよ。無事にわたしたちのもとへ帰ってきてほしいから。」

勧めると言いながらお願いされたら断れない。

「分かった。その順に習得を目指すよ。」

俺だって無事に帰って、お帰りのキスをしてほしいからな。

「昨日、君の動きを見たけど、基礎の活性化は既に使えると思う。」

「オレもそう思う。素手で試すより剣の方が危なくないから、ジェイデンの手本の後で真似してみろ。」

「分かった。ジェイデン先生、よろしくお願いします。」

「はい。では発動するよ。…………違いがわかるかな?」

空気が変わったのはわかる。
俺が知るものに置き換えると、気を巡らせるというところか。
それを体表にまで拡張し、留めると魔力を纏えそうだ。

「なんとなく、感覚的なものでなら分かった。」

「最初だし、それで十分だよ。では次は打ち込み用の人形ひとがたを突いてみるからね。行くよっ!」

そう言ってその場で突きを繰り出すと、金属製の重たそうな人形が訓練場の壁まで吹っ飛んでめり込んだ。

「じゃあ、やってみて。」

呼吸を整え、気を巡らせ、その気を纏い、留めつつ循環させる。
剣は身体の一部だ。
大丈夫、イメージはできている。
後は実践あるのみ。

「はっ!」

気合いの発現とともに突きを繰り出す。
が、ジェイデンと違って人形は吹き飛ばなかった。

その変わり、人形に穴が開いた。
……………………轟音がして、後ろの壁にも。

どうしよう、魔法で修理できるか?
駄目ならラースに頼もうか…。
こんなにも早くに例の割引を使う事になろうとは。
ちょっと泣ける。

だが初心者の俺でもこれ程の威力が出せるなら、攻撃が単調で直線的になってしまうのも頷ける。

「メルヴィン、申し訳ない。人形と壁を壊してしまった。……メルヴィン?」

「「……………。」」

「……っはー。お前さん、全部できてる。オレらに教えられることはねえ。それと、人形と壁は《リペア》で直るから大丈夫だ。」

「本当に初めてなのかい?教えてないのに剣にまで強化を乗せるなんて…。それ、割と熟練の技なんだよ?なんだろう……想像力が凄いのかな?」

「ジェイデン、お前の見立ては確かだった。コレを喰らって息があるのはオレらくらいだ。他のやつらなんか、それこそ木っ端微塵だな。」

「そこまでか?」

想像力が豊かなのは日本の文化のおかげだろうな。
それに、まだまだ改良の余地はたっぷりある。

「そこまでだ。これにプラスして他の魔法まで使えるだろ?オレもやっと王国最強の看板を返上できる。また諦めて事が現実になる。お前さん、これ以上オレを夢中にさせてどうすんだ。嬉しいはずなのに困るな。」

「わたしも剣士最強の看板を降ろせます。ありがとう、シオン。本当に嬉しいです。でも加減を覚えないと、殲滅しかできませんね。それではハンターとして使い物になりません。」

俺は剣士ってわけじゃないんだけど、ジェイデンが嬉しそうだから黙っていよう。
しかしこのままじゃ駄目なのか。
最強でも目的に合わせて力を使えなきゃ、宝の持ち腐れってことか。

「そうだな。狩りに出て魔石も素材も持ち帰れなきゃ、ランクも上がらんし、稼ぎにもならん。まあ器用な男だ、何か考えるだろう。」

突きで大穴が開くなら、斬撃か?
ヨーコさんが作ってくれたのはレプリカの西洋剣(後にレプリカじゃなくなっていた事が判明)だけど、日本刀の切れ味をイメージするとか。
むしろ日本刀を作ってしまおうか。
どちらにしても試しながらやるしかないな。

「あとは身体強化しての人体への攻撃だが、威力が制御できるようになるまでオレとジェイデン以外には使うな。護衛依頼や匪賊討伐なら話は別だが、相手が死んじまう。良くて大怪我だ。お前さんなら攻撃魔法もすぐに使えるようになるだろう。身体強化無しでも相当強いし、戦闘中も頭が切れる。暫くはそっちを攻撃の中心に据えてやれ。防御はそのまま練度を上げりゃあ良い。」

「分かった、約束する。メルヴィンを先生と呼ぶ前に講義が終わりそうだな。」

メルヴィン先生とか萌えしかないのに残念だ。

「オレが先生とか身体が痒くなるぜ。お前さんが優秀で良かった。」

「ねえ、シオン。身体強化も他の魔法もイメージが大切だよ。魔法は術者の望みを叶える力だ。それが詳細なら、より精度や威力が高くなる。普通は生活魔法と他に1つか2つ、得意な分野の魔法があるくらいなんだ。わたしとメルヴィンは身体強化に特化しているしね。君みたいな万能型もそれなりに居るんだけど、いろいろと手を出してしまって器用貧乏になりがちなんだ。でも君なら多くの分野で頂点を目指せるって信じてる。」

「ありがとう、ジェイデン。取り敢えずSランクになれるくらいには習得してみせるよ。」

「ふふっ、それは楽しみだ。それに頼もしい。さあ、まだ時間はあるから練習しようか?」

「お願いします、ジェイデン先生。それにメルヴィン先生?」

せっかくだから呼んでみた。
照れて可愛いメルヴィン先生に殴り飛ばされたり、ジェイデン先生から突きを喰らって吹っ飛ばされたり、俺も二人を投げたりしながら、やたらダイナミックな手合わせをして午前中の時間は過ぎていった。
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