58 / 170
3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて
36
しおりを挟む
「お前さんにそう言われちゃあ、引き下がるしかねえ。ズルいぞ。」
「ええ、ズルい男です。」
そういえばジェイデンはずっと敬語だな。
「ジェイデンはずっと敬語で喋っていたけど、緊張していたのか?」
きょとんとしてしまったけど、どうなんだろう。
しかしジェイデンの『きょとん』は可愛いな。
「ああ、もともとがこちらの話し方なんです。君と会話するときの『だね』とか『だよ』という語尾の話し方もワザとじゃないんだけど、メルヴィンが居ると習慣で敬語になっちゃうんだ。だから今みたいに混ざっちゃっても気にしないでくれると嬉しい。」
「わかった。固くなってるんじゃなきゃ良いんだ。それで、俺にお願いがあるんだろ?」
緊張してないなら話せるだろう。
きっとメルヴィンのことだし。
「うん。あのね、自分でもすごく勝手で我儘で難しいことをお願いするのは分かっているんだ。でも君に叶えてほしいことがある。」
「俺じゃきゃ駄目なんだろ?努力はするから言ってみて。」
「あのね、シオン。メルヴィンとわたし、両方を君のお嫁さんにしてくれないかな?わたしだけをお嫁さんにするのも大変だけど、メルヴィンを娶るのはもっと大変だ。それなのに二人ともだなんて現実的じゃないのは分かっている。でもメルヴィンはきっとわたしに君を譲って、自分は時々抱いてくれれば良いって言うと思う。」
さすがに良く分かっているな。
さっき言われたばかりだ。
「でもね、それじゃあ駄目なんだ。君に望まれて幸せなのは嘘じゃないのに、メルヴィンが幸せになれなければ、わたしも本当の意味で幸せにはなれないんだ。すごく時間がかかるのもわかっているから、いつまでも待つよ。だから二人とも君のものにしてほしい。お願い、シオン。」
ジェイデンにお願いってされると嬉しいな。
きっと叶えるよ。
それにしても…だ。
「だってよ、オニイチャン。俺の言った通りだっただろ。それに、あんたの言動はお見通しじゃないか。弟の方が、よっぽど男前だ。」
バツの悪い顔したって駄目だぞ。
頬を掻きながらメルヴィンが話し出す。
そんな仕草も可愛い。
「それなんだけどな、ジェイデン。お前が今言った事を、さっきオレはシオンに頼んだんだ。ギルドで腹を括った、逃さねえって言ったけど、それがお前のためだってアッサリバレてな…。断られたよ。」
「それって……。」
メルヴィンがまだくっついたままで居た俺とジェイデンを抱きしめる。
「あのな、ジェイデン。オレも、お前も、シオンに愛されて幸せになるんだってよ。なあ、シオン?」
「ん。」
メルヴィンにぎゅうぎゅうされて幸せだけど、喋れない。
「シオンがメルヴィンを説得したんですか?」
「ん。」
ジェイデンの力も強くなった。
「さすが、わたしたちの未来の旦那様です。」
「ん。」
褒めてくれてありがとう。
でも、そろそろ本格的に苦しい。
抱きしめる力を緩めてもらうためにタップしたら、二人揃って離れてしまった。
二人の雄っぱいが………。
「ごっ、ごめんなさい!わたしたち二人がかりで抱きしめたら苦しかったですよね?」
「オレも悪かった。年甲斐もなく浮かれてたみたいだ。」
「大丈夫。聞きたいことがあって喋りたかっただけだから。」
ちょっと格好つけて痩せ我慢してるけどな!
「なんだ?大事なことか?」
とてもな。
だから神妙に頷いて尋ねる。
「婚姻のことなんだ。」
緊張からか、二人の空気が固くなった。
「二人をお嫁さんにもらうと俺もこの国の人間になるのか?と、思ってな。二人の母国なのに申し訳ないが、さすがに今はまだこの国の人間になりたいとは思えないんだ。拉致されてすぐだし…。二人が居るから住むけどな。それで、この国の人間になるなら俺の中で折り合いを付けないと…と思って聞いてみたんだ。」
貴族がゴミだらけの国はできれば遠慮したいが、二人の故郷だからな。
そして明らかにホッとした様子で、メルヴィンが答えてくれた。
「それなら問題無い。国に婚姻を届け出るんじゃなくて、ギルドに届けを出せば所属は変わらない。ギルドにはハンターと元ハンターを対象にしたパートナー制度があるんだ。」
「高ランクハンターは国の財産だからね。婚姻で増減すると困るんだよ。だから各国もこの制度を認めてる。あとはハニートラップ対策だね。色仕掛けで引き抜かれないように。」
そんな都合の良い制度があるなんて、整備してくれた先人に感謝しなくては。
「二人はパートナー制度でも良いのか?」
「ああ。」
「ええ。」
「むしろハンターならこっちがスタンダードだ。面倒くさい手続きとか、全部ギルドでできるしな。」
「じゃあ、きっと待たせる事になるけど、二人とも俺のところに来て欲しい。好きだ、メルヴィン。ジェイデン。俺の未来の花嫁たち。今日、出会ったばかりだけど、一緒に幸せになろう。」
二人の手を取り口付ける。
「絶対に逃さねえから覚悟しとけよ、オレの未来の旦那サマ。」
「わたしの全てはあなたのものです、わたしの未来の旦那様。」
そう言って、二人で俺の頬にキスをくれた。
そんな温かい雰囲気の中でジェイデンがメルヴィンに質問した。
「それでメルヴィン、わたしが訪ねる前に旦那様と何をしていたのですか?是非とも答えてください。」
わぁ…、質問じゃなくて詰問だな、コレは。
「ええ、ズルい男です。」
そういえばジェイデンはずっと敬語だな。
「ジェイデンはずっと敬語で喋っていたけど、緊張していたのか?」
きょとんとしてしまったけど、どうなんだろう。
しかしジェイデンの『きょとん』は可愛いな。
「ああ、もともとがこちらの話し方なんです。君と会話するときの『だね』とか『だよ』という語尾の話し方もワザとじゃないんだけど、メルヴィンが居ると習慣で敬語になっちゃうんだ。だから今みたいに混ざっちゃっても気にしないでくれると嬉しい。」
「わかった。固くなってるんじゃなきゃ良いんだ。それで、俺にお願いがあるんだろ?」
緊張してないなら話せるだろう。
きっとメルヴィンのことだし。
「うん。あのね、自分でもすごく勝手で我儘で難しいことをお願いするのは分かっているんだ。でも君に叶えてほしいことがある。」
「俺じゃきゃ駄目なんだろ?努力はするから言ってみて。」
「あのね、シオン。メルヴィンとわたし、両方を君のお嫁さんにしてくれないかな?わたしだけをお嫁さんにするのも大変だけど、メルヴィンを娶るのはもっと大変だ。それなのに二人ともだなんて現実的じゃないのは分かっている。でもメルヴィンはきっとわたしに君を譲って、自分は時々抱いてくれれば良いって言うと思う。」
さすがに良く分かっているな。
さっき言われたばかりだ。
「でもね、それじゃあ駄目なんだ。君に望まれて幸せなのは嘘じゃないのに、メルヴィンが幸せになれなければ、わたしも本当の意味で幸せにはなれないんだ。すごく時間がかかるのもわかっているから、いつまでも待つよ。だから二人とも君のものにしてほしい。お願い、シオン。」
ジェイデンにお願いってされると嬉しいな。
きっと叶えるよ。
それにしても…だ。
「だってよ、オニイチャン。俺の言った通りだっただろ。それに、あんたの言動はお見通しじゃないか。弟の方が、よっぽど男前だ。」
バツの悪い顔したって駄目だぞ。
頬を掻きながらメルヴィンが話し出す。
そんな仕草も可愛い。
「それなんだけどな、ジェイデン。お前が今言った事を、さっきオレはシオンに頼んだんだ。ギルドで腹を括った、逃さねえって言ったけど、それがお前のためだってアッサリバレてな…。断られたよ。」
「それって……。」
メルヴィンがまだくっついたままで居た俺とジェイデンを抱きしめる。
「あのな、ジェイデン。オレも、お前も、シオンに愛されて幸せになるんだってよ。なあ、シオン?」
「ん。」
メルヴィンにぎゅうぎゅうされて幸せだけど、喋れない。
「シオンがメルヴィンを説得したんですか?」
「ん。」
ジェイデンの力も強くなった。
「さすが、わたしたちの未来の旦那様です。」
「ん。」
褒めてくれてありがとう。
でも、そろそろ本格的に苦しい。
抱きしめる力を緩めてもらうためにタップしたら、二人揃って離れてしまった。
二人の雄っぱいが………。
「ごっ、ごめんなさい!わたしたち二人がかりで抱きしめたら苦しかったですよね?」
「オレも悪かった。年甲斐もなく浮かれてたみたいだ。」
「大丈夫。聞きたいことがあって喋りたかっただけだから。」
ちょっと格好つけて痩せ我慢してるけどな!
「なんだ?大事なことか?」
とてもな。
だから神妙に頷いて尋ねる。
「婚姻のことなんだ。」
緊張からか、二人の空気が固くなった。
「二人をお嫁さんにもらうと俺もこの国の人間になるのか?と、思ってな。二人の母国なのに申し訳ないが、さすがに今はまだこの国の人間になりたいとは思えないんだ。拉致されてすぐだし…。二人が居るから住むけどな。それで、この国の人間になるなら俺の中で折り合いを付けないと…と思って聞いてみたんだ。」
貴族がゴミだらけの国はできれば遠慮したいが、二人の故郷だからな。
そして明らかにホッとした様子で、メルヴィンが答えてくれた。
「それなら問題無い。国に婚姻を届け出るんじゃなくて、ギルドに届けを出せば所属は変わらない。ギルドにはハンターと元ハンターを対象にしたパートナー制度があるんだ。」
「高ランクハンターは国の財産だからね。婚姻で増減すると困るんだよ。だから各国もこの制度を認めてる。あとはハニートラップ対策だね。色仕掛けで引き抜かれないように。」
そんな都合の良い制度があるなんて、整備してくれた先人に感謝しなくては。
「二人はパートナー制度でも良いのか?」
「ああ。」
「ええ。」
「むしろハンターならこっちがスタンダードだ。面倒くさい手続きとか、全部ギルドでできるしな。」
「じゃあ、きっと待たせる事になるけど、二人とも俺のところに来て欲しい。好きだ、メルヴィン。ジェイデン。俺の未来の花嫁たち。今日、出会ったばかりだけど、一緒に幸せになろう。」
二人の手を取り口付ける。
「絶対に逃さねえから覚悟しとけよ、オレの未来の旦那サマ。」
「わたしの全てはあなたのものです、わたしの未来の旦那様。」
そう言って、二人で俺の頬にキスをくれた。
そんな温かい雰囲気の中でジェイデンがメルヴィンに質問した。
「それでメルヴィン、わたしが訪ねる前に旦那様と何をしていたのですか?是非とも答えてください。」
わぁ…、質問じゃなくて詰問だな、コレは。
0
お気に入りに追加
546
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い


被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…


○○に求婚されたおっさん、逃げる・・
相沢京
BL
小さな町でギルドに所属していた30過ぎのおっさんのオレに王都のギルマスから招集命令が下される。
といっても、何か罪を犯したからとかではなくてオレに会いたい人がいるらしい。そいつは事情があって王都から出れないとか、特に何の用事もなかったオレは承諾して王都へと向かうのだった。
しかし、そこに待ち受けていたのは―――・・


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる