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3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて

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「でもメルヴィンはウソをついていなかったのです。もともとわたしが自然に発情するのは男性体だったので、決定打になった事は間違いありませんが、女性体には発情できなくなりましたから。」

「ハンターになってからはとにかく上を目指した。いつジジイの執着が再燃するかわからなかったからな。貴族に抗えるだけの地位を手に入れるために突き進んだ。

だが、どこにでもクズは居るモンでな。ランクが上がったら寄って来やがるのさ。生きてる以上、溜まるモンは溜まるだろ?だからまあ、いくつかの娼館の世話にもなってたんだが、その中の一つで店ぐるみで睡眠薬を盛られてな。しばらくして腹の膨れた娼婦と娼夫が二人でオレらの子だから自分たちを囲えってギルドに乗り込んで来やがった。

衆人環視の中でオレらの子じゃあねえって、こっちでもブチかましてやったけどな!」

「そもそも不特定多数の客を取る人間が避妊魔法をかけていないなどありえないことですが…。その後、その娼館は潰れました。客の信用を無くしたのですから当然です。

わたしは騎士のときの事件と使われた薬が原因で、自慰をすることが怖ろしくなり自力で精を吐き出す事ができなくなりました。他人に発情できなくても、その…生理的には溜まるので、娼館では娼夫の方の手や口のお世話になっていましたが、それもできなくなって、ハンターを続けるのが辛くなりました。身体強化が得意と言いましたが、どんなに熟達しても性的なところも活性化してしまうので…。

その、ギルドでの出来事があってから欲が溜まってどうしようもなくなると、メルヴィンがわたしの性処理を手伝ってくれています。」

「ジェイデン!」

「メルヴィン、わたしはシオンを信じています。話してわたしなど要らないと言われたなら、わたしの見る目が無かっただけのこと…。勝手に暴露してしまい、あなたには申し訳ないですが。

……その後Sランクになりましたが、なるべく早く引退することにして『アンジェラ』を名乗り始めました。祖父や、わたしとその子種を欲しがる輩には無価値な存在である事を思い知らせるためです。

彼らにとって価値があるのはわたしではなく、わたしの子種と、それで女性が産む子だけ…。

メルヴィンはギルドマスターに、わたしはこの宿を経営することで誰も囲わずに生きてきました。メルヴィンが居なければ、今頃わたしの命はなかったとも思っています。

こんなわたしでも君に望んでもらえますか?」

過去の出来事でも、未だに傷付き続けている事を明かすなんてどんなに勇気が必要なのか…。
それでも俺とのこれからを望んでくれた。
そんな彼の強さが愛おしい。

「ジェイデン、あなたの過去を教えてもらえる程に見込んでもらえて嬉しい。どんな事があったとしても、今、俺の目の前で凛と佇むあなたは美しいと思う。だからジェイデン……未来は俺と生きてくれ。」

彼の右手を取って口付け、返事を待つ。

「………喜んで。わたしの全てはシオンのものです。…っ嬉しい、シオン。嬉しいです。っぅう、っ。メルヴィンも、今まで、ずっと、ありがとう。」

泣き出したジェイデンを抱きしめて告げる。

「あなたの誠実なところも素敵だよ。ジェイデンの辛さは多少なりとも分かるつもりだ。これからは何かあったら遠慮なく俺に言ってほしい。」

「……っ、ぅ、慰めて、くれなくても、君が、いてくれるなら、大丈夫、です。」

「いや、俺も誘拐されて薬盛られて前を使われたことあるんだ。」

「ふぇ!?」
「あ゛!?」

「どういう事ですか!?詳しく教えて下さい!」
「誰にヤられた!?縊り殺してやる!」

いきなり凄い圧力だ。
二人とも殺気まで漏れ出てヤバイ。

「落ち着け、他の客が騒ぐぞ。」

「あっ、すみません!」
「ぐっ!すまん。」

「俺は子どもの頃から何度か誘拐されたことがあるんだ。10歳を越えた辺りからは特に性的に身の危険を感じるようになってたしな。

それで学舎に忍び込まれて拐われたときに薬を飲まされて、気が付いたら医者のところのベッドにいたんだ。睡眠薬と下剤…、腹の中をキレイにする薬を使われたらしい。医者の話だと、後ろは無事だったらしい。痛みとか違和感も無かったから、多分、そうなんだと思う。

ただ、前はしゃぶられ過ぎて痛かった。なんか、子種を飲むのが好きな性癖だったんだと。そいつの供述によれば舐めて飲んだだけだって言ったらしいが、きっと嘘だ。罪が軽くなるようにそう言ったに決まってる。」

「シオン…。」
「………子どもに何てことしやがる。」

確かに平気じゃない。
でも大丈夫なんだけどな。

「なんだ?メルヴィン。聞きたいことがあれば聞いてくれて良いぞ。」

あんたたちになら答えよう。

「あー、その、……………シオンのの初めてはそいつってことか?」

「知りたい?なら教えるよ。」

「知りたいっちゃあ、知りたい。だがな、なんとも、こう…、な?」

珍しく歯切れが悪いな。
あんたの優しさに応えよう。

「じゃあボカして教える。いつかはそんな目にあうって頭のどこかでわかってたけど、初めてが犯罪者とだなんて不能になりそうだろ?だから精通した直後に『この人なら』って思えた人のところに閨の手ほどきを頼みに行ったんだ。俺のことを想って一ヶ月だけの約束で受けてくれたよ。

その人との間にあったのは親愛だけど、心の通った時間だったと思う。だから大丈夫。心配いらないよ。あんたたちのことは問題無く愛せる。」

「言い難いことをありがとうよ。まだ他にやられたことはねえのか?」

うーん、あるか?………あったな。

「あー、俺のペニスの型をとられた。ソイツにされたのはそのくらいかな?」

そう答えた瞬間、二人の空気が変わった。

「オレも見たことねえのに!」
「わたしも目にしたことがないのに!」

そこか?そこなのか?
しかしアレナド兄弟、息ぴったり過ぎて少し恐い。

まあ警察署で確認のために見せられたときのいたたまれなさったら無かったし、アレは二度と味わいたくない。

「シオン!お前さんの故郷を今すぐ思い出せ!犯人に目に物見せてやる!」

「そうです!Sランクハンターの実力を身体に思い知ってもらわないと!」

おおう…。
怒ったときのアケミさんとヨーコさん思い出すな。

「なに笑ってんだ!こっちゃあ真剣だぞ!」

ジェイデンもコクコクして可愛い。

「いや、昼間に絵を見せただろ?あの人たちもそうやって俺のために怒ってくれたなって思い出してたんだ。メルヴィン、ジェイデン、二人ともありがとう。俺を想ってくれて嬉しいよ。」
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