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3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて

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「何だそれ!じゃあ望んでもメルヴィンは子が孕めないってことか!?」

俺の魔法でどうにかなるだろうか?

「落ち着け、シオン。そうじゃねえ。解除すりぁ孕めるようになるから!」

「そうか、……良かった。」

俺は今のところ、子どもはできてもできなくても構わないが、メルヴィンが望むなら叶えてやりたい。
もしかして夢ってコレか?

「あのな、ハンターってのは生命の危険があるだろ?だから性衝動が燃え上がるのは仕方ないが、それでデキると困るんだ。その日暮らしのヤツだってそれなりにいるからな。それで大半は孕めないように避妊魔法をかけてるんだ。だからオレが特別なワケじゃねえよ。まあ、オレとジェイデンは孕ませることがないように、後ろだけじゃなくて前も避妊してるけどな。」

そっちも何かあったんだな?
そのうち聞いてみよう。

「わかった。驚いたけど、メルヴィンの望みに影響が無ければ良いよ。」

「心配してくれたお前さんにゃ悪いが、オレは嬉しかった。本当にオレを孕ませても良いって思ってるってわかったからな。シオン、お前さん本当に……。いや、ありがとうよ。」

すごく驚いたけど、メルヴィンが喜んでくれたならそれでいい。
しかし、コレだけは聞かなくてはならない。

「メルヴィンを傷つけたくて聞くんじゃないとわかってほしいんだが、大体何歳くらいまでが妊娠、出産の適齢期なんだ?」

子どもができても、高リスクな出産でメルヴィンが居なくなったんじゃ辛過ぎる。

「個人差はあるが、一般人は40前後だ。後は母体の安全を考えて魔道具にする。身体強化できるやつなら45前後。それに当てはめりゃあ、オレはあと十年くらいだな。頼むぜ、シオン。」

「待っててしか言えなくて情けないけど、待ってて、メルヴィン。」

無職からは脱却したけど、先は長いな……。

「ははっ!そんな情けない声だすんじゃねえよ。魔道具でだって子はできるし、イザとなりゃあ婚姻前でも子種を貰ってオレが産んで育てたって構わねえ。お前さんはまだ若い。そんなに気負わなくて良いんだ。お前さんみたいにオレとジェイデンを想ってくれるやつがいるだけで、オレらは幸せだからな?それを忘れんなよ。」

「わかった。それに甘えないように頑張るけど、ありがとう。メルヴィン、可愛いのに格好良いとかズルイ。また惚れ直すだろ。」

「お前さんもそうやってると可愛いぞ。さっきまでは別人みたいに色っぽかったけどな。」

そう言って俺を抱きしめてくれたメルヴィンが愛おしい。
異世界2日目で将来の嫁?旦那?ができた。
早く俺のところに囲いたい。

名残惜しいが身体を離す。
そろそろジェイデンも訪ねて来そうだしな。

そこでメルヴィンの下半身を放置していた事に気が付いた。

「メルヴィンごめん、そのままにしてた。」

着衣を整えようとしたら、止められてしまった。

「また兆すと困るから自分でやる。どっか向いててくれ。」

さっきまで俺が咥えて可愛がってたのに、恥じらうなんて可愛いな!
もうダメだ、メルヴィンが何をしても可愛いかもしれない。

「しかしあんなにアッサリ出しちまうとは…何ともなぁ。」

「他のやつだともっと持つのか?」

気になるからつい聞いてしまったが、マナー違反だろうか。

「なかなかイけなくて嫌になることもあったくらいだ。歳かね?……若けえオトコができたってのに、考えたくねえな。」

これは自惚れても良いのか?

「俺だからじゃないのか?あんた本当は抱かれたいのに、今まで抱く側だったんだろ?」

「……………………………確かにそうかもしれん。なんだ、そういうことか。歳食ったせいじゃないなら良かったぜ。しかしお前さんもなかなか言うな。」

「だってそうだったら嬉しいから。それにメルヴィンのナカに入ったら、俺も早く果てそうだ。いろんな人を抱いてきたあんたに満足して貰えるように気合い入れないと。」

俺の沽券に関わる大問題だ。

「そうだとしても、お前さんのは若けえからだろ?気にするこたぁねえよ。」

10代じゃないし、それは避けたい。

「25は性的にそんなに若くないと思う。それに俺が早かったら、相手がメルヴィンだからだと思ってほしい。」

情けない事を言っているし、恥ずかしいから背中に抱きついて話しかける。
やっぱり背中も格好良いし、気持ち良い。

「ははっ!相手がオレだからか!そんなセリフ言われる日がくるとはなぁ……。人生捨てたモンじゃねえってのは、こういうことかね?」

「そうだとしたらすごく嬉しい。メルヴィン程の男の人生を、少しでも豊かにできるなら俺も幸せだ。」

なぜか満たされる、不思議な暖かさを感じてる。
きっと俺は今、幸せなんだ。

「まあ、オレの世界がひっくり返った日だって事は間違いねえな。これからはこれが日常か………悪くねえ。」

「なあ、メルヴィン。何度でも言うが、俺は絶対にあんたを諦めない。だからメルヴィンも俺を諦めないって約束してくれ。ギルドで俺を逃さないって言ってくれたけど、あれはジェイデンのための言葉だろ?ジェイデンに俺を譲って、自分は日陰で愛されれば良いって。」

「…………わかった。オレもお前さん……シオンを絶対に諦めねえ。俺にはシオンだけだ。」

「嬉しい、ありがとう…俺のメルヴィン。大好きだ。『愛してる』はもうちょっと待ってて。」

待たせることが申し訳ないし、自分が情けない。
それでもメルヴィンが欲しい。
幸せなのに悔しいだなんて、感情ってものはなんて厄介なんだ。

「オレも言ったぞ、気負わなくて良いって。それに焦らなくても良い。オレはジイさんになっても待ってるからな。」

嬉しいけど、メルヴィンが男前過ぎて心臓が痛くなりそうだ。

「も、メルヴィン、ほんと好き。」

俺の語彙力も瀕死になってしまって恥ずかしい。
背中をぎゅうぎゅう抱き締めてしまう。

そんな事をやっていたらドアが『コンコン』と鳴った。
どうやらもう一人の待ち人がやって来たようだ。
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