53 / 170
3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて
31
しおりを挟む
「シオン、起きているか?起きていたら俺の話を聞いてくれ。」
メルヴィンの声を聞いてからドアを開けて客室に招き入れ、窓際のテーブルセットに腰を下ろした。
彼は少し緊張しているようだ。
「珍しい服を着ているんだな」と言われたので、「俺の故郷の伝統的なパジャマだよ」と答えた。
雑談を挟んで、本題に入る。
「話ってのは、オレとジェイデンの事だ。お前さん、貴族が嫌いだろ?突然拉致されたんだ、それは当たり前だ。だがジェイデンはオレと家を出るまで、そこそこデカい貴族の家の息子だったんだ。ちなみにオレはそこの家の私生児だ。貴族の親が共通してて、もう一人のオレの親はハンターをやってる男性体だ。お前さんはオレらの親が貴族でも、オレらとは混同しないって分かっているが、一応言っておく。」
「俺は貴族が嫌いというより、馬鹿な貴族が嫌いなだけだ。馬鹿な一般人より権力を持っている分、質が悪いからな。それでも貴族全てがクズだとは思っていないよ。」
「そうか。大丈夫だと思ってはいても不安だったんだ。それを聞けて安心した。ジェイデンの実家の当主はオレらのジジイで、6歳のジェイデンに『お前はこの家のために畑を耕し種を蒔け!その後は家の養分にでもなれば良いのだ』って種馬扱いを宣言するようなヤツなんだ。子どもにそんな言い方したってわかるわけねえのにな。
まあ、そんな家だがあいつは真っ直ぐで良いやつに育って騎士になった。何年か務めて、あいつは酷いめにあって騎士を辞めたんだ。理由はオレから言う訳にはいかねえが、精神的に大分参ってな。見兼ねたオレが家と縁を切らせて連れ出したんだ。
あいつはお前さんにすっかり惚れてるだろ?だからオレは、お前さんにあいつを頼むって、絶対に裏切らないでくれって頼みに来たんだ。オレの大事な弟なんだ。本当は可愛いやつなんだ。お前さんにはあいつを大切にして貰いたい。どうか、どうか、あいつを頼む。」
そう言って俺に懇願するメルヴィンに答える。
「大切にする。共に生きて行きたい。だからハンターのランクも上を目指す約束をした。だがメルヴィン、俺がそう思っているのはジェイデンだけじゃない。あんたもだ。」
「そりゃあ嬉しいが、現実的じゃあねえ。並のSランクじゃオレを囲えねえのは分かってるだろ?だから囲える可能性のあるジェイデンを囲って、オレのことはたまに思い出したときにでも抱いてくれりゃあ良い。オレはそれだけでも幸せだ。」
こういったことを言われるとは分かっていたが、腹が立つな。
「じゃああんたに頼まれた事は、全て断る。」
「シオン!」
「あんたは俺に言っただろ、二人もなんて贅沢だって。その通りだ。俺はあんたたちに出会って贅沢で我儘になったんだ。一人じゃ駄目なんだ。俺は二人とも欲しいんだ。
それに、何があったか知らないが、ジェイデンはあんたに負い目を感じてるだろ。あんたが身を引いて自分だけ俺のところに来たって彼は決して幸せにはなれない。あんたにはそれが分かってるだろ?」
「分かってるさ!分かってても他に方法なんか無いだろうが!」
ここまで断言されるとは、俺も舐められたものだ。
俺の自信がどこから来るのかは分からないが、メルヴィンとジェイデンが見込んでくれたんだ、不可能なんてない。
「メルヴィン。俺は誰だ?あんたが惚れた男だぞ。あんたは俺を信じて待っていろ。時間はかかるかもしれないが、絶対にあんたたちを諦めない。俺のメルヴィンとジェイデンだ。二人とも俺に愛されて幸せになるんだ。わかったか?」
「シオン……。」
「泣くな、メルヴィン。」
立ち上がって、そっと頬を包んで涙に唇を寄せる。
そのまま唇を重ねて、触れるだけのキスを贈る。
「泣くな。ジェイデンの事は分かったから、あんたの事も教えてくれ。あんたにだって辛い出来事があったんじゃないのか?」
「オレのはあいつに比べりゃ大した事ねえよ。」
「比べる必要なんか無いだろ?俺が知りたいんだ。あんたを悲しませないために。でも、無理にとは言わないよ。」
もう一度触れるだけのキスをして席に戻ろうとしたところで引き留められた。
「このまま聞いてくれ。」
そう言って俺を抱きしめてきた彼の頬にキスをして答えた。
「簡単に言うと、賭けの対象にされたんだ。破けた服を着替えたり、他の国で風呂やシャワーのときに、その、…生殖器を見られる事があってだな、オレは身体もデカいし、自分で言うのもなんだが、そっちもデカい。
若かったし、今みたいにランクも高くなかったから、度胸試しみたいなノリでオレに突っ込んでオレをイかせて自分もイければ賞金がでるっていうのが企画された事があるんだ。事前に気付いて未遂だったけどな。
まあ、その時は絶望したよ。オレはそんな事の対象じゃなきゃ抱きたいと思えない男なんだなって。物心がついた頃には抱かれたい側だったから余計にな。」
「メルヴィン、メルヴィン。俺はそんな事しない。そんなふうに愛しい人を傷つけたくない。」
メルヴィンをきつく抱きしめると、彼も俺を抱きしめ返してきた。
「分かってる。お前さんのキスはオレを想ってくれてるって分かるキスだ。でも、オレの、あー、…イチモツを見ても変わらずにいてもらえるか、どうしても少し不安なんだ。すまん。」
そんな事を言われたら証明するしかない。
「メルヴィン、嫌じゃなかったらあんたのペニスを見せてくれないか?俺にあんたの雄を愛させて。お願い。」
メルヴィンの声を聞いてからドアを開けて客室に招き入れ、窓際のテーブルセットに腰を下ろした。
彼は少し緊張しているようだ。
「珍しい服を着ているんだな」と言われたので、「俺の故郷の伝統的なパジャマだよ」と答えた。
雑談を挟んで、本題に入る。
「話ってのは、オレとジェイデンの事だ。お前さん、貴族が嫌いだろ?突然拉致されたんだ、それは当たり前だ。だがジェイデンはオレと家を出るまで、そこそこデカい貴族の家の息子だったんだ。ちなみにオレはそこの家の私生児だ。貴族の親が共通してて、もう一人のオレの親はハンターをやってる男性体だ。お前さんはオレらの親が貴族でも、オレらとは混同しないって分かっているが、一応言っておく。」
「俺は貴族が嫌いというより、馬鹿な貴族が嫌いなだけだ。馬鹿な一般人より権力を持っている分、質が悪いからな。それでも貴族全てがクズだとは思っていないよ。」
「そうか。大丈夫だと思ってはいても不安だったんだ。それを聞けて安心した。ジェイデンの実家の当主はオレらのジジイで、6歳のジェイデンに『お前はこの家のために畑を耕し種を蒔け!その後は家の養分にでもなれば良いのだ』って種馬扱いを宣言するようなヤツなんだ。子どもにそんな言い方したってわかるわけねえのにな。
まあ、そんな家だがあいつは真っ直ぐで良いやつに育って騎士になった。何年か務めて、あいつは酷いめにあって騎士を辞めたんだ。理由はオレから言う訳にはいかねえが、精神的に大分参ってな。見兼ねたオレが家と縁を切らせて連れ出したんだ。
あいつはお前さんにすっかり惚れてるだろ?だからオレは、お前さんにあいつを頼むって、絶対に裏切らないでくれって頼みに来たんだ。オレの大事な弟なんだ。本当は可愛いやつなんだ。お前さんにはあいつを大切にして貰いたい。どうか、どうか、あいつを頼む。」
そう言って俺に懇願するメルヴィンに答える。
「大切にする。共に生きて行きたい。だからハンターのランクも上を目指す約束をした。だがメルヴィン、俺がそう思っているのはジェイデンだけじゃない。あんたもだ。」
「そりゃあ嬉しいが、現実的じゃあねえ。並のSランクじゃオレを囲えねえのは分かってるだろ?だから囲える可能性のあるジェイデンを囲って、オレのことはたまに思い出したときにでも抱いてくれりゃあ良い。オレはそれだけでも幸せだ。」
こういったことを言われるとは分かっていたが、腹が立つな。
「じゃああんたに頼まれた事は、全て断る。」
「シオン!」
「あんたは俺に言っただろ、二人もなんて贅沢だって。その通りだ。俺はあんたたちに出会って贅沢で我儘になったんだ。一人じゃ駄目なんだ。俺は二人とも欲しいんだ。
それに、何があったか知らないが、ジェイデンはあんたに負い目を感じてるだろ。あんたが身を引いて自分だけ俺のところに来たって彼は決して幸せにはなれない。あんたにはそれが分かってるだろ?」
「分かってるさ!分かってても他に方法なんか無いだろうが!」
ここまで断言されるとは、俺も舐められたものだ。
俺の自信がどこから来るのかは分からないが、メルヴィンとジェイデンが見込んでくれたんだ、不可能なんてない。
「メルヴィン。俺は誰だ?あんたが惚れた男だぞ。あんたは俺を信じて待っていろ。時間はかかるかもしれないが、絶対にあんたたちを諦めない。俺のメルヴィンとジェイデンだ。二人とも俺に愛されて幸せになるんだ。わかったか?」
「シオン……。」
「泣くな、メルヴィン。」
立ち上がって、そっと頬を包んで涙に唇を寄せる。
そのまま唇を重ねて、触れるだけのキスを贈る。
「泣くな。ジェイデンの事は分かったから、あんたの事も教えてくれ。あんたにだって辛い出来事があったんじゃないのか?」
「オレのはあいつに比べりゃ大した事ねえよ。」
「比べる必要なんか無いだろ?俺が知りたいんだ。あんたを悲しませないために。でも、無理にとは言わないよ。」
もう一度触れるだけのキスをして席に戻ろうとしたところで引き留められた。
「このまま聞いてくれ。」
そう言って俺を抱きしめてきた彼の頬にキスをして答えた。
「簡単に言うと、賭けの対象にされたんだ。破けた服を着替えたり、他の国で風呂やシャワーのときに、その、…生殖器を見られる事があってだな、オレは身体もデカいし、自分で言うのもなんだが、そっちもデカい。
若かったし、今みたいにランクも高くなかったから、度胸試しみたいなノリでオレに突っ込んでオレをイかせて自分もイければ賞金がでるっていうのが企画された事があるんだ。事前に気付いて未遂だったけどな。
まあ、その時は絶望したよ。オレはそんな事の対象じゃなきゃ抱きたいと思えない男なんだなって。物心がついた頃には抱かれたい側だったから余計にな。」
「メルヴィン、メルヴィン。俺はそんな事しない。そんなふうに愛しい人を傷つけたくない。」
メルヴィンをきつく抱きしめると、彼も俺を抱きしめ返してきた。
「分かってる。お前さんのキスはオレを想ってくれてるって分かるキスだ。でも、オレの、あー、…イチモツを見ても変わらずにいてもらえるか、どうしても少し不安なんだ。すまん。」
そんな事を言われたら証明するしかない。
「メルヴィン、嫌じゃなかったらあんたのペニスを見せてくれないか?俺にあんたの雄を愛させて。お願い。」
0
お気に入りに追加
546
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い



○○に求婚されたおっさん、逃げる・・
相沢京
BL
小さな町でギルドに所属していた30過ぎのおっさんのオレに王都のギルマスから招集命令が下される。
といっても、何か罪を犯したからとかではなくてオレに会いたい人がいるらしい。そいつは事情があって王都から出れないとか、特に何の用事もなかったオレは承諾して王都へと向かうのだった。
しかし、そこに待ち受けていたのは―――・・


飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる