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3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて

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「化物については承知した。それで、この国がフォレスト・ウォールを作ったのはわかったが、地図上では弧の部分の西側は他の国ではないのか?」

「それな。南北に延びる壁があるだろ?この部分は《休戦境界壁》、通称《グレート・ウォール》っつうんだ。この壁を挟んで反対側、壁とどデカい湖に挟まれた国の今の名称はリスティロード公国。元はこの国と1つの国だったんだ。デカい戦争を何年も続けて、休戦するときに新たに国を隔てる壁を作ったんだと。平和を実現した偉大な壁だって持て囃されてるぜ。フォレスト・ウォールを作った後で国が割れたから地図上ではこうなってるのさ。」

なんだろう、キナ臭いな。
元の世界で言えば、軍事境界線ってところだろう。
それがグレート・ウォール?
フォレスト・ウォールと同じ感じで名付けるならそのまま《国境の壁ボーダー・ウォール》とかで十分なはずだ。
プロパガンダとか国策のニオイがする。
依頼で近くに行く事があれば、見に行ってみるか。

「そうか。説明してくれてありがとう。今のところ他に質問は思い浮かばないから、疑問ができたらまた教えてくれると嬉しい。」

「わかった。オレとジェイデンはアンジェラの宿の敷地内に住んでるから、すれ違ったときにでも聞いてくれりゃあ、答える。それで良いか?」

「十分だ。よろしく頼む。だが、部屋には招いてくれないのか。…残念だ。」

次はあんたの雄尻を狙っているのに。

「まあ、なんだ、…あー、そのうちな。」

なんだかんだ優しいな、メルヴィン。

「待ってるから早く呼んでくれ。」

「お前さん、そんな顔して本当にアグレッシブだな。いちいち驚くぜ。」

「このくらいじゃないと、あんたが俺を諦めるんじゃないかと思ってな。違うか?」

「…それについては黙秘する。」

「まあ、あんたが何を考えようとも、俺はあんたを諦めないから、安心してくれ。」

絶対に手に入れてみせるからな。

「………そうかよ。しかし物好きだな。」

「あんたの魅力が俺を掴んで離さないだけだ。物好きって訳じゃないと思うけどな。」

「っ、はー。オレもハラぁ括るしかねぇのかな。」とか言ってるけど、まだ括ってなかったのか。
雄っぱいは俺にくれたくせに。
当然、雄尻も俺のだからな。

それにしてもジェイデンが静かだ。
さっきまでは目元を染めて可愛かったが、今は決然とした顔付きをしている。

『メルヴィンが腹を括るというのなら、わたしもそうします。』

そう宣言するかのような表情だ。

「それで明日だが、午前中の予定はあるか?無ければギルドで身体強化を教えてやるが、どうだ?」

「予定は無いよ。ただ、朝の鍛練はしたいからその後で良いか?」

今日はできなかったから、明日はちゃんとしたい。
その代わり二人に手合わせしてもらったけどな。

「じゃあ宿の中庭でやったらどうだ?ついでにオレにもお前さんの使う体術を教えてくれると嬉しい。」

「わたしも参加したいです。」

ジェイデンも乗り気だ。
異論はないので明日から3人で朝の鍛練をすることになった。

「午後からはどうするんです?」

「取り敢えず買い物かな。日用品が一切無いから、調達したい。」

「なんでだ?お前さんなら魔力が切れない限り好きなだけ魔法で生み出せるだろ?いくら魔法が術者の望みを叶える力だからって、お前さんほど器用に行使するヤツなんか見たこと無いぞ。」

思いがけず魔法のことを聞けてしまった。
だが納得だ。
確かに俺の望みを叶えてくれている。
それだからあんなに便利なんだな。

「メルヴィン、俺はこの国のを知らないんだ。常識を知ることも込みで、社会勉強がてら買い物をしたいんだ。」

「あー、悪い、忘れてた。時間ができたらオレも行こうかな。服のオーダーしなきゃならんしな。」

本当にホットパンツ止める気になったんだな。
俺の前では穿いてくれても良いんだが、仕方ない。
少しイジるだけで我慢しよう。

「オーダーするのは服だけか?」

「他に何かあんのか?」

わかってないなんて残念だ。
残念な男の下腹部を指差しながら言ってやる。

「2枚だけで良いのか?」

黒レースに赤レース、白レース、瞳と同じ青レース、光沢のあるサテンにシルク。
ベルベットやシフォンもあるな。
サック付きも良いだろう。
ラテックスはニオイが苦手だから遠慮するが、レザーも捨て難い。
エナメルもだ。
どうせならベビードールを着せたときのも見てみたい。
ジェイデンに姫っぽいのを着せたら喜んでくれるだろうか。
まだ恥ずかしい方が勝つかな。
メルヴィンならベビードールよりもボディスーツやテディかな?
定番だがボンテージも忘れてはいけない。

いや、でも、二人とも好きで女装?してるわけじゃないから男性用の物の方が良いのだろうか…。
そうだったらメルヴィンにはプロレスの衣装を着てほしい。
絶対に似合う!

こんな事を考えるようになるなんて、二日前の俺には想像もできなかったな。
頭の中がピンクになるなんて信じ難い。

思えば遠くに来たものだ、物理的にも精神的にも。
二人とも素材が良過ぎて想像が止まらない。

そこまで思考を飛ばして、はたと気が付いた。

この世界にエロい下着は存在するのか、と。
無かったら作るだけだが、作り手が俺だけだとすぐにアイデアが枯渇する。
それを防ぐためには同志が必要だ。
難易度の高い人材探しだが、忘れずやってみよう。

それを考えたら召喚魔法が人材調達に盛んに使用された理由がよくわかる。
手軽にスカウトできるからな。
それでも誘拐には違いないので、俺は使わないけど。

そこまで考えたところで、メルヴィンが気付いたらしく、凄い顔になった。
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