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3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて
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キティの力と、自分のバネを目一杯使って縦に回転すれば、彼の大きな身体が宙を舞った。
やってやった感を味わっていたいが、ダメージはそれ程無いはずなので、気は抜かない。
そのまま組み付いていた脚を使って三角絞めにして意識を刈り取る。
落ちる寸前の彼に向かって「俺を細いって言うからだ」と言ってやった。
しかし身体中が痛いな。
暫くしたら、きっと全身酷い色になるに違いない。
ヒールが自分にも効く事を祈ろう。
痛む身体でキティを抱き起こし、意識の回復を待つ。
この位ならすぐに気が付くはずだ。
すると呻き声とともに意識が浮上したキティが目を開け、俺の顔を見て真っ赤になった。
これは、また、あれか?
だとしたら決めていた褒美を強請りづらい。
人のツボはどこにあるのか分からないものだな。
そんな事を悩んでいたら彼が両手で朱が指している顔を隠しながら言った。
「投げられたのは一人前になってから初めてだ。」
「そうか。」
「あんな投げられ方をしたのも初めてだ。」
「良いだろ、あれ。」
「意識を刈り取られたのも生まれて初めてだ。」
「やってやった。」
「身体強化使ったら負けねぇ。それにしてもお前さん、細いのにすげぇな。」
「それ止めてくれ。あんたに『細い』って言われると凹む。俺は鍛えてもこれ以上太くなれないからな。」
「わかった。すまんな、お前さんの身体を貶すつもりは無かったんだ。」
顔に当てていた手を外して謝罪されたので、頷いて受け入れた。
「しかし、何だ、あいつがお前さんに『ジェイデン』と呼ばれたくなった気持ちが解るな。オレのこともメルヴィンと呼んでくれ。」
「良いのか?」
「お前さんになら本当の名前を呼ばれたい。」
どこか晴れやかな笑顔で告げてきたので、俺も答える。
「わかった。メルヴィン、身体は痛むか?」
「まあな。しかし、この体重差でオレの蹴りを止められるとは思わなかった。お前さんの技術は怖ろしいな。」
「知りたかったら教えるよ。それに腹筋鍛えてなかったら、吐いてたと思うぞ。かなり痛かった。」
あれはシャレにならない威力だった。
「ついでに俺がハンターの前に勧められた職も今教える。」
今度は光らないようにしてやってみる。
「《ヒール》。………痛みはどうだ?」
そんなポカンとした顔をしなくても良いだろうに。
「お前さん、治癒も使えるのか?」
「そのようだ。ギルド専属の治癒師を提案された。だからハンターに向いていなかったら、これで食っていこうか真剣に悩んでいる。」
「ほう、なぜ専属なんだ?」
「後で説明するよ。今は外野がうるさくなってしまったからな。メルヴィンの可愛い表情、ギャラリー皆に見られたな?」
悪い笑顔で告げてやった。
もとから訓練場に居た奴らも、野次馬しに後から来た奴らも、信じられないものを見た、と言わんばかりの表情だ。
メルヴィンの巨体が投げられる事など無いし仕方ないが、直接目にしていない人にはきっと信じて貰えないだろう。
そんな中をジェイデンがやってきた。
「これじゃあ文句無くご褒美を強請られちゃうわね!」
「ジェイデン。」
たった今、強請りづらくなったがな。
「オレにできることなら叶えてやろう。」
「メルヴィン。」
本当か?
「あら、やっぱりキティもそう呼ばれたくなったのね!」
「……………まあな。」
恥ずかしそうにしているメルヴィンが可愛い。
なので、素直に言ってみた。
「ジェイデン、メルヴィンも可愛いな。」
「あなたならきっとそう言ってくれるって信じていたわ。」
二人で微笑み合う隣で、震える男が頬を染めながら怒鳴る。
「お前ら!オッサンをからかうのは止せ!」
ラースみたいな事を言わせてしまった。
ジェイデンと同じで実年齢より若い外見をしているだろうから、オッサンとお兄さんの中間くらいに見える。
「キティ、シオンはからかってないのよ。本気でそう思ってくれているから、安心して恥ずかしがると良いわ。ね、そうでしょう、シオン。」
「何に安心して良いか、わかんねえよ!」
それ、ジェイデンもギルドに向かう途中で同じ様な事言ってたな。
そう思いながら深く頷いて答える。
「俺はジェイデンもメルヴィンも可愛いと思っている。それに、フェイトとラースも可愛いぞ。」
俺の上着を持って近くまで来ていたフェイトとラースにも聞こえるように言ってやった。
それを聞いたラースとメルヴィンの反応が似ていて面白い。
慣れない言葉で褒められて、震えながら恥ずかしいのを隠そうとしている。
兄貴分として慕われて来たであろう二人の可愛さを、俺が引き出しているかと思うと謎の優越感が湧いてくるから不思議だ。
「皆さんお疲れ様でした!凄く格好良かったです。シオンさん、上着をどうぞ。」
フェイトに礼を言って上着を羽織ってから自分に治癒を試みる。
すると痛みが引いていく。
無事に治って良かった。
放って置けば1週間くらい腫れただろう。
「ちなみにご褒美は何をおねだりするんですか?」
それな…困った。
「メルヴィンが意識を取り戻したときの反応を見てしまった後では、言い難くなってしまった。」
「何だ?取り敢えず言うだけ言ってみろ。」
言ったな、後悔するなよ。
「メルヴィン、ジェイデン、二人の雄っ…じゃなくて、胸筋を触らせてほしい。もちろん、性的には触れないと約束するし、服の上からで構わない。どうだろうか?」
やってやった感を味わっていたいが、ダメージはそれ程無いはずなので、気は抜かない。
そのまま組み付いていた脚を使って三角絞めにして意識を刈り取る。
落ちる寸前の彼に向かって「俺を細いって言うからだ」と言ってやった。
しかし身体中が痛いな。
暫くしたら、きっと全身酷い色になるに違いない。
ヒールが自分にも効く事を祈ろう。
痛む身体でキティを抱き起こし、意識の回復を待つ。
この位ならすぐに気が付くはずだ。
すると呻き声とともに意識が浮上したキティが目を開け、俺の顔を見て真っ赤になった。
これは、また、あれか?
だとしたら決めていた褒美を強請りづらい。
人のツボはどこにあるのか分からないものだな。
そんな事を悩んでいたら彼が両手で朱が指している顔を隠しながら言った。
「投げられたのは一人前になってから初めてだ。」
「そうか。」
「あんな投げられ方をしたのも初めてだ。」
「良いだろ、あれ。」
「意識を刈り取られたのも生まれて初めてだ。」
「やってやった。」
「身体強化使ったら負けねぇ。それにしてもお前さん、細いのにすげぇな。」
「それ止めてくれ。あんたに『細い』って言われると凹む。俺は鍛えてもこれ以上太くなれないからな。」
「わかった。すまんな、お前さんの身体を貶すつもりは無かったんだ。」
顔に当てていた手を外して謝罪されたので、頷いて受け入れた。
「しかし、何だ、あいつがお前さんに『ジェイデン』と呼ばれたくなった気持ちが解るな。オレのこともメルヴィンと呼んでくれ。」
「良いのか?」
「お前さんになら本当の名前を呼ばれたい。」
どこか晴れやかな笑顔で告げてきたので、俺も答える。
「わかった。メルヴィン、身体は痛むか?」
「まあな。しかし、この体重差でオレの蹴りを止められるとは思わなかった。お前さんの技術は怖ろしいな。」
「知りたかったら教えるよ。それに腹筋鍛えてなかったら、吐いてたと思うぞ。かなり痛かった。」
あれはシャレにならない威力だった。
「ついでに俺がハンターの前に勧められた職も今教える。」
今度は光らないようにしてやってみる。
「《ヒール》。………痛みはどうだ?」
そんなポカンとした顔をしなくても良いだろうに。
「お前さん、治癒も使えるのか?」
「そのようだ。ギルド専属の治癒師を提案された。だからハンターに向いていなかったら、これで食っていこうか真剣に悩んでいる。」
「ほう、なぜ専属なんだ?」
「後で説明するよ。今は外野がうるさくなってしまったからな。メルヴィンの可愛い表情、ギャラリー皆に見られたな?」
悪い笑顔で告げてやった。
もとから訓練場に居た奴らも、野次馬しに後から来た奴らも、信じられないものを見た、と言わんばかりの表情だ。
メルヴィンの巨体が投げられる事など無いし仕方ないが、直接目にしていない人にはきっと信じて貰えないだろう。
そんな中をジェイデンがやってきた。
「これじゃあ文句無くご褒美を強請られちゃうわね!」
「ジェイデン。」
たった今、強請りづらくなったがな。
「オレにできることなら叶えてやろう。」
「メルヴィン。」
本当か?
「あら、やっぱりキティもそう呼ばれたくなったのね!」
「……………まあな。」
恥ずかしそうにしているメルヴィンが可愛い。
なので、素直に言ってみた。
「ジェイデン、メルヴィンも可愛いな。」
「あなたならきっとそう言ってくれるって信じていたわ。」
二人で微笑み合う隣で、震える男が頬を染めながら怒鳴る。
「お前ら!オッサンをからかうのは止せ!」
ラースみたいな事を言わせてしまった。
ジェイデンと同じで実年齢より若い外見をしているだろうから、オッサンとお兄さんの中間くらいに見える。
「キティ、シオンはからかってないのよ。本気でそう思ってくれているから、安心して恥ずかしがると良いわ。ね、そうでしょう、シオン。」
「何に安心して良いか、わかんねえよ!」
それ、ジェイデンもギルドに向かう途中で同じ様な事言ってたな。
そう思いながら深く頷いて答える。
「俺はジェイデンもメルヴィンも可愛いと思っている。それに、フェイトとラースも可愛いぞ。」
俺の上着を持って近くまで来ていたフェイトとラースにも聞こえるように言ってやった。
それを聞いたラースとメルヴィンの反応が似ていて面白い。
慣れない言葉で褒められて、震えながら恥ずかしいのを隠そうとしている。
兄貴分として慕われて来たであろう二人の可愛さを、俺が引き出しているかと思うと謎の優越感が湧いてくるから不思議だ。
「皆さんお疲れ様でした!凄く格好良かったです。シオンさん、上着をどうぞ。」
フェイトに礼を言って上着を羽織ってから自分に治癒を試みる。
すると痛みが引いていく。
無事に治って良かった。
放って置けば1週間くらい腫れただろう。
「ちなみにご褒美は何をおねだりするんですか?」
それな…困った。
「メルヴィンが意識を取り戻したときの反応を見てしまった後では、言い難くなってしまった。」
「何だ?取り敢えず言うだけ言ってみろ。」
言ったな、後悔するなよ。
「メルヴィン、ジェイデン、二人の雄っ…じゃなくて、胸筋を触らせてほしい。もちろん、性的には触れないと約束するし、服の上からで構わない。どうだろうか?」
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