ダメな方の異世界召喚された俺は、それでも風呂と伴侶を愛してる

おりく

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3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて

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「ししし知り合って数時間でアンジェラさんをこんなにメロメロにしちゃったんですかぁ!?信じられない…。お兄さん、何者ですか?あ!私は受付のルーシャです。よろしくお願いします。気になるから聞いちゃいますけど、アンジェラさんのネイルと靴もお兄さん関係ですか!?」

もう遠慮はしないんだな…開き直ったのか。
しかし女性はよく観ているな、キティと違って。

「ご丁寧にありがとう。俺はシオン。訳あって昨日から無職になってしまった。だから情け無いが、今は何者でもない。それでも良ければよろしく頼む。ルーシャからの質問の答えだが、両方俺が贈った物だ。似合うだろう?」

「はいぃ!優しい色が、アンジェラさんの雰囲気に良くお似合いですぅ!」

いいぞルーシャ、もっと褒めてくれ。
受付嬢たちが静かだな…と思って見てみれば、そろって口に手を当てて悶絶していた。
ジェイデンもこんなに早く気付かれると思っていなかったのか、恥ずかしがりながらも驚いている。

「で、無職になったからハンターになりたいってか?」

キティから声がかかった。

「世話になっている人たちの勧めでな。最初は違う職を提案されたが、前職を告げたらハンターが良いだろう、と言われたんだ。」

「ふーむ。参考までに聞くが、提案された職と前職は何だ?」

「娼夫?娼夫なの!?」とか「バカ!愛の伝道師よ!」なんて聞こえてくるけど、ギルマスの前で大丈夫なのか?

「提案された職は、ここでは言わない。場所を改めてくれたら教えるよ。一昨日までは武術の指南をしていた。」

「こんなに細いのにか!?」

………キティ、泣かす。
そんなに驚かなくたっていいじゃないか。
疑いしかない視線を寄越すのはよしてくれ。
そりゃあ、あんたと比べれば細いさ!
でも頑張ってもこれ以上大きくなれないんだ。
ジェイデン以上の雄っぱいしやがって!
あんたもジェイデンもラースも、羨ましいんだよ!
そんなやつから細いとか言われたら思った以上に凹む。

「本当はあなたやジェイデンみたいになりたかったんだ……。せめてラースとか。でも体質なのか、無理なんだ。」

本気で貞操とか死活問題なんだぞ………。

「止めてぇ!今のシオンさんがサイコーです!だから元気出してくださぁい!」

受付からエールが飛んで来た。
ありがとうルーシャ、隣で頷いてる受付嬢も。
俺もわかっているんだ、俺の顔にガチムチは似合わないって。

「それでね、キティ。シオンは身体強化を使った記憶が無いんですって。だからわたしとあなたで教えようかと思うの。彼、細くても相当な使い手よ。わたしも巻き添えで殺気を飛ばされて震え上がっちゃったし、きっと他の人じゃ怪我するわ。」

ジェイデン、俺は決して細くない。
細マッチョで着痩せしてるんだ。
そこは譲らんぞ。

「はあー、お前がか。そりゃあ細くても期待できるな。」

「でしょう?だから今日は実力を知りたくて、一緒に来たの。」

カチンと来たぞ。
また言うが俺は細くない!

「そうか。シオンに聞くが、お前さんは何ができるんだ?」

「剣術と体術、それに検証しなければならないが、魔法が使える。ジェイデンの見立てだと身体強化も使えるらしい。」

「その細さで体術もか?」

また言われた。

「むしろ体術が1番得意だ。」

父親がしみじみと、それはもうしみじみと「やっぱり最後に頼れるのは自分の身体だよ」と、経験を踏まえて教えてくれた。
その通りだと思ってずっと鍛えてきた。

「あー、じゃあ剣術がジェイデンで、体術はオレが見よう。しかし本当に大丈夫なのか?体重差、何十キロだよ。ハンデ要るか?」

……30キロくらいか?
それ以上だったら泣ける。

「要らない。」

細い俺にも意地があるんだ。

「んー、それならオレが認めるくらいの技術があったら、何かやろう。ご褒美みたいな感じでな。」

「それは形の無いものでも良いのか?」

「良いぞ。」

「わかった。」

じゃあ褒美の内容は決まりだ。
どうせならと、彼にも尋ねる。

「ジェイデンは?」

「なあに?」

「ご褒美くれるか?」

そこの受付嬢ども。
「ふおおおぉぉぉ!」とかフィーバーしない。
皆引いてるぞ。

「ちょっと怖いのだけれど…。」

「ぶうううぅぅ!」
良いぞ受付嬢たち。
もっとブーイング飛ばしてジェイデンが断れなくしてくれ。

「望む内容はキティと同じだから大丈夫だ。」

「それなら良いわ。」

よし、俄然やる気が出てきた。
絶対キティ泣かす……じゃなくて、認めさせる。

「じゃ、オレらは靴を履き替えて行くから先に行っててくれ。ルーシャ、案内してやれ。」

「わかりました。シオンさん、こちらへどうぞ。」

そう言って案内された先ではフェイトとラースが待っていた。

「遅かったな。トラブルでもあったのか?」

「いいや、受付嬢たちが盛り上がっていただけだ。なあ、ルーシャ?」

「そっ、そうです。アンジェラさんのメロメロっぷりに大興奮です!」

「お前!また何かやったんだろ!アンジェラさんに何しやがった!」

そんなラースの言葉を聞きながら上着を脱ぐ。

「事実を言ったまでだ。疑うならルーシャに聞いてくれ。」

「わっ私ですかっ?シオンさんのおっしゃった事は確かに事実です。」

「だろ?フェイト、上着を預かってくれないか?」

そう言って渡しながら気が付いた。
空間収納があった事に。
使い慣れないと忘れがちになるな…。
積極的に使って行こうと上着を渡すのを止めようとしたが遅かった。
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