37 / 170
3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて
15
しおりを挟む
「ししし知り合って数時間でアンジェラさんをこんなにメロメロにしちゃったんですかぁ!?信じられない…。お兄さん、何者ですか?あ!私は受付のルーシャです。よろしくお願いします。気になるから聞いちゃいますけど、アンジェラさんのネイルと靴もお兄さん関係ですか!?」
もう遠慮はしないんだな…開き直ったのか。
しかし女性はよく観ているな、キティと違って。
「ご丁寧にありがとう。俺はシオン。訳あって昨日から無職になってしまった。だから情け無いが、今は何者でもない。それでも良ければよろしく頼む。ルーシャからの質問の答えだが、両方俺が贈った物だ。似合うだろう?」
「はいぃ!優しい色が、アンジェラさんの雰囲気に良くお似合いですぅ!」
いいぞルーシャ、もっと褒めてくれ。
受付嬢たちが静かだな…と思って見てみれば、そろって口に手を当てて悶絶していた。
ジェイデンもこんなに早く気付かれると思っていなかったのか、恥ずかしがりながらも驚いている。
「で、無職になったからハンターになりたいってか?」
キティから声がかかった。
「世話になっている人たちの勧めでな。最初は違う職を提案されたが、前職を告げたらハンターが良いだろう、と言われたんだ。」
「ふーむ。参考までに聞くが、提案された職と前職は何だ?」
「娼夫?娼夫なの!?」とか「バカ!愛の伝道師よ!」なんて聞こえてくるけど、ギルマスの前で大丈夫なのか?
「提案された職は、ここでは言わない。場所を改めてくれたら教えるよ。一昨日までは武術の指南をしていた。」
「こんなに細いのにか!?」
………キティ、泣かす。
そんなに驚かなくたっていいじゃないか。
疑いしかない視線を寄越すのはよしてくれ。
そりゃあ、あんたと比べれば細いさ!
でも頑張ってもこれ以上大きくなれないんだ。
ジェイデン以上の雄っぱいしやがって!
あんたもジェイデンもラースも、羨ましいんだよ!
そんなやつから細いとか言われたら思った以上に凹む。
「本当はあなたやジェイデンみたいになりたかったんだ……。せめてラースとか。でも体質なのか、無理なんだ。」
本気で貞操とか死活問題なんだぞ………。
「止めてぇ!今のシオンさんがサイコーです!だから元気出してくださぁい!」
受付からエールが飛んで来た。
ありがとうルーシャ、隣で頷いてる受付嬢も。
俺もわかっているんだ、俺の顔にガチムチは似合わないって。
「それでね、キティ。シオンは身体強化を使った記憶が無いんですって。だからわたしとあなたで教えようかと思うの。彼、細くても相当な使い手よ。わたしも巻き添えで殺気を飛ばされて震え上がっちゃったし、きっと他の人じゃ怪我するわ。」
ジェイデン、俺は決して細くない。
細マッチョで着痩せしてるんだ。
そこは譲らんぞ。
「はあー、お前がか。そりゃあ細くても期待できるな。」
「でしょう?だから今日は実力を知りたくて、一緒に来たの。」
カチンと来たぞ。
また言うが俺は細くない!
「そうか。シオンに聞くが、お前さんは何ができるんだ?」
「剣術と体術、それに検証しなければならないが、魔法が使える。ジェイデンの見立てだと身体強化も使えるらしい。」
「その細さで体術もか?」
また言われた。
「むしろ体術が1番得意だ。」
父親がしみじみと、それはもうしみじみと「やっぱり最後に頼れるのは自分の身体だよ」と、経験を踏まえて教えてくれた。
その通りだと思ってずっと鍛えてきた。
「あー、じゃあ剣術がジェイデンで、体術はオレが見よう。しかし本当に大丈夫なのか?体重差、何十キロだよ。ハンデ要るか?」
……30キロくらいか?
それ以上だったら泣ける。
「要らない。」
細い俺にも意地があるんだ。
「んー、それならオレが認めるくらいの技術があったら、何かやろう。ご褒美みたいな感じでな。」
「それは形の無いものでも良いのか?」
「良いぞ。」
「わかった。」
じゃあ褒美の内容は決まりだ。
どうせならと、彼にも尋ねる。
「ジェイデンは?」
「なあに?」
「ご褒美くれるか?」
そこの受付嬢ども。
「ふおおおぉぉぉ!」とかフィーバーしない。
皆引いてるぞ。
「ちょっと怖いのだけれど…。」
「ぶうううぅぅ!」
良いぞ受付嬢たち。
もっとブーイング飛ばしてジェイデンが断れなくしてくれ。
「望む内容はキティと同じだから大丈夫だ。」
「それなら良いわ。」
よし、俄然やる気が出てきた。
絶対キティ泣かす……じゃなくて、認めさせる。
「じゃ、オレらは靴を履き替えて行くから先に行っててくれ。ルーシャ、案内してやれ。」
「わかりました。シオンさん、こちらへどうぞ。」
そう言って案内された先ではフェイトとラースが待っていた。
「遅かったな。トラブルでもあったのか?」
「いいや、受付嬢たちが盛り上がっていただけだ。なあ、ルーシャ?」
「そっ、そうです。アンジェラさんのメロメロっぷりに大興奮です!」
「お前!また何かやったんだろ!アンジェラさんに何しやがった!」
そんなラースの言葉を聞きながら上着を脱ぐ。
「事実を言ったまでだ。疑うならルーシャに聞いてくれ。」
「わっ私ですかっ?シオンさんのおっしゃった事は確かに事実です。」
「だろ?フェイト、上着を預かってくれないか?」
そう言って渡しながら気が付いた。
空間収納があった事に。
使い慣れないと忘れがちになるな…。
積極的に使って行こうと上着を渡すのを止めようとしたが遅かった。
もう遠慮はしないんだな…開き直ったのか。
しかし女性はよく観ているな、キティと違って。
「ご丁寧にありがとう。俺はシオン。訳あって昨日から無職になってしまった。だから情け無いが、今は何者でもない。それでも良ければよろしく頼む。ルーシャからの質問の答えだが、両方俺が贈った物だ。似合うだろう?」
「はいぃ!優しい色が、アンジェラさんの雰囲気に良くお似合いですぅ!」
いいぞルーシャ、もっと褒めてくれ。
受付嬢たちが静かだな…と思って見てみれば、そろって口に手を当てて悶絶していた。
ジェイデンもこんなに早く気付かれると思っていなかったのか、恥ずかしがりながらも驚いている。
「で、無職になったからハンターになりたいってか?」
キティから声がかかった。
「世話になっている人たちの勧めでな。最初は違う職を提案されたが、前職を告げたらハンターが良いだろう、と言われたんだ。」
「ふーむ。参考までに聞くが、提案された職と前職は何だ?」
「娼夫?娼夫なの!?」とか「バカ!愛の伝道師よ!」なんて聞こえてくるけど、ギルマスの前で大丈夫なのか?
「提案された職は、ここでは言わない。場所を改めてくれたら教えるよ。一昨日までは武術の指南をしていた。」
「こんなに細いのにか!?」
………キティ、泣かす。
そんなに驚かなくたっていいじゃないか。
疑いしかない視線を寄越すのはよしてくれ。
そりゃあ、あんたと比べれば細いさ!
でも頑張ってもこれ以上大きくなれないんだ。
ジェイデン以上の雄っぱいしやがって!
あんたもジェイデンもラースも、羨ましいんだよ!
そんなやつから細いとか言われたら思った以上に凹む。
「本当はあなたやジェイデンみたいになりたかったんだ……。せめてラースとか。でも体質なのか、無理なんだ。」
本気で貞操とか死活問題なんだぞ………。
「止めてぇ!今のシオンさんがサイコーです!だから元気出してくださぁい!」
受付からエールが飛んで来た。
ありがとうルーシャ、隣で頷いてる受付嬢も。
俺もわかっているんだ、俺の顔にガチムチは似合わないって。
「それでね、キティ。シオンは身体強化を使った記憶が無いんですって。だからわたしとあなたで教えようかと思うの。彼、細くても相当な使い手よ。わたしも巻き添えで殺気を飛ばされて震え上がっちゃったし、きっと他の人じゃ怪我するわ。」
ジェイデン、俺は決して細くない。
細マッチョで着痩せしてるんだ。
そこは譲らんぞ。
「はあー、お前がか。そりゃあ細くても期待できるな。」
「でしょう?だから今日は実力を知りたくて、一緒に来たの。」
カチンと来たぞ。
また言うが俺は細くない!
「そうか。シオンに聞くが、お前さんは何ができるんだ?」
「剣術と体術、それに検証しなければならないが、魔法が使える。ジェイデンの見立てだと身体強化も使えるらしい。」
「その細さで体術もか?」
また言われた。
「むしろ体術が1番得意だ。」
父親がしみじみと、それはもうしみじみと「やっぱり最後に頼れるのは自分の身体だよ」と、経験を踏まえて教えてくれた。
その通りだと思ってずっと鍛えてきた。
「あー、じゃあ剣術がジェイデンで、体術はオレが見よう。しかし本当に大丈夫なのか?体重差、何十キロだよ。ハンデ要るか?」
……30キロくらいか?
それ以上だったら泣ける。
「要らない。」
細い俺にも意地があるんだ。
「んー、それならオレが認めるくらいの技術があったら、何かやろう。ご褒美みたいな感じでな。」
「それは形の無いものでも良いのか?」
「良いぞ。」
「わかった。」
じゃあ褒美の内容は決まりだ。
どうせならと、彼にも尋ねる。
「ジェイデンは?」
「なあに?」
「ご褒美くれるか?」
そこの受付嬢ども。
「ふおおおぉぉぉ!」とかフィーバーしない。
皆引いてるぞ。
「ちょっと怖いのだけれど…。」
「ぶうううぅぅ!」
良いぞ受付嬢たち。
もっとブーイング飛ばしてジェイデンが断れなくしてくれ。
「望む内容はキティと同じだから大丈夫だ。」
「それなら良いわ。」
よし、俄然やる気が出てきた。
絶対キティ泣かす……じゃなくて、認めさせる。
「じゃ、オレらは靴を履き替えて行くから先に行っててくれ。ルーシャ、案内してやれ。」
「わかりました。シオンさん、こちらへどうぞ。」
そう言って案内された先ではフェイトとラースが待っていた。
「遅かったな。トラブルでもあったのか?」
「いいや、受付嬢たちが盛り上がっていただけだ。なあ、ルーシャ?」
「そっ、そうです。アンジェラさんのメロメロっぷりに大興奮です!」
「お前!また何かやったんだろ!アンジェラさんに何しやがった!」
そんなラースの言葉を聞きながら上着を脱ぐ。
「事実を言ったまでだ。疑うならルーシャに聞いてくれ。」
「わっ私ですかっ?シオンさんのおっしゃった事は確かに事実です。」
「だろ?フェイト、上着を預かってくれないか?」
そう言って渡しながら気が付いた。
空間収納があった事に。
使い慣れないと忘れがちになるな…。
積極的に使って行こうと上着を渡すのを止めようとしたが遅かった。
0
お気に入りに追加
546
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い


被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…


○○に求婚されたおっさん、逃げる・・
相沢京
BL
小さな町でギルドに所属していた30過ぎのおっさんのオレに王都のギルマスから招集命令が下される。
といっても、何か罪を犯したからとかではなくてオレに会いたい人がいるらしい。そいつは事情があって王都から出れないとか、特に何の用事もなかったオレは承諾して王都へと向かうのだった。
しかし、そこに待ち受けていたのは―――・・


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる