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3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて
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「レイラさんとは、恋人ではなかった。」
「聞かれたく無い事だったなら謝るよ。」
首を横に振って答える。
「レイラさんは、20歳近く年上の『オジサン』なんだ。俺なんか色恋の相手にされないさ。」
「そうか。でも慕っていたんだね?」
今度は首を縦に振る。
「大事な人の1人だ。会えなくなっても変わらず、な。あなたにはそんな人は居ないのか?」
「わたしなら、剣の師匠がそうかな。ハンターのランクがAに上がるときに今の姓を名乗り始めたのだけれど、そのとき師匠の姓を貰ったよ。」
「そうか。あなたの師匠なら、剣の腕も人柄も素晴らしかったのだろうな…。」
「ふふっ。君にそう言って貰えると嬉しいよ。」
お互いの理解が深まって良い雰囲気になっていたが、「フェイト!」と言うラースの大声でそんな空気は霧散してしまった。
「騒がしい男だな…。」
だが、俺の声に険はない。
ラースだからな…くらいだ。
「しかし、あのラース君があんなになってしまうとは。」
首を傾げて、ジェイデンを見上げる。
『あの』ってどんなだ?
「あの子はかなりの遣り手なんだよ。普通、独立なんて三十代半ばに入ってからなのに。ウチの宿を建ててくれたときも皆に慕われてたけど、仕事中は真面目だし相当厳しかったよ。見た目もかなり良いし、そのうちハーレムを作るだろうと思っていたけど、その気は無かったみたいだね。若手を集めて工房を立ち上げるんだろう?そっちで甲斐性をみせることを選んだんだよ、きっと。」
ふむ。
「デキる男の匂いは、会った当初はしていたな。」
「だから驚いたんだよ。君やフェイト君に遊ばれて楽しそうにしているのだから。こっちが本来の彼なんだろうけど…。」
「けど?」
なんだ?
「ハーレムに入るのも時間の問題かな、って。すっかり君に夢中じゃないか。」
「やっぱり、そう思うか?」
もちろん、気付いていたけども。
頷いてジェイデンが言った。
「あんなに震えて、ちょっと可哀想になってしまったよ。」
「あー、あれは自分でもやり過ぎたと思っている。あなたまで真っ赤にしてしまったし。」
「それは忘れてほしいかな…。」
「俺が忘れると思うか?」
「………………。」
沈黙を返されてしまった。
「そのだんまりはラースと同じ目に合いたいというリクエストだと解釈するぞ?」
「うぅ、わかったよ。」
「でもあれは仕方ないんだ。性癖?みたいなものだし。」
「いきなりなんだい!?びっくりするじゃないか。」
ジェイデンも他人事ではないし、教えても良いか。
「俺は子どもの頃から、欲の籠もったいろんなモノを向けられて来た。俺の意思などお構い無しに、俺を好きにしようとした奴らもそれなりに居た。そのせいか俺に惚れていたり性的に意識しているのに、俺のためを思って我慢したり、バレてるのにバレないように努力するやつが可愛くて仕方ないんだ。」
「それって………。」
コクリと頷く。
まんま、ラースだ。
「だからあんな扱いなのか。ラース君が不憫に思えて来たよ。」
「大丈夫だ。性的に、手は出さない。」
多分。
「そういう問題かい?」
「それにラースも言っていただろう?あなたも他人事ではないと。」
きょとんとされてしまった。
無自覚か…。
だとしたら危ないぞ。
俺に喰われたいなら止めないが。
「ラースから感じる熱を、あなたからも感じるぞ、ジェイデン。気付いていなかったのか?」
「ふえっ。そっ、そんなことな「ないのか?」……いこともないかもしれない…。」
面白いくらいに慌てだしたな。
「でも下手したら10歳以上離れてるのに!」
そこまでか?
「失礼だが、何歳だ?」
「………今年、34さい…です、よ。」
………見えないな。
身体強化、恐るべし。
「そうか。俺は今年25だ。9歳差だな。安心してくれ。ウチの両親は8歳、母親が年上だ。そしてもの凄くラブラブだぞ。9歳と8歳の差など誤差だしな。どんとこいだ。」
「どこに安心できる要素がありました!?そんな話をして、わたしをどうしたいんだい?ああ…、わたしもラース君みたいにもて遊ばれるのかな…。」
否定はしないが、ラースのようなイジり方はジェイデンにはしないだろう…………と、思う。
「はっ!魔王には生贄を捧げれば逃げられるのでは?」
そのネタ引っ張り出すのか?
生贄は間違いなく、俺を魔王と宣った男だろう。
「ラースちゃあーん!」
「うぉ!いきなりなんだよ、アンジェラさん!」
「わたしのために魔王の生贄になってちょうだい!」
「はいぃ!?魔王って…(チラッ)ムリだから!」
「そんなことないわっ!むしろラースちゃんにしかできないコトよ!尊い犠牲なの!」
「ホント無理だって!俺じゃあのエロ魔神にゃ太刀打ち出来ねえよ!」
「エロ魔神…。(ちらり)」
「今の、聞かなかった事にしてくれ!」
「無理よ。きっと魔神には聞こえたわ…。」
「ぐっ!俺は俺の迂闊さが憎い…。」
そんな様子でじゃれ合う二人は文句なく可愛い。
だが、ラースよ。
随分な言い様じゃないか。
いつかエロ魔神と呼ばれた俺の恐ろしさを思い知らせてやるからな。
今から楽しみにしておけよ。
「聞かれたく無い事だったなら謝るよ。」
首を横に振って答える。
「レイラさんは、20歳近く年上の『オジサン』なんだ。俺なんか色恋の相手にされないさ。」
「そうか。でも慕っていたんだね?」
今度は首を縦に振る。
「大事な人の1人だ。会えなくなっても変わらず、な。あなたにはそんな人は居ないのか?」
「わたしなら、剣の師匠がそうかな。ハンターのランクがAに上がるときに今の姓を名乗り始めたのだけれど、そのとき師匠の姓を貰ったよ。」
「そうか。あなたの師匠なら、剣の腕も人柄も素晴らしかったのだろうな…。」
「ふふっ。君にそう言って貰えると嬉しいよ。」
お互いの理解が深まって良い雰囲気になっていたが、「フェイト!」と言うラースの大声でそんな空気は霧散してしまった。
「騒がしい男だな…。」
だが、俺の声に険はない。
ラースだからな…くらいだ。
「しかし、あのラース君があんなになってしまうとは。」
首を傾げて、ジェイデンを見上げる。
『あの』ってどんなだ?
「あの子はかなりの遣り手なんだよ。普通、独立なんて三十代半ばに入ってからなのに。ウチの宿を建ててくれたときも皆に慕われてたけど、仕事中は真面目だし相当厳しかったよ。見た目もかなり良いし、そのうちハーレムを作るだろうと思っていたけど、その気は無かったみたいだね。若手を集めて工房を立ち上げるんだろう?そっちで甲斐性をみせることを選んだんだよ、きっと。」
ふむ。
「デキる男の匂いは、会った当初はしていたな。」
「だから驚いたんだよ。君やフェイト君に遊ばれて楽しそうにしているのだから。こっちが本来の彼なんだろうけど…。」
「けど?」
なんだ?
「ハーレムに入るのも時間の問題かな、って。すっかり君に夢中じゃないか。」
「やっぱり、そう思うか?」
もちろん、気付いていたけども。
頷いてジェイデンが言った。
「あんなに震えて、ちょっと可哀想になってしまったよ。」
「あー、あれは自分でもやり過ぎたと思っている。あなたまで真っ赤にしてしまったし。」
「それは忘れてほしいかな…。」
「俺が忘れると思うか?」
「………………。」
沈黙を返されてしまった。
「そのだんまりはラースと同じ目に合いたいというリクエストだと解釈するぞ?」
「うぅ、わかったよ。」
「でもあれは仕方ないんだ。性癖?みたいなものだし。」
「いきなりなんだい!?びっくりするじゃないか。」
ジェイデンも他人事ではないし、教えても良いか。
「俺は子どもの頃から、欲の籠もったいろんなモノを向けられて来た。俺の意思などお構い無しに、俺を好きにしようとした奴らもそれなりに居た。そのせいか俺に惚れていたり性的に意識しているのに、俺のためを思って我慢したり、バレてるのにバレないように努力するやつが可愛くて仕方ないんだ。」
「それって………。」
コクリと頷く。
まんま、ラースだ。
「だからあんな扱いなのか。ラース君が不憫に思えて来たよ。」
「大丈夫だ。性的に、手は出さない。」
多分。
「そういう問題かい?」
「それにラースも言っていただろう?あなたも他人事ではないと。」
きょとんとされてしまった。
無自覚か…。
だとしたら危ないぞ。
俺に喰われたいなら止めないが。
「ラースから感じる熱を、あなたからも感じるぞ、ジェイデン。気付いていなかったのか?」
「ふえっ。そっ、そんなことな「ないのか?」……いこともないかもしれない…。」
面白いくらいに慌てだしたな。
「でも下手したら10歳以上離れてるのに!」
そこまでか?
「失礼だが、何歳だ?」
「………今年、34さい…です、よ。」
………見えないな。
身体強化、恐るべし。
「そうか。俺は今年25だ。9歳差だな。安心してくれ。ウチの両親は8歳、母親が年上だ。そしてもの凄くラブラブだぞ。9歳と8歳の差など誤差だしな。どんとこいだ。」
「どこに安心できる要素がありました!?そんな話をして、わたしをどうしたいんだい?ああ…、わたしもラース君みたいにもて遊ばれるのかな…。」
否定はしないが、ラースのようなイジり方はジェイデンにはしないだろう…………と、思う。
「はっ!魔王には生贄を捧げれば逃げられるのでは?」
そのネタ引っ張り出すのか?
生贄は間違いなく、俺を魔王と宣った男だろう。
「ラースちゃあーん!」
「うぉ!いきなりなんだよ、アンジェラさん!」
「わたしのために魔王の生贄になってちょうだい!」
「はいぃ!?魔王って…(チラッ)ムリだから!」
「そんなことないわっ!むしろラースちゃんにしかできないコトよ!尊い犠牲なの!」
「ホント無理だって!俺じゃあのエロ魔神にゃ太刀打ち出来ねえよ!」
「エロ魔神…。(ちらり)」
「今の、聞かなかった事にしてくれ!」
「無理よ。きっと魔神には聞こえたわ…。」
「ぐっ!俺は俺の迂闊さが憎い…。」
そんな様子でじゃれ合う二人は文句なく可愛い。
だが、ラースよ。
随分な言い様じゃないか。
いつかエロ魔神と呼ばれた俺の恐ろしさを思い知らせてやるからな。
今から楽しみにしておけよ。
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