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3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて
09
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「俺の風呂…。」
俺の呟きを聞いて、ジェイデンが思わず、というように口を開く。
「シオンちゃん、今度一緒に温泉に行きましょ!皆で行けば野営でもきっと楽しいわ!」
「そうですよ!少しの間我慢してください。僕も働いて旅行費用貯めますから。ね、ラースさん!」
「俺もかっ!風呂ってぜっ、全裸で入るんだろ?大丈夫なのか!?不安なのは俺だけか!?」
「僕は問題ありません。むしろシオンさんにお願いして、お風呂シオンさんをこの目に焼き付けます!」
「わたしも大丈夫よ。そりゃあ少し恥ずかしいけれど、温泉は裸のお付き合いをすることもある場所だって知っているもの。ラースちゃんは行かないの?」
「くっ!そんなこと言われても、俺はベッド以外で全裸になった事なんて無いんだ!」
「それでは残念ですけど、ラースさんは不参加って事ですね。」
「行かないとは言ってない!」
「じゃあ行くのね?」
「行く………って!アンジェラさんまで俺を嵌めるのか!」
「折角温泉まで行くのよ?マスコットが必要でしょ!ね、シオンちゃん。」
「俺を気遣ってくれてありがとう。心配させてしまったな。三人の会話を聞いていたら沈んでいた気持ちが浮上してきたよ。」
俺は良い人たちに出会えたな。
優しさがささくれだった心に沁みる。
「なに良い話にして終わろうとしてんだ!俺の扱い酷くないか?」
さすがラース、自らイジられにくるとは。
「ラースは人に見られて恥ずかしい身体でもしているのか?」
「そんな事ねぇ!」
「じゃあ問題ないじゃないか。まあ、俺も含めてだが、どんな身体でもジェイデンの前では霞むだろうがな。」
めったにお目にかかれない雄っぱいだもんな。
ラースのも中々だがジェイデンと比べると迫力が違う。
「た、確かに。今から鍛えるか?いや、でもな…。」
ごにょごにょと、はっきりしないな。
「シ、シオン。お前はアンジェラさんの身体をどう思う?」
「好きだ。素直に羨ましい。俺はどんなに鍛えても、身体に厚さがないからな。」
隣で「ふあぁっ!」とか言ってるが今は放置だ。
「じゃあ俺の身体は?」
「ラースも同じだ。羨ましい。」
何なんだ?
「そうか。じゃあ俺も温泉行くぜ。」
どことなく嬉しそうだな。
そんなラースに提案だ。
「全裸が嫌なら水着を着たら良い。」
「なんだ、それ?」
「水遊び用の服だ。それを着ればあんたの全裸はベッドの相手以外には知られずに済むぞ。」
「それ、頼むから忘れてくれ。またネタにされそうで怖えぇんだよ。」
「そんな事を言われて、忘れるわけないだろ。なあ、フェイト。」
またニヤけてしまうだろ。
「はいっ」と言う元気な返事を聞いて「俺はまたいらん事を口走ったのか?」と頭を抱えるラースを、ジェイデンが「やっぱり若いっていいわぁ」と眩しい物を見るように眺めていた。
「じゃあシオンちゃんのお部屋は、最初に聞いた長期滞在向けの客室で良いかしら?」
「知らなかったとはいえ、我儘を言って申し訳なかった。よろしく頼む。色々と教えて貰えて助かる。ありがとう、ジェイデン。」
「ふふっ。どういたしまして。フェイトちゃんは希望する条件はないの?」
「僕は、出来たら日当たりの良い所が良いです。あの、よろしくおねがいします。」
「わかったわ。ちょっと待っててね。」
そう言って席を立ち、少しして新しい飲み物と部屋の鍵を持ってジェイデンが戻ってきた。
「お待たせ。フェイトちゃんは3階、シオンちゃんは4階のお部屋よ。これが鍵だから、魔力を流して使用者登録してちょうだい。それでこの魔道具を鍵として使えるのは、登録した人だけになるわ。外出するときは受付に預けてね。ちなみにフェイトちゃんの作品よ。」
まじまじと観察していたら、フェイトが赤くなった。
「そんなに熱心に見られたら、あの、恥ずかしいです。」
「そうか。じゃあ後でじっくり見てみよう。」
「そ、それはそれで恥ずかしいです」と言う訴えを聞き流して、宿の名前と部屋番号、植物の意匠が彫られた金属のプレートを空間収納にしまった。
「それで、支払いはどのようにすれば良い?」
「あら、まだ言ってなかったわね、ごめんなさい。二人とも朝食付きで、1泊大銅貨5枚(5000円)よ。昼食はレストラン、夕食はレストランかバーを利用してくれたら、宿泊者はお会計が2割引になるわ。フェイトちゃんは後払い、シオンちゃんは先払いでお願いね。」
「支払いの方法は現金払いだけだろうか?」
「基本的には、そうよ。何かあるのね?シオンちゃんの考えなら聞いてみたいわ。教えてちょうだい。」
「ありがとう。知っての通り今の俺は無職だ。ハンターをして生計を立てるつもりだが、まだハンターになってもいない。ちゃんと稼げるかもわからない。」
自分で言ってて情けなくなるな。
「じゃあ、あなたも後払いにしたいの?」
「いや、支払いは慰謝料で問題なくできる。だが先の見通しが立っていない今は、現金をなるべく貯めておきたい。」
「酒場で給仕してチップでも貰うのか?」
「ラース、俺が給仕したら、きっと酒場に迷惑しかかからないぞ。」
「じゃあ、どうすんだ?」
「こういうのはどうだろう?」
飲み物の入ったカップを持ち、魔法を付与してジェイデンに差し出す。
俺の呟きを聞いて、ジェイデンが思わず、というように口を開く。
「シオンちゃん、今度一緒に温泉に行きましょ!皆で行けば野営でもきっと楽しいわ!」
「そうですよ!少しの間我慢してください。僕も働いて旅行費用貯めますから。ね、ラースさん!」
「俺もかっ!風呂ってぜっ、全裸で入るんだろ?大丈夫なのか!?不安なのは俺だけか!?」
「僕は問題ありません。むしろシオンさんにお願いして、お風呂シオンさんをこの目に焼き付けます!」
「わたしも大丈夫よ。そりゃあ少し恥ずかしいけれど、温泉は裸のお付き合いをすることもある場所だって知っているもの。ラースちゃんは行かないの?」
「くっ!そんなこと言われても、俺はベッド以外で全裸になった事なんて無いんだ!」
「それでは残念ですけど、ラースさんは不参加って事ですね。」
「行かないとは言ってない!」
「じゃあ行くのね?」
「行く………って!アンジェラさんまで俺を嵌めるのか!」
「折角温泉まで行くのよ?マスコットが必要でしょ!ね、シオンちゃん。」
「俺を気遣ってくれてありがとう。心配させてしまったな。三人の会話を聞いていたら沈んでいた気持ちが浮上してきたよ。」
俺は良い人たちに出会えたな。
優しさがささくれだった心に沁みる。
「なに良い話にして終わろうとしてんだ!俺の扱い酷くないか?」
さすがラース、自らイジられにくるとは。
「ラースは人に見られて恥ずかしい身体でもしているのか?」
「そんな事ねぇ!」
「じゃあ問題ないじゃないか。まあ、俺も含めてだが、どんな身体でもジェイデンの前では霞むだろうがな。」
めったにお目にかかれない雄っぱいだもんな。
ラースのも中々だがジェイデンと比べると迫力が違う。
「た、確かに。今から鍛えるか?いや、でもな…。」
ごにょごにょと、はっきりしないな。
「シ、シオン。お前はアンジェラさんの身体をどう思う?」
「好きだ。素直に羨ましい。俺はどんなに鍛えても、身体に厚さがないからな。」
隣で「ふあぁっ!」とか言ってるが今は放置だ。
「じゃあ俺の身体は?」
「ラースも同じだ。羨ましい。」
何なんだ?
「そうか。じゃあ俺も温泉行くぜ。」
どことなく嬉しそうだな。
そんなラースに提案だ。
「全裸が嫌なら水着を着たら良い。」
「なんだ、それ?」
「水遊び用の服だ。それを着ればあんたの全裸はベッドの相手以外には知られずに済むぞ。」
「それ、頼むから忘れてくれ。またネタにされそうで怖えぇんだよ。」
「そんな事を言われて、忘れるわけないだろ。なあ、フェイト。」
またニヤけてしまうだろ。
「はいっ」と言う元気な返事を聞いて「俺はまたいらん事を口走ったのか?」と頭を抱えるラースを、ジェイデンが「やっぱり若いっていいわぁ」と眩しい物を見るように眺めていた。
「じゃあシオンちゃんのお部屋は、最初に聞いた長期滞在向けの客室で良いかしら?」
「知らなかったとはいえ、我儘を言って申し訳なかった。よろしく頼む。色々と教えて貰えて助かる。ありがとう、ジェイデン。」
「ふふっ。どういたしまして。フェイトちゃんは希望する条件はないの?」
「僕は、出来たら日当たりの良い所が良いです。あの、よろしくおねがいします。」
「わかったわ。ちょっと待っててね。」
そう言って席を立ち、少しして新しい飲み物と部屋の鍵を持ってジェイデンが戻ってきた。
「お待たせ。フェイトちゃんは3階、シオンちゃんは4階のお部屋よ。これが鍵だから、魔力を流して使用者登録してちょうだい。それでこの魔道具を鍵として使えるのは、登録した人だけになるわ。外出するときは受付に預けてね。ちなみにフェイトちゃんの作品よ。」
まじまじと観察していたら、フェイトが赤くなった。
「そんなに熱心に見られたら、あの、恥ずかしいです。」
「そうか。じゃあ後でじっくり見てみよう。」
「そ、それはそれで恥ずかしいです」と言う訴えを聞き流して、宿の名前と部屋番号、植物の意匠が彫られた金属のプレートを空間収納にしまった。
「それで、支払いはどのようにすれば良い?」
「あら、まだ言ってなかったわね、ごめんなさい。二人とも朝食付きで、1泊大銅貨5枚(5000円)よ。昼食はレストラン、夕食はレストランかバーを利用してくれたら、宿泊者はお会計が2割引になるわ。フェイトちゃんは後払い、シオンちゃんは先払いでお願いね。」
「支払いの方法は現金払いだけだろうか?」
「基本的には、そうよ。何かあるのね?シオンちゃんの考えなら聞いてみたいわ。教えてちょうだい。」
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自分で言ってて情けなくなるな。
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「いや、支払いは慰謝料で問題なくできる。だが先の見通しが立っていない今は、現金をなるべく貯めておきたい。」
「酒場で給仕してチップでも貰うのか?」
「ラース、俺が給仕したら、きっと酒場に迷惑しかかからないぞ。」
「じゃあ、どうすんだ?」
「こういうのはどうだろう?」
飲み物の入ったカップを持ち、魔法を付与してジェイデンに差し出す。
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