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3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて
05
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「ラース。」
「なっ、なんだ?」
いきなり話しかけられたからって驚き過ぎだ。
「俺が誰かの靴を脱がせる事に何か問題はあるか?」
足は性的に……と聞いた事があるので一応確認する。
「ああ、脱がせたいと言えば夜の誘いだな。だが、断りを入れて許可を貰えば問題無い。」
「そうか、ありがとう。」
アンジェラの足元に跪き、許可を求める。
「ではアンジェラママ、俺にあなたの靴を脱がせる許可を頂きたい。」
少し頬を上気させながら「ええ、良いわ」と答えを貰ったので、「失礼する」と言ってから靴を脱がせて足に触れ、新しい靴を作る。
下心はないが悩ましげな表情をされてしまうと、イケナイことをしている気分になってくる。
でもこの人をこんな顔にしたのが俺だと思うと気分が良いから不思議だ。
折角なのでベーシックな黒とベージュの2色を作った。
黒はスエードで、ヒールと踵を包む部分に、金属で羽をあしらった。
ベージュはエナメルで、ヒール部分はパイソンの皮を巻いて仕上げた。
もちろんちゃんと両方とも太いヒールだ。
履き心地は広告で見た、飛んだり跳ねたり走ったりできる物をイメージしてみた。
立ち仕事のダメージを軽減できるといいのだけれど。
「………アンジェラさん、お姫様みたい。」
もう一度足を取って丁寧に靴を履かせると、今まで静かにしていたフェイトが呟いた。
それを聞いたアンジェラが呆然とする。
確かに『王子』と呼ばれる父にそっくりな俺が跪いて靴を履かせていれば、アンジェラはお姫様だろう。
「あなたの足に合うように作ったつもりだが、確かめてほしい。」
そう言うと、放心していた彼が慌てて「わかったわ」と立ち上がり履き心地をチェックする。
「柔かいし、足にフィットして歩きやすいわ。」
「それは良かった。素人のデザインだから、そこは目を瞑ってくれると嬉しい。」
これは仕方ない。
俺はデザイナーじゃないからな。
アンジェラ→天使→羽って安直だもんな。
「とってもステキよ!ありがとう。」
少し涙ぐみながら礼を言われたが、何か彼の琴線に触れるものがあったのだろうか。
「そうか、気に入ってもらえたなら良かった。ではこちらも。」
「パールの1つに魔力を流してみてほしい。」
今度は彼の手を取り、ブレスレットを着けた。
彼が魔力を流すと、何もしていなかった彼の爪がネイルアートを施された見た目に変わっていく。
どうやらピンクベージュのベースに爪の根元にラインストーンを散りばめたデザインだったようだ。
ちなみに剣を握るからか指の関節が太かったので、それを目立たなくさせるために爪は長めにしてある。
「凄いわ!こんな事もできるなんて!」
「身体強化を指南してもらう事の礼だ。これなら剥げないし割れないだろ。気に入ったなら使ってもらえると嬉しい。」
指先と足元でバレるぞ、という忠告もな。
「ええ!大切にするわ!それとね………。私の本当の名前、ジェイデンって言うの。折角アンジェラママって呼んでくれてるのに申し訳ないんだけれど、アナタには本当の名前で呼んでほしいわ…。」
「わかった、ジェイデン。あなたと顔を合わせているときは、そう呼ばせてもらおう。」
そんなに切なげな表情で縋るように言わなくても断らないよ。
なぜだろう、この人を真綿で包むように大切にしたい。
「それにしてもシオンさん、本当になんでもできちゃいますね!僕もコレを頂きましたしけど…。」
フェイトがネックレスをそっと握る。
「フェイトちゃんも何か貰ったの?」
「はい。僕は変装用の付与をしてもらいました。」
そう言うとフェイトは髪と瞳の色を変えて見せた。
「まぁ…。あなたの安全を考えてくれたのね。」
「はい!」
二人とも嬉しそうで良かったよ。
「…俺には?」
何言ってんだ。
マジックバッグがあるだろ………ってあれは売ったものだから、ノーカウントか。
折りたたみベッドもラースが望んだ物じゃないしな。
でもなぁ………。
「ラースには必要か?」
「…………………だよな。」
思ったより凹んでるな。
「まあ、なんだ………生命の危機とかで必要な物ができたら相談してくれ。」
「………ありがとうよ。」
まだ凹んでるな。
「フェイト、ラースが凹んでて戻ってこないから助けてくれ。」
「ええぇっ。……………あっ、ほっぺにキスしてあげたら良いんじゃないですか?」
「フェイトっ!またそのネタか!」
「でも元気になったじゃないですか!」
どこが元気になるかは聞かないが、このイジりで復活するのか。
「ラース、フェイトに手玉に取られてるな。」
「もうイヤだお前ら。ホントにおっかない。」
そんなこと言うなよ、ちょっと嬉しそうな顔してるぞ。
「ふふっ!本当に仲良しさんね。でもそろそろシオンちゃんの本題に入って貰えるかしら。あなたの事情も気になるわ。」
頷いてから昨日からのことをジェイデンに説明する。
彼はどんな反応をするだろうか?
「なっ、なんだ?」
いきなり話しかけられたからって驚き過ぎだ。
「俺が誰かの靴を脱がせる事に何か問題はあるか?」
足は性的に……と聞いた事があるので一応確認する。
「ああ、脱がせたいと言えば夜の誘いだな。だが、断りを入れて許可を貰えば問題無い。」
「そうか、ありがとう。」
アンジェラの足元に跪き、許可を求める。
「ではアンジェラママ、俺にあなたの靴を脱がせる許可を頂きたい。」
少し頬を上気させながら「ええ、良いわ」と答えを貰ったので、「失礼する」と言ってから靴を脱がせて足に触れ、新しい靴を作る。
下心はないが悩ましげな表情をされてしまうと、イケナイことをしている気分になってくる。
でもこの人をこんな顔にしたのが俺だと思うと気分が良いから不思議だ。
折角なのでベーシックな黒とベージュの2色を作った。
黒はスエードで、ヒールと踵を包む部分に、金属で羽をあしらった。
ベージュはエナメルで、ヒール部分はパイソンの皮を巻いて仕上げた。
もちろんちゃんと両方とも太いヒールだ。
履き心地は広告で見た、飛んだり跳ねたり走ったりできる物をイメージしてみた。
立ち仕事のダメージを軽減できるといいのだけれど。
「………アンジェラさん、お姫様みたい。」
もう一度足を取って丁寧に靴を履かせると、今まで静かにしていたフェイトが呟いた。
それを聞いたアンジェラが呆然とする。
確かに『王子』と呼ばれる父にそっくりな俺が跪いて靴を履かせていれば、アンジェラはお姫様だろう。
「あなたの足に合うように作ったつもりだが、確かめてほしい。」
そう言うと、放心していた彼が慌てて「わかったわ」と立ち上がり履き心地をチェックする。
「柔かいし、足にフィットして歩きやすいわ。」
「それは良かった。素人のデザインだから、そこは目を瞑ってくれると嬉しい。」
これは仕方ない。
俺はデザイナーじゃないからな。
アンジェラ→天使→羽って安直だもんな。
「とってもステキよ!ありがとう。」
少し涙ぐみながら礼を言われたが、何か彼の琴線に触れるものがあったのだろうか。
「そうか、気に入ってもらえたなら良かった。ではこちらも。」
「パールの1つに魔力を流してみてほしい。」
今度は彼の手を取り、ブレスレットを着けた。
彼が魔力を流すと、何もしていなかった彼の爪がネイルアートを施された見た目に変わっていく。
どうやらピンクベージュのベースに爪の根元にラインストーンを散りばめたデザインだったようだ。
ちなみに剣を握るからか指の関節が太かったので、それを目立たなくさせるために爪は長めにしてある。
「凄いわ!こんな事もできるなんて!」
「身体強化を指南してもらう事の礼だ。これなら剥げないし割れないだろ。気に入ったなら使ってもらえると嬉しい。」
指先と足元でバレるぞ、という忠告もな。
「ええ!大切にするわ!それとね………。私の本当の名前、ジェイデンって言うの。折角アンジェラママって呼んでくれてるのに申し訳ないんだけれど、アナタには本当の名前で呼んでほしいわ…。」
「わかった、ジェイデン。あなたと顔を合わせているときは、そう呼ばせてもらおう。」
そんなに切なげな表情で縋るように言わなくても断らないよ。
なぜだろう、この人を真綿で包むように大切にしたい。
「それにしてもシオンさん、本当になんでもできちゃいますね!僕もコレを頂きましたしけど…。」
フェイトがネックレスをそっと握る。
「フェイトちゃんも何か貰ったの?」
「はい。僕は変装用の付与をしてもらいました。」
そう言うとフェイトは髪と瞳の色を変えて見せた。
「まぁ…。あなたの安全を考えてくれたのね。」
「はい!」
二人とも嬉しそうで良かったよ。
「…俺には?」
何言ってんだ。
マジックバッグがあるだろ………ってあれは売ったものだから、ノーカウントか。
折りたたみベッドもラースが望んだ物じゃないしな。
でもなぁ………。
「ラースには必要か?」
「…………………だよな。」
思ったより凹んでるな。
「まあ、なんだ………生命の危機とかで必要な物ができたら相談してくれ。」
「………ありがとうよ。」
まだ凹んでるな。
「フェイト、ラースが凹んでて戻ってこないから助けてくれ。」
「ええぇっ。……………あっ、ほっぺにキスしてあげたら良いんじゃないですか?」
「フェイトっ!またそのネタか!」
「でも元気になったじゃないですか!」
どこが元気になるかは聞かないが、このイジりで復活するのか。
「ラース、フェイトに手玉に取られてるな。」
「もうイヤだお前ら。ホントにおっかない。」
そんなこと言うなよ、ちょっと嬉しそうな顔してるぞ。
「ふふっ!本当に仲良しさんね。でもそろそろシオンちゃんの本題に入って貰えるかしら。あなたの事情も気になるわ。」
頷いてから昨日からのことをジェイデンに説明する。
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