ダメな方の異世界召喚された俺は、それでも風呂と伴侶を愛してる

おりく

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3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて

01

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三人で連れ立って屋台の並ぶ区画を歩いていく。

「コレはどうだ?たくさん食えよ。」

ラースから餃子っぽい物を渡された。
西洋風な世界に餃子…。

「揚げ餃子も美味いが、今日は焼き餃子の気分だな。」

まんま餃子って言った…。
俺の知ってる近い料理名で翻訳されてるのか、過去の召喚者が広めたのか…。
美味かったらどっちでも良いか。

「野菜も食べましょうね?」

フェイトからはコッペパンみたいなパンに野菜とチキンが挟んである物を渡された。

食べ物はほぼ同じで、サイズは大きく海外のものみたいだ。
まあ異世界なんだけどな。

野外のフードコートみたいな場所で空いている席に座ると、ラースがもう一度屋台に向かいスープを買って来てくれた。

「遠慮せずに食べてくれ。」

他にも串焼きやドライフルーツの入ったパンなんかも並んでいる。

「そうですよ。鞄の報酬ですからね。」

「じゃあ、遠慮なく。」

チキンと野菜のサンドイッチからいただく。
お酢の効いたドレッシングが食欲を唆る美味さだ。
ドライフルーツ入りのパンは予想より甘くなかったが、フルーツの良い香りがした。
買って貰ったからには感想を言わなければ。

「美味いよ。」

「………はい。良かったです。」

次は餃子と串焼きだ。
餃子をフォークで食べるなんて変な感じだが、どちらも美味い。
串焼きはシンプルに塩味だった。

「こっちは食べ応えがあって美味い。」

「………ああ。どんどん食えよ。」

………。
食べ始めてから二人の視線が刺さってるんだが。

「大っきな口を開けてパンを頬張るシオンさん、尊い…。」

「串焼きを横から噛じるシオン、エロい…。」

………そうかよ。
今夜のラースのオカズは俺か。
そのくらいは許容範囲だけどな。

「二人とも俺ばっかり見てないで温かい内に食べろよ。」

「そっ、そうですね。」

そう言って食べ始めたが、チラチラとフェイトの視線を感じる。

「………………。」

こっちは無言で、ひたすら口を動かしてるな。
俺の口元に視線が釘付けだ。
前屈みになってないなら許してやろう。
この程度の事なんかよくあったし、我慢してるのもわかるからな。

こうなるとラースにイタズラしたくなってくるな。
指に付いたドレッシングなんか《クリーン》でキレイにできるけど、舐め取ってみるか?
やり過ぎか。
折角できた友人を無くすようなことは控えよう。
フェイトのテンションも上がりそうだし。
でも赤くなったフェイト、小動物に通じる可愛さがあるんだよな。

屋台メシは美味かったが、しょっぱい系統の味が多かったから甘くてすっきりする物が欲しい。
喉も乾いたし、ジンジャーエールかな。
コップに入った状態を思い浮かべて、こっそり用意する。

「良かったら、飲んで。」

「いっ、いただきます!」

いかにも「見てません!」て雰囲気出してるけど大丈夫だ、フェイト。
さっきの視線くらいじゃ嫌いにならないから。

「っは!俺は何を…!」

ラースは放って置いても面白いな。

「っ!シオンさん、ほんのり甘くて、しゅわしゅわします!」

この国、炭酸飲料無いのか?

「確かにエールでもないのにしゅわしゅわするな。」

フェイトがしゅわしゅわって言うと可愛いな。
ラースが言うと面白い。

「好みじゃなかった?」

「いいえ!びっくりしましたけど、美味しいです。」

「油を使った料理の口直しに良いな。甘過ぎないし、美味い。」

「俺も昼飯食べさせて貰ったし、喜んでもらえて良かったよ。」

今度はアップルタイザーを出してみようか。
いくらマジックバッグ代で奢って貰うからって、何もしないのは落ち着かないからな。



◇◇◇◇◇

会話と食事を楽しんで、目的の宿に到着したが…。

『エンジェルスマイル』って、スナックか?
スナックのママがアンジェラだから『エンジェルスマイル』なのか?
宿の看板を見たまま固まっていた俺の肩に手が置かれた。

「まあ、なんだ。泊まるのにちょっと勇気が要る名前かもしれんが、良い宿には違いないからな?」

「皆さん、特に男性はアンジェラさんの宿って呼んでますしね?」

俺もそう呼ぼう。
『エンジェルスマイルに泊まってるんだ』と言えるようになるには、修行が足りないらしい。

「とにかく、中に入ろうぜ。」

ラースが扉を開けてくれた。

「いらっしゃいませ!お泊りですか?お食事ですか?ってラースさんとフェイトさんじゃない。今日はお仕事ですか?」

顔見知りらしい従業員が応対してくれる。

「あの、今日はアンジェラさんにお話しがあって来ました。こちらにいらっしゃいますか?」

「オーナーなら酒場の方に居るんじゃないかしら。行ってみてくれる?」

「わかりました。ありがとうございます。では行きましょうか。」

受付を挟んで左右にレストランと酒場、二階からが宿の個室みたいだな。
フェイトが酒場で何か作業中の背中に声をかける。

「こんにちは、アンジェラさん。突然すみません。お仕事中ですか?終わってからで良いので、お時間いただけませんか?」

ガッシリした体躯のラースよりも一回り以上大きな身体が振り返った。
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