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2章 間違った使い方をされた麻袋と中の人
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「帰した。アイツも身の振り方を考えなきゃならんだろうしな。」
「そうか。結局、俺とはまともに会話どころか挨拶すらしなかったな。」
「以前はあんなじゃなかったんですけどね…。」
「まあな。アイツも貴族の下らん見栄に振り回されて可哀想だが、他人を巻き込むのは…な。」
二人ともしんみりしてしまった。
ここでも貴族か…嫌になるな。
「ルジェには俺が独立する時、一緒に家を出る選択肢もあったんだ。若手だけで集まったって上手く行く訳ないって言って、親の庇護から抜け出さなかったのはアイツ自身だからな。」
「ちなみに、その貴族の見栄って何なんだ?」
知らないで巻き込まれるのは遠慮したい。
「まあ貴族だけじゃなくて商人とか他の有力者もなんだが、権力や立場に見合っただけの人間を養えって言われてるのさ。」
何だそれは。
「貴族や有力者は、たくさんの妻や夫や愛人なんかを囲って、ハーレムを作って養って、使用人もハーレムに見合うだけ雇えってな。それがイヤなら事業を起こして人を雇ったり、パトロンになったり、寄付しろとかな。できないと甲斐性なし扱いだ。体裁が悪くなる。」
「嫌な慣習だな。」
「そうだな。ルジェも妾の子だし。平民だと妾の子どうしを交換して、ハーレムに入れて体裁を整えたりするのさ。異父・異母の兄弟なら婚姻できるから、跡継ぎのハーレム要員にされるのもザラだ。貴族が相手なら気に入られればそのままハーレムに居られる。だが数合わせや水増しに使われて、お気に入りが見つかったら追い出されたりするんだ。ハーレムに入ったからって必ずしも婚姻を結ぶ訳じゃ無い。だから婚姻しない限り、財産を受け取る権利なんかも無いし、いつ捨てられるかわからないんだ。」
「酷いな…。」
「ハーレムが大きくなると維持費がかかるし、子どもも増えますからね。その子どもたちを養って婚姻させるのにもお金がかかりますから。どこかに歪みが出るのは当たり前なんです。本当に悪循環だと思います。」
「貴族にハーレム入を打診されたら既婚者以外は断り難いが、ちゃんとした理由があれば絶対に断れないことも無いんだ。俺ら平民も、同棲して子どもがいても籍を入れないことも多いからな。断るために慌てて籍を入れたって話も聞くし。それでルジェも結婚して逃げようとしてたんだ。ルジェが指名されんじゃなくて家と家の話しだから、嫌なら独立して家を出れば良いだけなのにな。」
それは何とも…。
「それにしたってあの調子じゃ、ハーレムでやっていくのは難しいんじゃないか?ルジェの性格じゃハーレムの主を誑し込むのは無理だろう。むしろ煙たがられそうだ。」
「俺もそう思うが、アイツにはヘンに臆病なところがあるからな。フェイトにはきっぱり断られたし、結局は親方の意向に従うだろう。」
「僕も昔は仲良くしていたので、期間限定での契約結婚を持ち掛けられたなら、考えるくらいはしたでしょうが…。さすがにあんな態度では無理ですね。」
「まあ、あとはアイツが考えなきゃならんコトだ。それよりもシオンだ。アンジェラさんの宿に行くんだろ?すっかり微妙な時間になっちまったな。」
「そうですね。チョコレートをいただきましたし、朝食は諦めて、宿に向かいながら早めの昼食にしましょうか。」
「わかった。フェイトはこれから荷造りか?」
「はい。貴重な素材を置いて行くわけにはいかないので。」
「マジックバッグとか自作してるのか?」
異世界の定番だよな。
「えっと、マジックバッグはありますが、僕は持ってないです。製法は限られた魔道具師しか知らないくて。」
「そうか。じゃあ鞄を貸してくれるか?」
無ければ作れば良い。
街歩きに大きな荷物は邪魔なだけだ。
「シオン、まさかお前!」
「できる気がする。」
「またか!フェイトも何か言ってやれ!…フェイト?どこだ!」
「持ってきましたぁ!お願いします!!」
魔道具が絡むとノリノリだな。
スゴイ笑顔だし。
「お前らっ!」
ツッコミは大変だな、ラース。
「だってマジックバッグですよ!実物が見られるかもしれないんですよ!高価でも欲しいです!!」
「俺が作ると空間魔法の付与だから魔道具じゃないと思うけど、解析してくれて構わないからな。」
俺には違いが良くわからないが、頑張ってくれ。
「ふわあぁ!ありがとうございます!」
早速やりますか。
引っ越し用だし、店舗と工房もあるから容量は一辺20メートルの立方体で良いかな。
使用者はフェイトで固定だ。
「…できたぞ。フェイト専用な。これでどうだ?」
「はわぁ、これがマジックバッグ!ありがとうございます!早速荷造りさせてもらいますね!あの、お礼はどうしましょう。シオンさんの望むモノがいいですよね?思い付いたら教えて下さい。たくさん言って下さいね!僕、精一杯頑張ります!」
チョコのことも吹っ飛んで、マジックバッグの日になりそうだ。
「そうか。結局、俺とはまともに会話どころか挨拶すらしなかったな。」
「以前はあんなじゃなかったんですけどね…。」
「まあな。アイツも貴族の下らん見栄に振り回されて可哀想だが、他人を巻き込むのは…な。」
二人ともしんみりしてしまった。
ここでも貴族か…嫌になるな。
「ルジェには俺が独立する時、一緒に家を出る選択肢もあったんだ。若手だけで集まったって上手く行く訳ないって言って、親の庇護から抜け出さなかったのはアイツ自身だからな。」
「ちなみに、その貴族の見栄って何なんだ?」
知らないで巻き込まれるのは遠慮したい。
「まあ貴族だけじゃなくて商人とか他の有力者もなんだが、権力や立場に見合っただけの人間を養えって言われてるのさ。」
何だそれは。
「貴族や有力者は、たくさんの妻や夫や愛人なんかを囲って、ハーレムを作って養って、使用人もハーレムに見合うだけ雇えってな。それがイヤなら事業を起こして人を雇ったり、パトロンになったり、寄付しろとかな。できないと甲斐性なし扱いだ。体裁が悪くなる。」
「嫌な慣習だな。」
「そうだな。ルジェも妾の子だし。平民だと妾の子どうしを交換して、ハーレムに入れて体裁を整えたりするのさ。異父・異母の兄弟なら婚姻できるから、跡継ぎのハーレム要員にされるのもザラだ。貴族が相手なら気に入られればそのままハーレムに居られる。だが数合わせや水増しに使われて、お気に入りが見つかったら追い出されたりするんだ。ハーレムに入ったからって必ずしも婚姻を結ぶ訳じゃ無い。だから婚姻しない限り、財産を受け取る権利なんかも無いし、いつ捨てられるかわからないんだ。」
「酷いな…。」
「ハーレムが大きくなると維持費がかかるし、子どもも増えますからね。その子どもたちを養って婚姻させるのにもお金がかかりますから。どこかに歪みが出るのは当たり前なんです。本当に悪循環だと思います。」
「貴族にハーレム入を打診されたら既婚者以外は断り難いが、ちゃんとした理由があれば絶対に断れないことも無いんだ。俺ら平民も、同棲して子どもがいても籍を入れないことも多いからな。断るために慌てて籍を入れたって話も聞くし。それでルジェも結婚して逃げようとしてたんだ。ルジェが指名されんじゃなくて家と家の話しだから、嫌なら独立して家を出れば良いだけなのにな。」
それは何とも…。
「それにしたってあの調子じゃ、ハーレムでやっていくのは難しいんじゃないか?ルジェの性格じゃハーレムの主を誑し込むのは無理だろう。むしろ煙たがられそうだ。」
「俺もそう思うが、アイツにはヘンに臆病なところがあるからな。フェイトにはきっぱり断られたし、結局は親方の意向に従うだろう。」
「僕も昔は仲良くしていたので、期間限定での契約結婚を持ち掛けられたなら、考えるくらいはしたでしょうが…。さすがにあんな態度では無理ですね。」
「まあ、あとはアイツが考えなきゃならんコトだ。それよりもシオンだ。アンジェラさんの宿に行くんだろ?すっかり微妙な時間になっちまったな。」
「そうですね。チョコレートをいただきましたし、朝食は諦めて、宿に向かいながら早めの昼食にしましょうか。」
「わかった。フェイトはこれから荷造りか?」
「はい。貴重な素材を置いて行くわけにはいかないので。」
「マジックバッグとか自作してるのか?」
異世界の定番だよな。
「えっと、マジックバッグはありますが、僕は持ってないです。製法は限られた魔道具師しか知らないくて。」
「そうか。じゃあ鞄を貸してくれるか?」
無ければ作れば良い。
街歩きに大きな荷物は邪魔なだけだ。
「シオン、まさかお前!」
「できる気がする。」
「またか!フェイトも何か言ってやれ!…フェイト?どこだ!」
「持ってきましたぁ!お願いします!!」
魔道具が絡むとノリノリだな。
スゴイ笑顔だし。
「お前らっ!」
ツッコミは大変だな、ラース。
「だってマジックバッグですよ!実物が見られるかもしれないんですよ!高価でも欲しいです!!」
「俺が作ると空間魔法の付与だから魔道具じゃないと思うけど、解析してくれて構わないからな。」
俺には違いが良くわからないが、頑張ってくれ。
「ふわあぁ!ありがとうございます!」
早速やりますか。
引っ越し用だし、店舗と工房もあるから容量は一辺20メートルの立方体で良いかな。
使用者はフェイトで固定だ。
「…できたぞ。フェイト専用な。これでどうだ?」
「はわぁ、これがマジックバッグ!ありがとうございます!早速荷造りさせてもらいますね!あの、お礼はどうしましょう。シオンさんの望むモノがいいですよね?思い付いたら教えて下さい。たくさん言って下さいね!僕、精一杯頑張ります!」
チョコのことも吹っ飛んで、マジックバッグの日になりそうだ。
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