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2章 間違った使い方をされた麻袋と中の人
09
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翌朝、俺はリビングから聞こえる人の声で起きた。
ラースが居るから大丈夫だろうがルジェが何かしたのかもしれない。
他人の家のベッドを借りたが疲れもあって思いの外ぐっすり眠れた。
疲労回復って魔法でできないのか?
身体本来の回復力に悪影響とかあるんだろうか…。
そんなことを考えながら身体を起こし大きく伸びをする。
昨日は忘れていたが折角魔法が使えるのだから今晩からは結界を張ってみよう。
侵入者は許さない方向で。
起きたら誰かに乗っかられてるとか最悪だしな。
昨夜、ラースが《クリーン》をかけてくれたのを思い出し自分でもやってみる。
…多分できた。
ホワッとしたからな。
最低限の身だしなみを整えてリビングに向うと口を洗うフェイトと説教するラースと説教されるルジェが居た。
俺の、今日を平和に過ごす願いは、叶わないことが朝イチで確定した。
これは……あれだな。
ルジェが無理矢理フェイトにキスしてラースに怒られてるんだろう。
なぜそんなことになったんだ。
しかも《クリーン》があるのにわざわざ口を洗うとかどれだけ嫌だったんだ。
まだ洗ってるし、可哀想に少し泣いてる。
「フェイト、ラース、おはよう。理由は知らないがルジェがフェイトにキスでもしたんだろ?」
「なぜわかった!」
自分で白状したよコイツ。
むしろわからないと思える方が凄い。
「シオン!」
「シオンさん!」
「おいで、フェイト。嫌な思いをしたな。」
腕を広げて待つ。
「シオンさぁん…うぅぅ。」
変なのに執着されて可哀想に。
「何でオレはダメで、ソイツなら良いんだ!それにキスくらい何だってんだ!減るもんでもないだろうが!」
俺の腕の中のフェイトを見て大声を上げる。
うるさい男だな。
昨日反省したんじゃないのか。
「…ラース。」
「すまん、フェイトを頼んだ。」
まあ、そうなるわな。
「そっちもな。」
さて…取り敢えず口直しだな。
恋人ならキスで上書きなんだろうが俺とフェイトはそういう関係ではない。
二人とも色恋が絡んだ関係になることを望んでいない。
だから「おいで」とか言えるんだ。
俺が惚れた相手か、俺に惚れない相手以外に言うと色々危ない。
それか自制できるやつ。
じゃないと勘違いしたりストーカー化したりするからな。
だがそうなると俺に思い浮かぶ口直しは食べ物しかない。
チョコか?ココアか?………どっちもカカオだな。
発想が貧困で泣けてくるな。
しかし空間収納から取り出したことを装うならチョコだな。
甘めのミルクチョコ…ガナッシュとかどうだ?
「フェイト。」
顔を上げて俺を見上げるフェイトの顎を取って、チョコを唇にあてる。
「口、開けて?」
返事に関係なくチョコを口内にそっと押し込む。
きっと美味いと思う。
出すときに、一粒¥500のチョコを想像したからな。
高価ければ美味いってモノでもないと思うが不味いってことはないだろう。
後は好みの問題だ。
「どう?美味しい?」
朝から高速でコクコクしている。
涙は引っ込んだみたいだ。
そんなフェイトを見ながら次を用意する。
「次はコレ。俺の好きなやつ。」
キャラメル風味のチョコだ。
沢山はいらないがたまに食べるとやたら美味く感じる。
「こっちも味見して?」
ビターチョコやトリュフはどうだろう。
オランジェも良いな。
そんな感じでチョコを口に運んでいたが、この勢いで美味しく食べられるのは5、6個だろう。
その数に達した辺りで聞いてみる。
「チョコレート、好き?美味しかった?」
「はいっ!」という返事を期待したのに、ふわふわしていたフェイトの顔色は青くなってしまった。
「っ!チョコレートですか?こっ、これが!しかもこんなにたくさん食べさせてもらって…。高級嗜好品なのに。あの、…ごめんなさい。」
マズい…外した。
確かに高級チョコを出したが、チョコ自体が高級嗜好品だとは…。
「謝らないでくれ。俺が無理に食べさせたんだ。フェイトに喜んでほしくてな。美味しそうに食べてくれていたように見えたけど、違ったか?」
「い、いえ!美味しかったです!いろんな味や香りがあって。それに食感も…。食べてる間、幸せでした…。」
「じゃあ今日の思い出はチョコを食べて幸せだってことでいいな?」
オマケにウィンクも付けるぞ。
多少強引だがアイツにされた事なんか忘れてしまえ。
「…っはい!今日は美味しいチョコレートを食べた記念日です!」
「ってことでラース、こっちは美味しいチョコレートを食べた日になって終わったぞ。そっちはどうだ?」
今度こそ静かになるんだろうな。
「こっちも終わった。こいつがやった事は親方に報告する。そこからは家族で話合ってもらう。シオンは知らんだろうが、ルジェは親方の息子なんだ。ルジェの事情も、親方と無関係じゃないからな。」
「どんな事情があっても無理矢理はダメだろ。で、何でさっきみたいな事になったんだ?」
「あー。それな…。」
気まずそうに頬を指差しながらラースが言う。
頬に何かあるのか?
「お前、覚えてないのか?」
…あー、確かに何かした。
眠たくてふわふわしながら「ちゅ」とか。
ラースが居るから大丈夫だろうがルジェが何かしたのかもしれない。
他人の家のベッドを借りたが疲れもあって思いの外ぐっすり眠れた。
疲労回復って魔法でできないのか?
身体本来の回復力に悪影響とかあるんだろうか…。
そんなことを考えながら身体を起こし大きく伸びをする。
昨日は忘れていたが折角魔法が使えるのだから今晩からは結界を張ってみよう。
侵入者は許さない方向で。
起きたら誰かに乗っかられてるとか最悪だしな。
昨夜、ラースが《クリーン》をかけてくれたのを思い出し自分でもやってみる。
…多分できた。
ホワッとしたからな。
最低限の身だしなみを整えてリビングに向うと口を洗うフェイトと説教するラースと説教されるルジェが居た。
俺の、今日を平和に過ごす願いは、叶わないことが朝イチで確定した。
これは……あれだな。
ルジェが無理矢理フェイトにキスしてラースに怒られてるんだろう。
なぜそんなことになったんだ。
しかも《クリーン》があるのにわざわざ口を洗うとかどれだけ嫌だったんだ。
まだ洗ってるし、可哀想に少し泣いてる。
「フェイト、ラース、おはよう。理由は知らないがルジェがフェイトにキスでもしたんだろ?」
「なぜわかった!」
自分で白状したよコイツ。
むしろわからないと思える方が凄い。
「シオン!」
「シオンさん!」
「おいで、フェイト。嫌な思いをしたな。」
腕を広げて待つ。
「シオンさぁん…うぅぅ。」
変なのに執着されて可哀想に。
「何でオレはダメで、ソイツなら良いんだ!それにキスくらい何だってんだ!減るもんでもないだろうが!」
俺の腕の中のフェイトを見て大声を上げる。
うるさい男だな。
昨日反省したんじゃないのか。
「…ラース。」
「すまん、フェイトを頼んだ。」
まあ、そうなるわな。
「そっちもな。」
さて…取り敢えず口直しだな。
恋人ならキスで上書きなんだろうが俺とフェイトはそういう関係ではない。
二人とも色恋が絡んだ関係になることを望んでいない。
だから「おいで」とか言えるんだ。
俺が惚れた相手か、俺に惚れない相手以外に言うと色々危ない。
それか自制できるやつ。
じゃないと勘違いしたりストーカー化したりするからな。
だがそうなると俺に思い浮かぶ口直しは食べ物しかない。
チョコか?ココアか?………どっちもカカオだな。
発想が貧困で泣けてくるな。
しかし空間収納から取り出したことを装うならチョコだな。
甘めのミルクチョコ…ガナッシュとかどうだ?
「フェイト。」
顔を上げて俺を見上げるフェイトの顎を取って、チョコを唇にあてる。
「口、開けて?」
返事に関係なくチョコを口内にそっと押し込む。
きっと美味いと思う。
出すときに、一粒¥500のチョコを想像したからな。
高価ければ美味いってモノでもないと思うが不味いってことはないだろう。
後は好みの問題だ。
「どう?美味しい?」
朝から高速でコクコクしている。
涙は引っ込んだみたいだ。
そんなフェイトを見ながら次を用意する。
「次はコレ。俺の好きなやつ。」
キャラメル風味のチョコだ。
沢山はいらないがたまに食べるとやたら美味く感じる。
「こっちも味見して?」
ビターチョコやトリュフはどうだろう。
オランジェも良いな。
そんな感じでチョコを口に運んでいたが、この勢いで美味しく食べられるのは5、6個だろう。
その数に達した辺りで聞いてみる。
「チョコレート、好き?美味しかった?」
「はいっ!」という返事を期待したのに、ふわふわしていたフェイトの顔色は青くなってしまった。
「っ!チョコレートですか?こっ、これが!しかもこんなにたくさん食べさせてもらって…。高級嗜好品なのに。あの、…ごめんなさい。」
マズい…外した。
確かに高級チョコを出したが、チョコ自体が高級嗜好品だとは…。
「謝らないでくれ。俺が無理に食べさせたんだ。フェイトに喜んでほしくてな。美味しそうに食べてくれていたように見えたけど、違ったか?」
「い、いえ!美味しかったです!いろんな味や香りがあって。それに食感も…。食べてる間、幸せでした…。」
「じゃあ今日の思い出はチョコを食べて幸せだってことでいいな?」
オマケにウィンクも付けるぞ。
多少強引だがアイツにされた事なんか忘れてしまえ。
「…っはい!今日は美味しいチョコレートを食べた記念日です!」
「ってことでラース、こっちは美味しいチョコレートを食べた日になって終わったぞ。そっちはどうだ?」
今度こそ静かになるんだろうな。
「こっちも終わった。こいつがやった事は親方に報告する。そこからは家族で話合ってもらう。シオンは知らんだろうが、ルジェは親方の息子なんだ。ルジェの事情も、親方と無関係じゃないからな。」
「どんな事情があっても無理矢理はダメだろ。で、何でさっきみたいな事になったんだ?」
「あー。それな…。」
気まずそうに頬を指差しながらラースが言う。
頬に何かあるのか?
「お前、覚えてないのか?」
…あー、確かに何かした。
眠たくてふわふわしながら「ちゅ」とか。
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