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2章 間違った使い方をされた麻袋と中の人
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「それだけか?」
ラースが俺に問いかけ、フェイトが高速でコクコクしている。
更に圧が強くなったのは気の所為じゃさそうだ。
報酬を追加しないと解放されそうにない。
ちなみに俺の両手は二人に確保されたままだ。
「じゃあフェイトは俺にほしい魔道具ができたら、1つ作ってくれ。その次から通常の報酬は払う。だが俺が依頼したら優先して作ってくれないか。」
「それだけでいいんですか?」
フェイトが涙の止まった眼を大きく開けて問いかける。
「良いんだよ。報酬がほしくて助けたんじゃないし、これで充分だ。」
「…わかりました。でも!あの!何かあったら言ってください!きっとお役に立ちますから!!」
「わかった。その時がきたらよろしく頼む。」
「はいっ!」
やっと笑ってくれた。
満面の笑顔だ。
顔を覗き込んで言った。
「やっと笑ったな?」
「あっ、あの…、うぅ。恥ずかしいです。」
真っ赤になってあわあわしているフェイトが良いよ。
さっきみたいに圧力をかけてこないフェイトがな。
「じゃあ次は俺だな!」
もう一人の圧は消えてなかったか。
「今言ったが、報酬がほしくてた「俺の番だな?」」
…ラースよ、あんたキャラ変わってないか。
人を気遣えて空気が読める、デキる男だったのに俺様か。
「あー、じゃあ俺の依頼を受けたら、1回割引、よろしく。あとは俺からの仕事をできる範囲で優先してくれ。」
ラースは大工だと言った。
扱う金額が大きいだろうし、これでどうだ。
ニヤっと笑ってラースは了承した。
「わかった。あと、俺はそれなりに顔が広い。何かあったら頼ってくれ。」
「そっちの方が報酬として魅力があるな。建物を建てる予定は無いし。」
まあ、何かあったときに頼れるっていうのは良いな。
「なぁ、それってさっきの知識がほしいっていうのと関係あるのか?」
「…まあな。俺に欠けていて、必要だと思ったから、報酬として要求したんだ。」
「会話していてもおかしいところはないし、常識が無いとも思えないが…」
ラースの疑問は尽きないらしい。
俺の隣にいるフェイトも頷いている。
それも仕方ない。
彼らの中で俺は謎の治癒師ってトコだろうし。
「俺は今日、色ボケ貴族に魔法で拉致されたんだ。」
「は?」
「えっ?」
「そのときに諸々あって、知識とか常識に欠落がある。それであの報酬内容なんだ。慰謝料貰って取り敢えず宿を取ろうと繁華街に向かう途中で、フェイトが暴行されているところに出くわしたんだ。」
「はぁっ!?」
「ええっ!?」
「例えば、硬貨はわかるが、物の値段がわからないし、何で治癒魔法が使えるのかとか、スラムでクズどもが言っていたゆーたい?したい?なんかもわからないんだ。それに戸籍も無いから、身元不明で身分証明書も持ってない。どんな職なら就けるかも相談したいな。」
自分でも居た堪れないくらいの不審者っぷりだ…。
しかし開き直って、ついでに知りたかったこともぶっ込んでみた。
「そういうことは早く言えよっ!」
「そんな酷い目にあってたんですかっ!?」
「そうは言っても誰にでも聞かせていい話しじゃないしな…。」
思わずルジェを見てしまった。
「確かにな。」
「…ですね。」
だろ?
この国にあるかはわからないが、入国管理局みたいな役所に突き出されたくないし。
「じゃあ、話してくれたってことは、俺らには話す価値があると認めてくれたってことか。」
「二人とも誠実そうだからな。」
嬉しそうに二人で頷きあって、仲良いな。
「それにしても何でフェイトはルジェに指のことバレたく無かったんだ?俺はそっちの方が都合良かったけど。」
途端にフェイトの表情が曇った。
ラースも何とも言えない顔だ。
さっき事情がどうの、とか言っていたが。
「…あのまま僕の指が無かったら、魔道具師としてはやっていけるか分かりませんでした。あの、それを知られたら、これ幸いと結婚に持ち込まれそうで…。ルジェにも事情があるんですけど、僕を好きだから結婚したいんじゃないんです。だから…。」
「そうか。言い辛いことをすまない。」
「いいえ、大丈夫です。シオンさんのおかげで魔道具師、続けられそうですし!」
「それなんだが、暫く魔道具師は休業した方が良いんじゃないか?」
「えっと、それはどうしてですか?」
最初から否定せずに聞いてもらえると、こっちも話しやすくて助かるな。
「フェイトが無事だとあの使用人にバレたら何かされないか?」
「あっ…。」
フェイトの顔色がサッと悪くなる。
またあんな目にあいたくないよな。
「さっきのラースの提案を受け入れて、表に出なくて済むように手を回してもらった方が、ここに一人で居るより安全なんじゃないか?ラースはどう思う?」
「確かにここに一人は心配だな。それに、ルジェも思い詰めてきゃ良いが…。一人でいるのが怖かったら、暫く俺の家にいてもいいぞ。」
やはりこの家を出て変装するのが良いか?
フェイトの身に付けている装飾品は…ネックレスか。
付与とかできるかな?
「フェイト、そのネックレスっていつも身に付けてる物か?」
「え?…はい。」
「ちょっと魔法かけてもかまわないか?」
「はっ、はい。」といって首から外して渡してくれた。
フェイトの髪は茶色で瞳は緑だ。
今日歩いていたときによく見かけた色味だ。
それを変える魔法を付与する。
茶色の瞳にミルクティー色の髪とか似合いそうだ。
フェイトの優しげな雰囲気にも合うだろう。
ネックレスを返して促す。
「少し魔力を流してみて。」
「やってみます。」と言ってフェイトが魔力流すとジワジワと色が変った。
ラースが俺に問いかけ、フェイトが高速でコクコクしている。
更に圧が強くなったのは気の所為じゃさそうだ。
報酬を追加しないと解放されそうにない。
ちなみに俺の両手は二人に確保されたままだ。
「じゃあフェイトは俺にほしい魔道具ができたら、1つ作ってくれ。その次から通常の報酬は払う。だが俺が依頼したら優先して作ってくれないか。」
「それだけでいいんですか?」
フェイトが涙の止まった眼を大きく開けて問いかける。
「良いんだよ。報酬がほしくて助けたんじゃないし、これで充分だ。」
「…わかりました。でも!あの!何かあったら言ってください!きっとお役に立ちますから!!」
「わかった。その時がきたらよろしく頼む。」
「はいっ!」
やっと笑ってくれた。
満面の笑顔だ。
顔を覗き込んで言った。
「やっと笑ったな?」
「あっ、あの…、うぅ。恥ずかしいです。」
真っ赤になってあわあわしているフェイトが良いよ。
さっきみたいに圧力をかけてこないフェイトがな。
「じゃあ次は俺だな!」
もう一人の圧は消えてなかったか。
「今言ったが、報酬がほしくてた「俺の番だな?」」
…ラースよ、あんたキャラ変わってないか。
人を気遣えて空気が読める、デキる男だったのに俺様か。
「あー、じゃあ俺の依頼を受けたら、1回割引、よろしく。あとは俺からの仕事をできる範囲で優先してくれ。」
ラースは大工だと言った。
扱う金額が大きいだろうし、これでどうだ。
ニヤっと笑ってラースは了承した。
「わかった。あと、俺はそれなりに顔が広い。何かあったら頼ってくれ。」
「そっちの方が報酬として魅力があるな。建物を建てる予定は無いし。」
まあ、何かあったときに頼れるっていうのは良いな。
「なぁ、それってさっきの知識がほしいっていうのと関係あるのか?」
「…まあな。俺に欠けていて、必要だと思ったから、報酬として要求したんだ。」
「会話していてもおかしいところはないし、常識が無いとも思えないが…」
ラースの疑問は尽きないらしい。
俺の隣にいるフェイトも頷いている。
それも仕方ない。
彼らの中で俺は謎の治癒師ってトコだろうし。
「俺は今日、色ボケ貴族に魔法で拉致されたんだ。」
「は?」
「えっ?」
「そのときに諸々あって、知識とか常識に欠落がある。それであの報酬内容なんだ。慰謝料貰って取り敢えず宿を取ろうと繁華街に向かう途中で、フェイトが暴行されているところに出くわしたんだ。」
「はぁっ!?」
「ええっ!?」
「例えば、硬貨はわかるが、物の値段がわからないし、何で治癒魔法が使えるのかとか、スラムでクズどもが言っていたゆーたい?したい?なんかもわからないんだ。それに戸籍も無いから、身元不明で身分証明書も持ってない。どんな職なら就けるかも相談したいな。」
自分でも居た堪れないくらいの不審者っぷりだ…。
しかし開き直って、ついでに知りたかったこともぶっ込んでみた。
「そういうことは早く言えよっ!」
「そんな酷い目にあってたんですかっ!?」
「そうは言っても誰にでも聞かせていい話しじゃないしな…。」
思わずルジェを見てしまった。
「確かにな。」
「…ですね。」
だろ?
この国にあるかはわからないが、入国管理局みたいな役所に突き出されたくないし。
「じゃあ、話してくれたってことは、俺らには話す価値があると認めてくれたってことか。」
「二人とも誠実そうだからな。」
嬉しそうに二人で頷きあって、仲良いな。
「それにしても何でフェイトはルジェに指のことバレたく無かったんだ?俺はそっちの方が都合良かったけど。」
途端にフェイトの表情が曇った。
ラースも何とも言えない顔だ。
さっき事情がどうの、とか言っていたが。
「…あのまま僕の指が無かったら、魔道具師としてはやっていけるか分かりませんでした。あの、それを知られたら、これ幸いと結婚に持ち込まれそうで…。ルジェにも事情があるんですけど、僕を好きだから結婚したいんじゃないんです。だから…。」
「そうか。言い辛いことをすまない。」
「いいえ、大丈夫です。シオンさんのおかげで魔道具師、続けられそうですし!」
「それなんだが、暫く魔道具師は休業した方が良いんじゃないか?」
「えっと、それはどうしてですか?」
最初から否定せずに聞いてもらえると、こっちも話しやすくて助かるな。
「フェイトが無事だとあの使用人にバレたら何かされないか?」
「あっ…。」
フェイトの顔色がサッと悪くなる。
またあんな目にあいたくないよな。
「さっきのラースの提案を受け入れて、表に出なくて済むように手を回してもらった方が、ここに一人で居るより安全なんじゃないか?ラースはどう思う?」
「確かにここに一人は心配だな。それに、ルジェも思い詰めてきゃ良いが…。一人でいるのが怖かったら、暫く俺の家にいてもいいぞ。」
やはりこの家を出て変装するのが良いか?
フェイトの身に付けている装飾品は…ネックレスか。
付与とかできるかな?
「フェイト、そのネックレスっていつも身に付けてる物か?」
「え?…はい。」
「ちょっと魔法かけてもかまわないか?」
「はっ、はい。」といって首から外して渡してくれた。
フェイトの髪は茶色で瞳は緑だ。
今日歩いていたときによく見かけた色味だ。
それを変える魔法を付与する。
茶色の瞳にミルクティー色の髪とか似合いそうだ。
フェイトの優しげな雰囲気にも合うだろう。
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「少し魔力を流してみて。」
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