16 / 170
2章 間違った使い方をされた麻袋と中の人
06
しおりを挟む
「それだけか?」
ラースが俺に問いかけ、フェイトが高速でコクコクしている。
更に圧が強くなったのは気の所為じゃさそうだ。
報酬を追加しないと解放されそうにない。
ちなみに俺の両手は二人に確保されたままだ。
「じゃあフェイトは俺にほしい魔道具ができたら、1つ作ってくれ。その次から通常の報酬は払う。だが俺が依頼したら優先して作ってくれないか。」
「それだけでいいんですか?」
フェイトが涙の止まった眼を大きく開けて問いかける。
「良いんだよ。報酬がほしくて助けたんじゃないし、これで充分だ。」
「…わかりました。でも!あの!何かあったら言ってください!きっとお役に立ちますから!!」
「わかった。その時がきたらよろしく頼む。」
「はいっ!」
やっと笑ってくれた。
満面の笑顔だ。
顔を覗き込んで言った。
「やっと笑ったな?」
「あっ、あの…、うぅ。恥ずかしいです。」
真っ赤になってあわあわしているフェイトが良いよ。
さっきみたいに圧力をかけてこないフェイトがな。
「じゃあ次は俺だな!」
もう一人の圧は消えてなかったか。
「今言ったが、報酬がほしくてた「俺の番だな?」」
…ラースよ、あんたキャラ変わってないか。
人を気遣えて空気が読める、デキる男だったのに俺様か。
「あー、じゃあ俺の依頼を受けたら、1回割引、よろしく。あとは俺からの仕事をできる範囲で優先してくれ。」
ラースは大工だと言った。
扱う金額が大きいだろうし、これでどうだ。
ニヤっと笑ってラースは了承した。
「わかった。あと、俺はそれなりに顔が広い。何かあったら頼ってくれ。」
「そっちの方が報酬として魅力があるな。建物を建てる予定は無いし。」
まあ、何かあったときに頼れるっていうのは良いな。
「なぁ、それってさっきの知識がほしいっていうのと関係あるのか?」
「…まあな。俺に欠けていて、必要だと思ったから、報酬として要求したんだ。」
「会話していてもおかしいところはないし、常識が無いとも思えないが…」
ラースの疑問は尽きないらしい。
俺の隣にいるフェイトも頷いている。
それも仕方ない。
彼らの中で俺は謎の治癒師ってトコだろうし。
「俺は今日、色ボケ貴族に魔法で拉致されたんだ。」
「は?」
「えっ?」
「そのときに諸々あって、知識とか常識に欠落がある。それであの報酬内容なんだ。慰謝料貰って取り敢えず宿を取ろうと繁華街に向かう途中で、フェイトが暴行されているところに出くわしたんだ。」
「はぁっ!?」
「ええっ!?」
「例えば、硬貨はわかるが、物の値段がわからないし、何で治癒魔法が使えるのかとか、スラムでクズどもが言っていたゆーたい?したい?なんかもわからないんだ。それに戸籍も無いから、身元不明で身分証明書も持ってない。どんな職なら就けるかも相談したいな。」
自分でも居た堪れないくらいの不審者っぷりだ…。
しかし開き直って、ついでに知りたかったこともぶっ込んでみた。
「そういうことは早く言えよっ!」
「そんな酷い目にあってたんですかっ!?」
「そうは言っても誰にでも聞かせていい話しじゃないしな…。」
思わずルジェを見てしまった。
「確かにな。」
「…ですね。」
だろ?
この国にあるかはわからないが、入国管理局みたいな役所に突き出されたくないし。
「じゃあ、話してくれたってことは、俺らには話す価値があると認めてくれたってことか。」
「二人とも誠実そうだからな。」
嬉しそうに二人で頷きあって、仲良いな。
「それにしても何でフェイトはルジェに指のことバレたく無かったんだ?俺はそっちの方が都合良かったけど。」
途端にフェイトの表情が曇った。
ラースも何とも言えない顔だ。
さっき事情がどうの、とか言っていたが。
「…あのまま僕の指が無かったら、魔道具師としてはやっていけるか分かりませんでした。あの、それを知られたら、これ幸いと結婚に持ち込まれそうで…。ルジェにも事情があるんですけど、僕を好きだから結婚したいんじゃないんです。だから…。」
「そうか。言い辛いことをすまない。」
「いいえ、大丈夫です。シオンさんのおかげで魔道具師、続けられそうですし!」
「それなんだが、暫く魔道具師は休業した方が良いんじゃないか?」
「えっと、それはどうしてですか?」
最初から否定せずに聞いてもらえると、こっちも話しやすくて助かるな。
「フェイトが無事だとあの使用人にバレたら何かされないか?」
「あっ…。」
フェイトの顔色がサッと悪くなる。
またあんな目にあいたくないよな。
「さっきのラースの提案を受け入れて、表に出なくて済むように手を回してもらった方が、ここに一人で居るより安全なんじゃないか?ラースはどう思う?」
「確かにここに一人は心配だな。それに、ルジェも思い詰めてきゃ良いが…。一人でいるのが怖かったら、暫く俺の家にいてもいいぞ。」
やはりこの家を出て変装するのが良いか?
フェイトの身に付けている装飾品は…ネックレスか。
付与とかできるかな?
「フェイト、そのネックレスっていつも身に付けてる物か?」
「え?…はい。」
「ちょっと魔法かけてもかまわないか?」
「はっ、はい。」といって首から外して渡してくれた。
フェイトの髪は茶色で瞳は緑だ。
今日歩いていたときによく見かけた色味だ。
それを変える魔法を付与する。
茶色の瞳にミルクティー色の髪とか似合いそうだ。
フェイトの優しげな雰囲気にも合うだろう。
ネックレスを返して促す。
「少し魔力を流してみて。」
「やってみます。」と言ってフェイトが魔力流すとジワジワと色が変った。
ラースが俺に問いかけ、フェイトが高速でコクコクしている。
更に圧が強くなったのは気の所為じゃさそうだ。
報酬を追加しないと解放されそうにない。
ちなみに俺の両手は二人に確保されたままだ。
「じゃあフェイトは俺にほしい魔道具ができたら、1つ作ってくれ。その次から通常の報酬は払う。だが俺が依頼したら優先して作ってくれないか。」
「それだけでいいんですか?」
フェイトが涙の止まった眼を大きく開けて問いかける。
「良いんだよ。報酬がほしくて助けたんじゃないし、これで充分だ。」
「…わかりました。でも!あの!何かあったら言ってください!きっとお役に立ちますから!!」
「わかった。その時がきたらよろしく頼む。」
「はいっ!」
やっと笑ってくれた。
満面の笑顔だ。
顔を覗き込んで言った。
「やっと笑ったな?」
「あっ、あの…、うぅ。恥ずかしいです。」
真っ赤になってあわあわしているフェイトが良いよ。
さっきみたいに圧力をかけてこないフェイトがな。
「じゃあ次は俺だな!」
もう一人の圧は消えてなかったか。
「今言ったが、報酬がほしくてた「俺の番だな?」」
…ラースよ、あんたキャラ変わってないか。
人を気遣えて空気が読める、デキる男だったのに俺様か。
「あー、じゃあ俺の依頼を受けたら、1回割引、よろしく。あとは俺からの仕事をできる範囲で優先してくれ。」
ラースは大工だと言った。
扱う金額が大きいだろうし、これでどうだ。
ニヤっと笑ってラースは了承した。
「わかった。あと、俺はそれなりに顔が広い。何かあったら頼ってくれ。」
「そっちの方が報酬として魅力があるな。建物を建てる予定は無いし。」
まあ、何かあったときに頼れるっていうのは良いな。
「なぁ、それってさっきの知識がほしいっていうのと関係あるのか?」
「…まあな。俺に欠けていて、必要だと思ったから、報酬として要求したんだ。」
「会話していてもおかしいところはないし、常識が無いとも思えないが…」
ラースの疑問は尽きないらしい。
俺の隣にいるフェイトも頷いている。
それも仕方ない。
彼らの中で俺は謎の治癒師ってトコだろうし。
「俺は今日、色ボケ貴族に魔法で拉致されたんだ。」
「は?」
「えっ?」
「そのときに諸々あって、知識とか常識に欠落がある。それであの報酬内容なんだ。慰謝料貰って取り敢えず宿を取ろうと繁華街に向かう途中で、フェイトが暴行されているところに出くわしたんだ。」
「はぁっ!?」
「ええっ!?」
「例えば、硬貨はわかるが、物の値段がわからないし、何で治癒魔法が使えるのかとか、スラムでクズどもが言っていたゆーたい?したい?なんかもわからないんだ。それに戸籍も無いから、身元不明で身分証明書も持ってない。どんな職なら就けるかも相談したいな。」
自分でも居た堪れないくらいの不審者っぷりだ…。
しかし開き直って、ついでに知りたかったこともぶっ込んでみた。
「そういうことは早く言えよっ!」
「そんな酷い目にあってたんですかっ!?」
「そうは言っても誰にでも聞かせていい話しじゃないしな…。」
思わずルジェを見てしまった。
「確かにな。」
「…ですね。」
だろ?
この国にあるかはわからないが、入国管理局みたいな役所に突き出されたくないし。
「じゃあ、話してくれたってことは、俺らには話す価値があると認めてくれたってことか。」
「二人とも誠実そうだからな。」
嬉しそうに二人で頷きあって、仲良いな。
「それにしても何でフェイトはルジェに指のことバレたく無かったんだ?俺はそっちの方が都合良かったけど。」
途端にフェイトの表情が曇った。
ラースも何とも言えない顔だ。
さっき事情がどうの、とか言っていたが。
「…あのまま僕の指が無かったら、魔道具師としてはやっていけるか分かりませんでした。あの、それを知られたら、これ幸いと結婚に持ち込まれそうで…。ルジェにも事情があるんですけど、僕を好きだから結婚したいんじゃないんです。だから…。」
「そうか。言い辛いことをすまない。」
「いいえ、大丈夫です。シオンさんのおかげで魔道具師、続けられそうですし!」
「それなんだが、暫く魔道具師は休業した方が良いんじゃないか?」
「えっと、それはどうしてですか?」
最初から否定せずに聞いてもらえると、こっちも話しやすくて助かるな。
「フェイトが無事だとあの使用人にバレたら何かされないか?」
「あっ…。」
フェイトの顔色がサッと悪くなる。
またあんな目にあいたくないよな。
「さっきのラースの提案を受け入れて、表に出なくて済むように手を回してもらった方が、ここに一人で居るより安全なんじゃないか?ラースはどう思う?」
「確かにここに一人は心配だな。それに、ルジェも思い詰めてきゃ良いが…。一人でいるのが怖かったら、暫く俺の家にいてもいいぞ。」
やはりこの家を出て変装するのが良いか?
フェイトの身に付けている装飾品は…ネックレスか。
付与とかできるかな?
「フェイト、そのネックレスっていつも身に付けてる物か?」
「え?…はい。」
「ちょっと魔法かけてもかまわないか?」
「はっ、はい。」といって首から外して渡してくれた。
フェイトの髪は茶色で瞳は緑だ。
今日歩いていたときによく見かけた色味だ。
それを変える魔法を付与する。
茶色の瞳にミルクティー色の髪とか似合いそうだ。
フェイトの優しげな雰囲気にも合うだろう。
ネックレスを返して促す。
「少し魔力を流してみて。」
「やってみます。」と言ってフェイトが魔力流すとジワジワと色が変った。
0
お気に入りに追加
547
あなたにおすすめの小説


兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

○○に求婚されたおっさん、逃げる・・
相沢京
BL
小さな町でギルドに所属していた30過ぎのおっさんのオレに王都のギルマスから招集命令が下される。
といっても、何か罪を犯したからとかではなくてオレに会いたい人がいるらしい。そいつは事情があって王都から出れないとか、特に何の用事もなかったオレは承諾して王都へと向かうのだった。
しかし、そこに待ち受けていたのは―――・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる