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2章 間違った使い方をされた麻袋と中の人
05
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「シオンさんは僕を見つけてくれて、ずっと僕を気遣って助けてくれてます。さっ、触られても怖くないですし、あの、シオンさんなら僕を傷付けることはしないってわかります。…あの、だから、お返しはできないかもしれませんけど、僕のために提案してくれてるってわかるから、お、お願いします。」
半泣きのフェイトに頷いて、念の為ラースに釘を刺す。
「ラース、あなたなら大丈夫だと思うが、一応言っておく。俺のことは許可なく他人に漏らさないでほしい。」
「承知した。シオンの事情も聞かせてほしいが、また後でだな。」
頷いて、フェイトに向き直る。
スラムで《ヒール》を使っても切断されたフェイトの指は治らなった。
それはなぜか。
単純に俺には切断された指を治す力が備わっていないのかと思ったが、その考えは否定した。
フィリップ・ブラント子爵の語ったことが本当ならば、世界の壁を越えた召喚者は、いくつもの国を滅ぼす程の力を持っていた。
力の方向は違うが、力の強さを考えれば、指の欠損くらい治せないとおかしいだろう。
ではなぜフェイトの指は欠けたままなのか。
色々考えてみたが、答えはシンプルだ。
きっと俺が指の欠損を意識して治さなかったからだ。
あの時俺は傷の治癒を願った。
フェイトの顔の傷は癒えたし、身体も同じだろう。
現に指の切断面も、傷は治っている。
それならば指の再生を願えば叶うのでは?と結論付けた。
フェイトの手を取ったまま、無くしたものの再生を願う。
ヒールの上位ならコレだろうか。
「《エクストラヒール》」
光の粒子が指を形作り、密度が濃くなっていく。
そこには切断の傷痕など無い、元通りのフェイト指があった。
「良かった、成功して。二人とも他言無用で頼むからな。」
………。
返事が無い。
わかってる、やり過ぎなんだな?
傷を治したときにフェイトが貴重な能力って言ってたし。
でも良いんだ。
フェイトの指が無いことに気付いたとき、ヨーコさんの指輪が眼に入ったんだ。
俺はそんなに善人じゃないけど、俺を想ってくれてる人たちは苦労人で、だからこそ皆優しかった。
母の舎弟たちもだ。
オネェ様方にも藍羽の関係者にも顔向けできないことはしてないし、これで良い。
自己満足だけど、自重するのやめたからな。
持ってるモノは使ってこそ活きるんだ、と開き直ってやっていこう。
「…ふっ、……っく…ぅえっ、うぅぅ、うわぁぁ」
飛んでいた思考がフェイトの泣き声で引き戻される。
困った、本気で泣かれてる。
「…フェイト。」
両手で彼の頬をに触れて涙を拭く。
「さっきも言ったが、泣かせたくてやったんじゃない。笑ってくれ。な?」
「うぅぅ……うわああああぁぁぁん!」
もっと泣かれた………なぜだ。
仕方ないから抱き寄せて背中をぽんぽんしてみる。
「…いや、驚いた。再生魔法か…凄いな。シオンは治癒師だったのか。確かにルジェには見せられんな。しかし俺もこれで助かる。」
どうやら再起動したらしいラースから声がかかった。
言われたことは違うけどな。
「ラースも助かるってどういうことだ?」
「あー、フェイトも聞こえるな?」
頷いて返事をしている。
「例の、若手の大工とか職人たちが独立して集まって工房を新設する話しなんだけどな、いよいよ形になるんだ。大工は建物を建てるだろ?で、その建物には魔道具が付き物だ。だからフェイトも俺らと同じ区画に工房を移さないか、って誘いに来たんだ。色々と便利だし、効率も上がる。…それなのに指が…な。でもシオンが治してくれたから、問題無く誘える。あぁ、治療費請求するだろ?俺も持つから言ってくれ。あと、優秀な魔道具師を守ってくれて本当にありがとう!」
ガシっと音がしそうな勢いでフェイトの背中をぽんぽんしていない方の手を取られた。
ちゃっかり椅子と一緒に移動してきた。
手のひらが硬くてザラついている職人の手だ。
何だろう職人に弱いな俺。
オネェ様方が職人だからだ、きっと。
すると今度はフェイトにも手を取られた。
「っあの、あの!ゆ、指、治して、いただいて、あっ、ありがとう、ございます!今は、ムリ、なんですけど、きっと、謝礼は、お支払い、し、ます!」
しゃくりあげながらも宣言されたが二人とも圧が凄い。
謝礼を寄越せとは言ってないのに…これが常識なのか?
うーん、わからん。
でもまあ良いか。
現金以外の謝礼もありだろうし。
取り敢えずは今夜の寝床を確保したい。
この勢いなら一晩くらい泊めてもらえるだろう。
「いくつかほしいモノはあるんだが、謝礼は現金以外でも構わないか?」
「はいっ!」
「おうっ!」
うーん、やっぱり圧が凄い。
「先ずは今夜の寝床。それに、セキュリティと主がまともなしっかりした宿を紹介してくれ。あとは知識と情報がほしい。常識を中心に教えてもらいたい。」
二人が顔を合わせて同時にこっちを向いた。
息ぴったりだな。
半泣きのフェイトに頷いて、念の為ラースに釘を刺す。
「ラース、あなたなら大丈夫だと思うが、一応言っておく。俺のことは許可なく他人に漏らさないでほしい。」
「承知した。シオンの事情も聞かせてほしいが、また後でだな。」
頷いて、フェイトに向き直る。
スラムで《ヒール》を使っても切断されたフェイトの指は治らなった。
それはなぜか。
単純に俺には切断された指を治す力が備わっていないのかと思ったが、その考えは否定した。
フィリップ・ブラント子爵の語ったことが本当ならば、世界の壁を越えた召喚者は、いくつもの国を滅ぼす程の力を持っていた。
力の方向は違うが、力の強さを考えれば、指の欠損くらい治せないとおかしいだろう。
ではなぜフェイトの指は欠けたままなのか。
色々考えてみたが、答えはシンプルだ。
きっと俺が指の欠損を意識して治さなかったからだ。
あの時俺は傷の治癒を願った。
フェイトの顔の傷は癒えたし、身体も同じだろう。
現に指の切断面も、傷は治っている。
それならば指の再生を願えば叶うのでは?と結論付けた。
フェイトの手を取ったまま、無くしたものの再生を願う。
ヒールの上位ならコレだろうか。
「《エクストラヒール》」
光の粒子が指を形作り、密度が濃くなっていく。
そこには切断の傷痕など無い、元通りのフェイト指があった。
「良かった、成功して。二人とも他言無用で頼むからな。」
………。
返事が無い。
わかってる、やり過ぎなんだな?
傷を治したときにフェイトが貴重な能力って言ってたし。
でも良いんだ。
フェイトの指が無いことに気付いたとき、ヨーコさんの指輪が眼に入ったんだ。
俺はそんなに善人じゃないけど、俺を想ってくれてる人たちは苦労人で、だからこそ皆優しかった。
母の舎弟たちもだ。
オネェ様方にも藍羽の関係者にも顔向けできないことはしてないし、これで良い。
自己満足だけど、自重するのやめたからな。
持ってるモノは使ってこそ活きるんだ、と開き直ってやっていこう。
「…ふっ、……っく…ぅえっ、うぅぅ、うわぁぁ」
飛んでいた思考がフェイトの泣き声で引き戻される。
困った、本気で泣かれてる。
「…フェイト。」
両手で彼の頬をに触れて涙を拭く。
「さっきも言ったが、泣かせたくてやったんじゃない。笑ってくれ。な?」
「うぅぅ……うわああああぁぁぁん!」
もっと泣かれた………なぜだ。
仕方ないから抱き寄せて背中をぽんぽんしてみる。
「…いや、驚いた。再生魔法か…凄いな。シオンは治癒師だったのか。確かにルジェには見せられんな。しかし俺もこれで助かる。」
どうやら再起動したらしいラースから声がかかった。
言われたことは違うけどな。
「ラースも助かるってどういうことだ?」
「あー、フェイトも聞こえるな?」
頷いて返事をしている。
「例の、若手の大工とか職人たちが独立して集まって工房を新設する話しなんだけどな、いよいよ形になるんだ。大工は建物を建てるだろ?で、その建物には魔道具が付き物だ。だからフェイトも俺らと同じ区画に工房を移さないか、って誘いに来たんだ。色々と便利だし、効率も上がる。…それなのに指が…な。でもシオンが治してくれたから、問題無く誘える。あぁ、治療費請求するだろ?俺も持つから言ってくれ。あと、優秀な魔道具師を守ってくれて本当にありがとう!」
ガシっと音がしそうな勢いでフェイトの背中をぽんぽんしていない方の手を取られた。
ちゃっかり椅子と一緒に移動してきた。
手のひらが硬くてザラついている職人の手だ。
何だろう職人に弱いな俺。
オネェ様方が職人だからだ、きっと。
すると今度はフェイトにも手を取られた。
「っあの、あの!ゆ、指、治して、いただいて、あっ、ありがとう、ございます!今は、ムリ、なんですけど、きっと、謝礼は、お支払い、し、ます!」
しゃくりあげながらも宣言されたが二人とも圧が凄い。
謝礼を寄越せとは言ってないのに…これが常識なのか?
うーん、わからん。
でもまあ良いか。
現金以外の謝礼もありだろうし。
取り敢えずは今夜の寝床を確保したい。
この勢いなら一晩くらい泊めてもらえるだろう。
「いくつかほしいモノはあるんだが、謝礼は現金以外でも構わないか?」
「はいっ!」
「おうっ!」
うーん、やっぱり圧が凄い。
「先ずは今夜の寝床。それに、セキュリティと主がまともなしっかりした宿を紹介してくれ。あとは知識と情報がほしい。常識を中心に教えてもらいたい。」
二人が顔を合わせて同時にこっちを向いた。
息ぴったりだな。
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