ダメな方の異世界召喚された俺は、それでも風呂と伴侶を愛してる

おりく

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2章 間違った使い方をされた麻袋と中の人

04

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「なるほど。」

ラースが重々しく言葉を吐き出した。

「シオンの言ったことに違いないか?」

頷いて「間違いありません」と答えたフェイトにラースが言葉を重ねる。

「それで…その……指だが…。」

ラースの顔が歪む。
指を無くした現場は見ていないし、知られたくないと言われたから説明はしなかった。

「その話は少し待ってほしい。差し支え無ければ、なぜ貴族の屋敷で暴行を受けることになったのか教えてくれないか?」

「あの、僕の依頼された魔道具のことは言えないんですが、それでも良いですか?」

「俺に話せる範囲で構わない。」と答えると、フェイトが教えてくれた。
あんな目にあったのに守秘義務は守るのか。
真面目な職人だな。

「魔道具作製の依頼を受けたのですが、あの、その魔道具が作るのが難しい物で、コストも結構かかるものだっんです。それでも構わないと言われて作ったんですけど、報酬が初めに提示された額とは程遠くて…。でも材料費とかすごくかかってて、それでちゃんと支払いをしてほしいって、お願いしに行ったんです。そしたら……。多分、執事か侍従の人が独断で僕に作らせたんだと思います。出来が良かったら、取り上げるつもりで。だから初めからお金なんて、僕に払う気無かったんです。だからきっと、最初から僕を…あんな風にするつもりだったんだと思います。」

フェイトが正当な報酬を支払ってほしいと屋敷に来ることも織り込み済みか。
初めから魔道具が納品されたら自分のテリトリーに引き入れて、無力化してからスラムで始末するつもりだったんだな。

スラムに意識の無い状態で放置されたら、強盗殺人の被害者になるか売られるか、ってことか?
その前にレイプされそうになってたけど。
気が付いたときは怖かっただろう。

労る気持ちをこめてフェイトの背中を擦る。

すると今まで静かにしていたルジェが口火を切った。
ご丁寧に、しっかり俺を睨み付けてから。

「だから言っただろ、貴族の依頼なんかロクでもないって。しかも一人で屋敷まで行くなんて!」

何を焦っているのかわからんが、今の話を聞いてフェイトに向かって大きな声を出すとか正気か?
おかしいのは一人で貴族の屋敷に行ったフェイトじゃなくて、代金を踏み倒してフェイトを傷付けるた奴らだ。

コイツ碌なこと言わないな…またフェイトが泣きそうだ。

それにさっきから俺に嫉妬してるようだが、フェイトに対して純粋に好きって感じがしない。
彼のことを頼りないとか言ったのもコイツだろ。

たとえ好意があったとしても他の感情が隠しきれてないから不愉快だ。
どんな事情があるのか知らないが、仮にも好きならもっと大事にしてやれよ。

思わずため息をつけばルジェがヒートアップしそうな気配だ。
「静かにさせる」とか言ったの誰だよ、とラースを見ると口を開くところだった。

「ルジェ。」

………怒ってるな。
低い声に圧力を感じる。

「外で大声を上げたのは褒められたことじゃないが事情を聞く前だ、目を瞑ってやる。だがフェイトの話しを聞いた後でその態度は何だ。お前にはフェイトが怖がってるのがわからんのか。」

もっと言ってくれ。

それでもわかってない男が反論する。
だからデカい声出すなって。

「なっ!オレはコイツのために!」

「ルジェ、同じことを何度も言わせるな。フェイトを思うならフェイトのことを考えて行動しろ。今のお前は自分のことばかりだろ。」

「くっ。」

今度は思い当たる節があったのか大人しくなった。
そのまま暫く萎れててくれ。

今度はフェイトに向かって謝罪した。

「静かにさせると言ったのに、すまん。」

「い、いえ、そんな…。」

そうは言ったが、フェイトの手は俺の服を握って離さない。

指のことはルジェには知られたくない様子だった。
それに試したい事もあるし、情報もほしい。
悪いが信用できない奴には退場してもらおうか。

「さて、空気の読めないヤツには退場してもらおうか。」

「なっ!」

ルジェは頭に血が昇った様子だが、大声は出さずに耐えた。
少しは反省したのか単純に言い返せなかっただけか。

フェイトとラースには、俺がルジェを排除する気だとわかったはずだ。
フェイトはスラムで見ていたし、魔法を使っても良いだろう。

「《壁まで進んでそのまま寝てろ》」

フラフラと歩いて壁際まで進み、ルジェが眠りに落ちたのを確認してから弁明する。

「一応言っておくが、アイツが嫌いだからやったワケじゃないからな。」

俺をじっと見つめるラースとお互い苦笑いだ。

「フェイトの指のことだ。彼には知られたくない様子だったから眠ってもらった。」

俺の服を握っていた手をそっと取った。
ラースも知りたがっていたことを尋ねる。

「その指は、貴族の屋敷でなくしたのか?」

「…はい。あの、スラムで僕を襲わなかった方の人に、切り落とされました。」

フェイトの眼に涙の膜が張ってくる。
くそ、アイツも不能にしておけば良かったな。

「泣かないでくれ。泣かせたくてこの話をしたんじゃないんだ。」

涙を拭ってから続ける。

「…できなかったら申し訳ないが試したいことがある。フェイトの害にはならないからやってみても良いだろうか?」
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