ダメな方の異世界召喚された俺は、それでも風呂と伴侶を愛してる

おりく

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1章 同意のない召喚は犯罪

02

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地下室だろうか、石造りの空間で先ず目に飛び込んできたのはグッタリと倒れ伏す鎖に繋がれた奴隷のような人々。
息があるかはかなり怪しい。

一瞬、皆のコスプレかと思ったが、馴染みの顔が一つもない。
どう考えても呑み会ではないし、仕掛けられたドッキリでもない。

そして覚った。

「これ、ダメな方の異世界召喚だ」

と。

ローブを纏った魔術師のような者たち。
そして貴族のような服を着たアタマの悪そうな若い男。
偉そうにしているし、多分コイツが召喚主なんだろう。
………許さん。

ひとを拉致しやがった犯罪者どもめ、絶対泣かす!!

召喚主っぽい男が怒りを爆発させながら叫びだす。

「召喚は成功したのではないのか!なぜわたしよりもデカい男が出てくるのだ!!話が違うではないかっ!」

召喚主が魔術師であろう奴らに食って掛かるが、彼らは忙しいらしくまるで相手にされていない。

うるさい、知るかよ、黙れクズ。
オマエが小さいんだ。
まぁ、俺は185センチくらいあるけどな。
両親には感謝してる。
そしてオマエは赦さん。

「わたしはっ!わたしの伴侶に相応しい女を召喚しろと命じたはずだぞ!それにそこのわたしよりデカい男!さっきから無礼だぞ!わたしを侮辱するな、敬え!!ふざけるなょ……良く見ればそれなりではないか。わたしのハーレムに入れてやってもっ…ブゴッ」

思ったことが口から出ていたようだが、手も出てしまった。

寝言は寝てから言え!というか、寧ろ何も言うな。
俺にも選ぶ権利がある…ハズだ。
例えここが異世界だとしても。

常ならば武術を修めた者として非常時以外に手を出すことは決して無いが、コイツは別枠だ。
絶対に泣かす。
まあもう泣いてるんだけどな。
絶対泣かす!と思っていたが、もう達成できてしまった。

世界を越えた誘拐犯などに情は無用だし、呼び方も犯罪者で十分だ。
きっと誘拐される人間のことなど考えたこともないのだろう。
俺も酷い奴に拉致されたものだ。

それに敬えるところなど皆無だ。
無理難題を吹っ掛けてくるのは辞めてもらいたい。

そもそも勝手な召喚なんて犯罪だろ!
この世界の法ってどうなっているんだ。

そんな中、魔術師から不穏な声が聞こえてくる。

「2発目の魔法陣、発動はまだかっ!担当魔術師は準備急げ。悟られる前に隷属させるのだ」

コイツらも中々にマヌケだった。
俺の意識が召喚主に向いていると思いこんで声に出てしまっている。
魔法の対象にバラしちゃダメなことをしっかりバラしたからな。
俺は助かるけども。

それにしても魔法なはどう対処するのが正解なのだろうか。
奴らに隷属するなど当然御免被るが、何分初めて体験するものなのでわからない。
発動前に殴って止めたら魔法が暴走しました!とか勘弁してほしいし。
俺の心情的に一番スッキリするのは隷属の魔法をバレないように反射して奴らに返すことだろうが…。

その瞬間、俺の体内ナカをナニカが通り抜けた感覚があった。
驚いてそのナニカを視線で追うと隷属の魔法陣を覆うように仄かに光る膜のようなものができた。

驚いている間にバカ共の魔法陣が完成して魔法が発動すると、かなりの衝撃波を感じた後で、辺りを見渡せば天井が吹き飛んでいた。

おそらく俺が張ったと思われる光る膜が隷属の魔法を反射したのだろう。

そして魔術師共の首にお約束の首輪が嵌っていた。

「貴様ら何ということを仕出かしたのか!」

こんな状況でも召喚主は自分の事しか考えないらしい。
つるんでいた奴らを少しは心配してやれよ。
俺は異世界拉致の被害者サイドだから知った事ではないけども。

「我が家の別館を破壊する魔法を発動するなど、何ということを仕出かしてくれたのだ!貴様らのような使えぬ者は要らぬ!消え去れ!!」

その瞬間魔術師共の首輪から魔力を感じた。

そして彼らはその言葉の通り、灰になって消え去った。

召喚主は相当な衝撃を受けたようで、驚愕の表情を浮かべ立ち尽くしているが、俺の知ったことではない。

周りに注意を向けていれば隷属の魔法が使われたことも、魔術師たちの首に隷属の証が嵌っていた事にも気付いたはずだ。
呆然としているが、誘拐犯に同情などしない。

それに奴らが消滅したことによって俺が奴らを尋問する機会は永遠に失われた。
何故雇主であろう召喚主の希望とは違う召喚をしたのか。
何の為に隷属させようとしたのか。
どのような条件をつけて召喚したのか。
俺にとっては謎だけ残されて最悪だ。

魔術師については召喚主の言動から、俺の生殺与奪権を握ろうとしていたことが明白だ。

生死さえ意のままにできる強度の隷属魔法なんて最悪だし、奴らは自業自得だ。
俺が心を痛める必要はないと割り切って行こう。

それよりもこれからのために、俺がどの程度魔法を使えるのかが気になる。
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