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「俺、出向する事になりそうだ。」
俺は会議室での話をヤノマンに話した。

「来客はTSSOの運営事務局と谷プロだったか…
また、壮大な話になってるな。」
「他人事みたいに言うなよ、
お前も巻き込まれ確定だからな(笑)」

「な、何どういう事だ?」
「お前にフラグが立ってるの気付かないか?
チームの人選は俺に一任されてるって言ったろ?
お前は谷プロの人間になるかもしれない。
これ以上理由がいるか?」

「腹くくるか……」

「とりあえず、仕事より先に片付けたい事があるから手伝ってくれ。」
「仕事より先って?」

「梨園を苦しめてる元凶が来てんだよ。
アイツをボロボロにしてやる。」

「……お前らしいな。
で、何すればいい?」

俺はヤノマンに電話をさせた。
相手は玲香だ。
つながるとスマホを借りた。

「玲香、悪いが頼みがある。」
「私もリクって呼んでいい?
良いなら聞いてあげる(笑)」
「ヤノマンが嫉妬しなかったら構わないぞ(笑)
今うちの会社に来ている梨園のマネージャーのライン知ってるか?」
「業務連絡はラインだから繋がってるよ。」

俺は明日の午前11時にスタジオで写真撮影の仕事が入ったと打たせた。

「これだけで良いの?」
「あぁ、余計な事は一切書くなよ。」
「分かった。」
「あと、一時間後にうちの会社に来てくれ。」
「一時間後ね、了解。
今、既読になったわよ。
了解だって。」
「ありがとう。
助かった、また後でな。」
スマホをヤノマンに返した。

俺はいつものスタジオを明日の11時から押さえておいた。
横浜にあるスタジオでここからだと一時間位で移動できる場所にある。
カメラマンは常駐している顔見知りだから融通が効いた。
玲香にだけは場所を教えるようにヤノマンに言った。

「じゃ、行くか。」
「その前に顔をどうにかしろよ。
悪人顔になってるぞ。」

「もとからですけど?(笑)」

会議室にヤノマンを連れて入る。
一緒に入ったのが課長ではなく、他の社員な事に谷プロの社長と梨園以外は誰だ?という顔をしている。

「今回のお話ですが、謹んでお受け致します。
どうぞ宜しくお願い致します。」
「受けて頂けますか、此方こそ宜しくお願い致します。」

「こちらに居るのは矢野と申します。
チームのメンバーになって貰います。
萩原様にはヤノマンと言ったほうが分かりやすいですか。」
「ヤノマン様ですか……
高城様のギルドのマスターですね?」
「その通りです。
そして、矢野は谷プロさんにも面識があります。」

社長は頷いた、そして
「うちの次期社長候補です。」
と紹介した。

「えっ?!」
驚いているのは俺じゃない、梨園のマネージャーだ。

「では、早速ですが明日の…
12時から昼食を兼ねてチームの顔合わせをしましょう。」
俺は話を切り出した、11時から撮影を入れてるにも関わらず。
ヤノマンは不思議そうな顔をしている。

「ちょと待って頂けますか?
その時間は撮影の予定が入っていまして。」
マネージャーがやっと口を開いた。

「そうですか、ではその撮影が終わってからにしましょう。
撮影場所の近くに席を設けておきますので、場所を教えてくれ下さい。」
「場所は事務所に戻りましたら確認して連絡で良いですか?」

「…構いませんが。
失礼ですが、今何人のタレントさんを受け持っていらっしゃいますか?」
「…李梨園一人ですが。」
「そうですか、受け持ちは一人なのに詳細を知らないという事ですか?」
「業務連絡には場所が書かれていなかったので…」
「撮影場所迄の移動時間や撮影内容に疑問は浮かばなかったのですか?
もし、地方だったらホテルを取らないと野宿ですよ?
撮影内容も重要ですよ?
李梨園さんのイメージが壊れる様な撮影だったらどうするのですか?
受けておいて、その場でキャンセルするのですか?
谷プロさんの評判が落ちますよ?」

「そこまで考えてませんでした、申し訳ありません。」
マネージャーの顔は青ざめ、バツ悪そうに下を向いた。

「場所を押さえる都合上、早めに連絡下さい。」
「分かりました。」

「ちなみに彼女の好きな食べ物は何ですか?」
「分かりません。」
「何故です?
そういう事は聞かないのですか?
聞かなくても、プロフィール等に良く書いてありますよね?」

「中国語が分からないので…」
「世の中には無料の翻訳アプリとか、お金を出せばこのインカムの様な自動通訳機が存在するのですよ?
分からないではなくて、知ろうとしないの間違いでは?」
マネージャーは下を向いてブツブツ言っている。

『何で俺がこんな目にあわなきゃならないんだ』
頭の中で思っている事を無意識に呟いていた。

「あなたの仕事は何ですか?」
「マネージャーですけど?」
「マネージャーとは何をする仕事なんですか?」
長い沈黙のあと、ボソッと答えた。

「……タレントを管理する仕事です。」

「あなたは管理出来てますか?」
俺は冷たい目線でマネージャーを見下した。

「出来ていません。」
マネージャーの青ざめた顔が紅潮して時折首筋がピクピクと痙攣している。

「今までの話の流れからだとあなたは仕事がしたくて今の会社に入ったのではなく、芸能という業界に身を置いているという肩書きが欲しかっただけと聞こえますが?」

「…何故あんたにそんな事を言われなきゃいけなんだ!
一体、何様のつもりだ!」
マネージャーはとうとうブチ切れた。


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