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第三章

閑話 弟…良いですわね…。薄い本…良いですわね。

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 皆様、ご機嫌いかがかしら。マーリンです。
 わたくし、最近お友達ができましたの。
 クイン侯爵家のリディラ様よ。
 リディラ様は王妃様主催のお茶会で時々お見かけしてはいたけれど、私はマグヌス殿下の従姉妹だからマグヌス殿下狙いのお姉様方や、公爵嫡男のお兄様狙いのお姉様方にかこまれがちで、リディラ様もお兄様方狙いのお姉様方やお兄様方の救出に翻弄されて、二人でお話しする機会は全然ありませんでしたの。
 ただ、遠目に見ても美しい方だし、お兄様方を救出されるタイミングの良さや控え目な立ち振る舞いに好感を持っていたのですわ。
 ですからリディラ様からのお茶会の招待状が届いた時はすぐさま伺うとお返事しましたの。

 リディラ様のお茶会はとても楽しかったわ。いらしたご令嬢方は皆様おしとやかで心根の優しい方ばかり。エリィ様もマグヌス殿下がいらっしゃらないと落ち着いていたし。ふふふ。あの方、ユニークで楽しい方よ。確かお兄様もいらしたわよね?なんておっしゃったかしら…レなんとかドだったかしら。レオナルド?レナード?なんか違うわね。ううん、思い出せないわ。ま、いっか。

 そうそう、あのお茶会、リディラ様はどなたかお探しのご様子だったわね。私でないことは確かよ。全然眼中になかったもの。ふふふ。どこに行っても私を公爵令嬢としか見てない方々ばかりの中で、全然眼中ないんだもの。素の自分でいられるような気がして楽しかったわ。
 しかも、あの弟様方の可愛らしいことったらないわ!
 「あ、ルゼルじゃないでしゅ。ウサギでしゅ」
 ってなにあれ。バレバレで可愛いったら可愛いったら可愛いたらなかったわ。
 後で、控えの間にいた侍女に聞いたけど控えの間でもウサギになりきっていたようよ。はうん、可愛い。
 噂で、世間で大流行りの宮廷画家が描いている「王宮の宮廷画家天使シリーズ」というカードのモデルが弟様方だと聞いていたから早速手配したわ。
 間違いなしよ!宮廷画家天使シリーズのモデルはリオン様とルゼル様、あのお二人よ!
 数枚手にしたけど可愛すぎて仕方ないから全種揃えたわ。
 天使がパンプキンしてる姿とか、「しー」ってしてる姿はわかるとして、どういうシチュエーションかわからないけど、天使が木剣持って尻もちついてる絵とか、天使が手すりにつかまって階段降りてる絵とかもあるのよ。わからなくても可愛いから良いの。可愛いは正義よ。

 それで今日はリディラ様がお茶をしに来てくださるの。
 リディラ様は、ご自分でお作りになった「好きなもの図鑑」を持ってきてくださると言っていたの。何それ、楽しそう。リディラ様が可愛らしいと思ったリボンやアクセサリーをまとめた薄い本なのですって。
 素敵なアイデアよね。でもそれを言ったらリディラ様が
 「うふふ。これは弟たちの発案なのよ。あの子たちの『好きなもの図鑑』は蛙とかなのだけど」
 と言って笑ってらしたわ。
 可愛いだけじゃなくて、思いつくことも楽しい弟様方なのね。
 そういえばマグヌス殿下のお誕生会の動く象も弟様方のアイデアだったとか。
 はぁあ、可愛い。弟様のいるリディラ様が羨ましいわ。
 お兄様が弟にならないかしら。ならないわよね。
 弟が無理ならせめて私も薄い本を作って楽しみたいわ。リディラ様の本を良く見せていただきましょう。私は何の図鑑が良いかしら。やっぱり小物が良いわね。マーリン版みたいな感じで。やだ、楽しそう。きゃ。
 あら、リディラ様がいらしたわ!
 では、皆様、このあたりで失礼させていただきますわ。ごきげんよう。
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