上 下
16 / 101
第二章

閑話 護衛騎士ルカ〜多感な年頃が長引いてます

しおりを挟む
 ルカと申します。
 騎士です。
 この度、リオン様ルゼル様の登城時に護衛に付くことになった5人の騎士の一人です。
 いやぁ、嬉しい。
 いやぁ、嬉しいったらない。
 要人護衛を任せられるなんて騎士として評価されたようなものだし、しかも護衛対象が天使たち。
 選考項目の一つに「幼い弟がいる者」というのがあったらしいから、生まれてくれた弟にも感謝!

 なんでそんな項目が?と思ったけど、リオン様とルゼル様がずば抜けて可愛いから、男児を変態な目で見ない事が必要ということで、とりあえず小さな弟がいる者は安全圏では?とかいうことらしい。噂だけどね。実際はその項目があったとしても男児の扱いに慣れてるとかそういうとこだと思う。
 噂なのになんか信じちゃうのはお二人を見たらわかる。危険な美しさがある。
 キエル副団長も言ってた。世の中には美しい子どもをコレクションしたがるヤバイ奴がいるって。
 10年前の大戦争で功績を上げた副団長が顔をしかめて言うくらいだから余程ヤバイ奴がいるんだな。だから選考項目にあったっていうの本当なんじゃないかって思う。
 …自分には男児趣味ないけど、その項目「弟」だけで良かったの?自分には幼女趣味もないけど、この御令息方女児にも見えるよ?いや、自分幼女趣味もないからね。なんか焦って二回言っちゃったよ。
 自分、幼い妹もいます。しかも二人。だから自分は安全圏中の安全圏。
 父上がね、再婚したんですよ。新しい母上は優しいけどなんとなーく家には居づらくて騎士団寮生活してます。だって長いこと末っ子していたのに急に下に三人弟妹だよ?「兄上ーっ」て来られてもさ、なんかちょっとむず痒い…。だから実は男児の扱いに慣れてない。
 
 とにかくお二人は天使。神様の大傑作。
 その天使たちが今、目の前でちまちまとした大喧嘩をしている。かっわいい~。
 ウサギの呼び名で喧嘩なんてできる?自分、子どもの頃どんなことで喧嘩した?てか、これ、喧嘩って言っていいの?象さんだのカバさんだの、引き合いに出すワードが可愛いだけなんだけど。自分の喧嘩は拳でゴーンてのばっかりだったけどな。いや、自分も貴族令息よ。子爵三男。

 お二人の喧嘩は安心して見ていられる。絶対ゴーンてやらないもんな。むしろ癒される。無料で見せてもらってすみませんて感じ。

 と、思っていたら!

 おわっ!ルゼル様が「ばかぁ」って悪口言った⁉︎誰がそんな悪い言葉を天使に教えた⁉︎「りろん、きらいぃ」とも言ったな。
 ちょっと慌てて視線が泳いだら、ルゼル様の従者も目を見開いたぞ!やっぱりこれ激レア場面だよな?うわー、王妃様見たかっただろうな~。あ、録音家と写真家がいる。流石王妃様、抜かりないな。
 
 あっあっ、待って待って。リオン様が泣いちゃったよ!ルゼル様に嫌いって言われて真に受けちゃったよ!違いますよ、リオン様!ルゼル様はリオン様が大好きですよ!みんなわかってるのにリオン様だけわかってない。
 はがゆー。こんな時なんにもできない護衛はがゆー。従者たちなんとかフォローしてあげて!かわいそう。はがゆー。従者たちも初めてのシチュエーションで戸惑ってる感じ?誰かなんとかして。二天使がかわいそう。

 あ!救世主ライラ様!
 ライラ様がいらしたらもう大丈夫。なんでも解決しちゃうライラ様。
 今回もほら、お見事です。喧嘩はおさまるし、呼び方も解決。「ウサギ卿」だって。良いんじゃない。
 二天使も大喜びで跳ね出したし回り出したよ。かっわいいなぁ。自分、弟いるけどこんなんじゃないよ。弟もゴーンてするタイプよ。

 結局円満解決して、覗き見隊も解散。それぞれの持ち場に戻りました。我々はヴァジュラ様のウサギ卿を今から世話しに向かいます。と、リオン様が自分に話しかけてきました。
 「るかさま。うさぎきょうに、はっぱあげるのましゅ。はっぱとりにいくの、いっしょきてください」
 え?自分?
 「るじぇ、さきにうさぎきょう、いって、りろんがはっぱもていくよーっておはなしして」
 え?何?その、ルゼル様から離れたいあからさまな言い訳。もしかしてまだスッキリしてないの?リオン様。
 「うん。わかったー」
 うわぁ、疑わねえな、ルゼル様。変態だけじゃなく普通の悪い奴にも気をつけてほしい。

 とりあえずルゼル様とその従者と騎士二人がウサギ卿に向かい、リオン様と従者、騎士二人で葉っぱを取りに向かう。葉っぱって何かな。
 「るかさま。だっこしてください。たかいきの、はっぱとるましゅ」
 え?ウサギって木の葉食べるの?まぁ、抱っこしますよ。こんな役得ないでしょう!

 抱っこしたらリオン様が葉に手を伸ばしながら自分にそっと言いました。
 「…るかさま…りろん、ないたの、かっこよくないでした。るじぇ、ないたの。わるいの、りろん」
 あぁ、リオン様…自分が泣いたせいでルゼル様を泣かせてしまったって後悔してるんですね。優しいし賢いし…あぁ、自分の語彙力じゃ足りないです。貴方は本当に天使です。
 「りろん、わるいこになったの。りろん、ごめんなさいいわなかったの。るじぇ、りろんきらいきらいになる?」
 あ、確かに謝ったのはルゼル様だけだった。癒されてただけで、ぜんっぜん気づかなかったよ。
 わわわっ、リオン様の目に涙が溜まってる!なんか、言わなきゃ。え?自分が?ひーぃ。ライラ様来てほしい。
 「りろん、きしさまみんなみたいに、つよくなるましゅならないかも…わるいこになったから」
 「リオン様は悪い子じゃありませんよ!」
 わっ。咄嗟に言っちゃったよ。
 「ちゃんと『悪かったかも』と思えるのは勇気ですよ。そう思ったら次の時にどうしたら良いのかを考えれば良いんです」
 なんか言ってるな自分。
 「ほんと?りろん、つよいになれる?」
 「なれますよ。それからルゼル様はリオン様が大好きですよ」
 「…うん」
 あ、笑った。
 「ありがとござましゅ、るかさま」
 なんで自分御指名かわかった。護衛の中で自分が一番背が高いからだ。高い抱っこで高い場所の葉っぱ取るふりなら弱音を吐いても他に聞こえず、騎士である自分に意見も聞けるとか思ったんだろうな。リオン様、騎士みたいに強くなりたいって仰ってるから。だけど会話はダダ漏れよ。身長の違いなんて微差よ。従者さんうっすら感動の涙よ。いや、自分もなんか泣きそうだけどさ。
 だってこんな小さくても自分の行動省みたり、それを騒がずに意見求めたり…人として素晴らしくないか?
 と、リオン様が少し大きめの声で言いました。
 「このはっぱじゃないでした」
 ちゃんと設定守ってる。凄いなリオン様。

 護衛になれて嬉しいとか軽すぎたな。自分が護るのは気持ちも含めてなんだよな。なんかキリッと気が引き締まった。
 次、弟に会ったらもっと沢山会話しよう。
 なんでだか、そう思った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

隠された第四皇女

山田ランチ
ファンタジー
 ギルベアト帝国。  帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。  皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。 ヒュー娼館の人々 ウィノラ(娼館で育った第四皇女) アデリータ(女将、ウィノラの育ての親) マイノ(アデリータの弟で護衛長) ディアンヌ、ロラ(娼婦) デルマ、イリーゼ(高級娼婦) 皇宮の人々 ライナー・フックス(公爵家嫡男) バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人) ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝) ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長) リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属) オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟) エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟) セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃) ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡) 幻の皇女(第四皇女、死産?) アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補) ロタリオ(ライナーの従者) ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長) レナード・ハーン(子爵令息) リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女) ローザ(リナの侍女、魔女) ※フェッチ   力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。  ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。

だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)

みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。 ヒロインの意地悪な姉役だったわ。 でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。 ヒロインの邪魔をせず、 とっとと舞台から退場……の筈だったのに…… なかなか家から離れられないし、 せっかくのチートを使いたいのに、 使う暇も無い。 これどうしたらいいのかしら?

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

アメイジング・ナイト ―王女と騎士の35日―

碧井夢夏
ファンタジー
たったひとりの王位継承者として毎日見合いの日々を送る第一王女のレナは、人気小説で読んだ主人公に憧れ、モデルになった外国人騎士を護衛に雇うことを決める。 騎士は、黒い髪にグレーがかった瞳を持つ東洋人の血を引く能力者で、小説とは違い金の亡者だった。 主従関係、身分の差、特殊能力など、ファンタジー要素有。舞台は中世~近代ヨーロッパがモデルのオリジナル。話が進むにつれて恋愛濃度が上がります。

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

処理中です...