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序章

踊る踊る〜色々ありました。きっとこれからも色々あります。

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 クイン侯爵家のダンス練習室。
 少年二人がダンスの練習をしている。

 金髪に紫の瞳が印象的なリオンと、薄い茶髪に翡翠の瞳のルゼルだ。
 この世のものと思えないほどの美しい少年たちがお互いの手を取ってダンスの練習をしている。

 「ルゼ、今度はルゼが令嬢のステップして。令嬢役ばかりしていると男性ステップ忘れそうだよ」
 「ごめん、リオン。後一回令嬢して」

 二人は近く参加するデビュッタントで披露するダンスの練習をしているのだ。
 デビューの場で令嬢に恥をかかせてはいけない。だけどダンスに自信がない。だから自主練だ。
 いつもはルゼルの姉のリディラが令嬢役で付き合ってくれる。だが今日はリディラがいない。リディラがいない時、二人は交代で令嬢役をして練習するのだ。
 
 二人はその美しさや賢さで令嬢方から絶大な人気を得ている。
 先に社交界デビューしている兄たちからも、当日は会が終わるまで令嬢たちと踊り続けることになるから覚悟しておくようにと教えられている。失敗はしたくない。
 「痛っ」
 「あっ、ごめん」
 「あー、当日ご令嬢の足を踏んでしまったらどうしよう」
 「パンプキンなら完璧なのに」
 「あははっ、懐かしいー。あれ大好きだったよね」
 二人はいたずらに笑い合うと、向かい合い手を繋ぎ、阿吽あうんの呼吸で…
「「パンパン、パンプキン。パンパン、パンプキーン」」
 と言って跳ねて回った。そして大笑いだ。
 「あぁ、パンプキンやっぱり好きだな。でもご令嬢にはできないしな」
 「カッコいい誤魔化し方考えておく?」
 「うーん。やっぱり練習しかないよ。もう一度お願いします。リオン嬢」
 「えー、また私が令嬢?」
 言ってから、ぷっと吹き出して、その後声を出して二人して笑った。笑ってから真面目な顔でルゼルがリオンに手を差し出して言った。
 「リオン嬢、どうか私と一曲踊る栄誉をお与えください」
 リオンも真面目な顔でルゼルの手を取り膝を少し曲げて受ける。
 「ルゼル様。喜んで」
 ぷはーっ。
 笑いながら二人はダンスの練習を続けた。

 二人は従兄弟同士。
 公爵家次男のリオンと侯爵家次男のルゼル。
 生まれた時からずっと一緒だ。
 転んで泣いた顔も喧嘩で怒った顔も知っている。何が好きかも知っている。騎士様ごっこをしたことも、初めて見た蛙に驚いた時のことも覚えている。
 女の子たちに追われて逃げたり、同じ人に憧れたり。
 色々あったけど、きっとこれからも一緒だろう。

 デビュッタントの日はもうすぐだ。
 二人の秘密の自主練はまだまだ終わらない。
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