1 / 101
序章
踊る踊る〜色々ありました。きっとこれからも色々あります。
しおりを挟む
クイン侯爵家のダンス練習室。
少年二人がダンスの練習をしている。
金髪に紫の瞳が印象的なリオンと、薄い茶髪に翡翠の瞳のルゼルだ。
この世のものと思えないほどの美しい少年たちがお互いの手を取ってダンスの練習をしている。
「ルゼ、今度はルゼが令嬢のステップして。令嬢役ばかりしていると男性ステップ忘れそうだよ」
「ごめん、リオン。後一回令嬢して」
二人は近く参加するデビュッタントで披露するダンスの練習をしているのだ。
デビューの場で令嬢に恥をかかせてはいけない。だけどダンスに自信がない。だから自主練だ。
いつもはルゼルの姉のリディラが令嬢役で付き合ってくれる。だが今日はリディラがいない。リディラがいない時、二人は交代で令嬢役をして練習するのだ。
二人はその美しさや賢さで令嬢方から絶大な人気を得ている。
先に社交界デビューしている兄たちからも、当日は会が終わるまで令嬢たちと踊り続けることになるから覚悟しておくようにと教えられている。失敗はしたくない。
「痛っ」
「あっ、ごめん」
「あー、当日ご令嬢の足を踏んでしまったらどうしよう」
「パンプキンなら完璧なのに」
「あははっ、懐かしいー。あれ大好きだったよね」
二人はいたずらに笑い合うと、向かい合い手を繋ぎ、阿吽の呼吸で…
「「パンパン、パンプキン。パンパン、パンプキーン」」
と言って跳ねて回った。そして大笑いだ。
「あぁ、パンプキンやっぱり好きだな。でもご令嬢にはできないしな」
「カッコいい誤魔化し方考えておく?」
「うーん。やっぱり練習しかないよ。もう一度お願いします。リオン嬢」
「えー、また私が令嬢?」
言ってから、ぷっと吹き出して、その後声を出して二人して笑った。笑ってから真面目な顔でルゼルがリオンに手を差し出して言った。
「リオン嬢、どうか私と一曲踊る栄誉をお与えください」
リオンも真面目な顔でルゼルの手を取り膝を少し曲げて受ける。
「ルゼル様。喜んで」
ぷはーっ。
笑いながら二人はダンスの練習を続けた。
二人は従兄弟同士。
公爵家次男のリオンと侯爵家次男のルゼル。
生まれた時からずっと一緒だ。
転んで泣いた顔も喧嘩で怒った顔も知っている。何が好きかも知っている。騎士様ごっこをしたことも、初めて見た蛙に驚いた時のことも覚えている。
女の子たちに追われて逃げたり、同じ人に憧れたり。
色々あったけど、きっとこれからも一緒だろう。
デビュッタントの日はもうすぐだ。
二人の秘密の自主練はまだまだ終わらない。
少年二人がダンスの練習をしている。
金髪に紫の瞳が印象的なリオンと、薄い茶髪に翡翠の瞳のルゼルだ。
この世のものと思えないほどの美しい少年たちがお互いの手を取ってダンスの練習をしている。
「ルゼ、今度はルゼが令嬢のステップして。令嬢役ばかりしていると男性ステップ忘れそうだよ」
「ごめん、リオン。後一回令嬢して」
二人は近く参加するデビュッタントで披露するダンスの練習をしているのだ。
デビューの場で令嬢に恥をかかせてはいけない。だけどダンスに自信がない。だから自主練だ。
いつもはルゼルの姉のリディラが令嬢役で付き合ってくれる。だが今日はリディラがいない。リディラがいない時、二人は交代で令嬢役をして練習するのだ。
二人はその美しさや賢さで令嬢方から絶大な人気を得ている。
先に社交界デビューしている兄たちからも、当日は会が終わるまで令嬢たちと踊り続けることになるから覚悟しておくようにと教えられている。失敗はしたくない。
「痛っ」
「あっ、ごめん」
「あー、当日ご令嬢の足を踏んでしまったらどうしよう」
「パンプキンなら完璧なのに」
「あははっ、懐かしいー。あれ大好きだったよね」
二人はいたずらに笑い合うと、向かい合い手を繋ぎ、阿吽の呼吸で…
「「パンパン、パンプキン。パンパン、パンプキーン」」
と言って跳ねて回った。そして大笑いだ。
「あぁ、パンプキンやっぱり好きだな。でもご令嬢にはできないしな」
「カッコいい誤魔化し方考えておく?」
「うーん。やっぱり練習しかないよ。もう一度お願いします。リオン嬢」
「えー、また私が令嬢?」
言ってから、ぷっと吹き出して、その後声を出して二人して笑った。笑ってから真面目な顔でルゼルがリオンに手を差し出して言った。
「リオン嬢、どうか私と一曲踊る栄誉をお与えください」
リオンも真面目な顔でルゼルの手を取り膝を少し曲げて受ける。
「ルゼル様。喜んで」
ぷはーっ。
笑いながら二人はダンスの練習を続けた。
二人は従兄弟同士。
公爵家次男のリオンと侯爵家次男のルゼル。
生まれた時からずっと一緒だ。
転んで泣いた顔も喧嘩で怒った顔も知っている。何が好きかも知っている。騎士様ごっこをしたことも、初めて見た蛙に驚いた時のことも覚えている。
女の子たちに追われて逃げたり、同じ人に憧れたり。
色々あったけど、きっとこれからも一緒だろう。
デビュッタントの日はもうすぐだ。
二人の秘密の自主練はまだまだ終わらない。
36
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する
清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。
たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。
神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。
悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
隠された第四皇女
山田ランチ
ファンタジー
ギルベアト帝国。
帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。
皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。
ヒュー娼館の人々
ウィノラ(娼館で育った第四皇女)
アデリータ(女将、ウィノラの育ての親)
マイノ(アデリータの弟で護衛長)
ディアンヌ、ロラ(娼婦)
デルマ、イリーゼ(高級娼婦)
皇宮の人々
ライナー・フックス(公爵家嫡男)
バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人)
ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝)
ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長)
リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属)
オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟)
エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟)
セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃)
ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡)
幻の皇女(第四皇女、死産?)
アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補)
ロタリオ(ライナーの従者)
ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長)
レナード・ハーン(子爵令息)
リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女)
ローザ(リナの侍女、魔女)
※フェッチ
力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。
ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
やり直し令嬢は箱の外へ~気弱な一歩が織りなす無限の可能性~
悠月
ファンタジー
これは、狭い世界に囚われ、逃げ続けていた内気な貴族令嬢が、あるきっかけで時間が巻き戻り、幼い頃へ戻った。彼女は逃げるように、過去とは異なる道を選び、また周囲に押されながら、徐々に世界が広がり、少しずつ強くなり、前を向いて歩み始める物語である。
※この作品は長編小説として構想しています。
前半では、主人公は内気で自信がなく、優柔不断な性格のため、つい言葉を口にするよりも、心の中で活発に思考を巡らせ、物事をあれこれ考えすぎてしまいます。その結果、狭い視野の中で悪い方向にばかり想像し、自分を責めてしまうことも多く、非常に扱いにくく、人から好かれ難いキャラクターだと感じられるかもしれません。
拙い文章ではございますが、彼女がどのように変わり、強くなっていくのか、その成長していく姿を詳細に描いていきたいと思っています。どうか、温かく見守っていただければ嬉しいです。
※本作には一部残酷な描写が含まれています。また、恋愛要素は物語の後半から展開する予定です。
※この物語の舞台となる世界や国はすべて架空のものであり、登場する団体や人物もすべてフィクションです。
※毎日更新頑張ります! 更新は、月曜日から金曜日(祝日を含む)は夕方6時、土日はお昼12時にお届けする予定です。
※同時掲載:小説家になろう、アルファポリス、カクヨム
※元タイトル:令嬢は幸せになりたい
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる