金に紫、茶に翡翠。〜癒しが世界を変えていく〜

かなえ

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第二章

閑話 『可愛い』には上限がないことを知る〜騎士たちは守るべき平和の具現化を見た

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 それは衝撃だった。 

 だいたい王族や上位貴族の御子息や御令嬢は可愛い。上位にいるからこそ迎えられる美しいお嫁さん(恋愛にしろ、政略にしろ…というか政略なら尚更、同じ条件であればより美しい人が選ばれたり。偏見だとしてもそう思っている)が何世代も続いて、美しい母親から美しい子どもたちが生まれ、美しい当主にまた美しいお嫁さんが迎えられ…色々な美しさが混ざって、その家系の美しさになっていくからだ(と、思っている)。さらに良い教育を受けられて所作が美しい、更に上等な服を与えられて可愛さが増し増しになる。
 ゆえに王族と上位貴族の子どもは可愛い。だから可愛いと噂になっているコーク公爵家の次男リオン様とクイン侯爵家の次男ルゼル様が騎士団練習場に来ると言われても多くの騎士たちは「はいはい、そりゃ可愛いでしょうよ」としか思っていなかった。
 なにしろ2人の兄である公爵家嫡男ユリアン様と侯爵家嫡男リゼル様を既に見ている。2人とも激カワ認定している。その弟たちは可愛くて当たり前。くらいの心の準備だった。

 …準備が足りなかった。
 こんな美しい幼児いるの?しかも2人も?夢なの?
 衝撃的な愛らしさだった。
 可愛いって上限がないんだな。
 リオン様とルゼル様の美しさは群を抜いていた。1人だけでも迫力があるのに2人揃ったらもうなんかわかんなくなる。迫力だけじゃなくなんだか健康になった気もする。治癒力まで搭載なのか!御利益か!男児なのに聖女なのか!
 「聖女様みたいだぁ」同じ事考えてた奴が声に出していた。自分が言ったかと思った。焦るぅ。
 ちなみにこの世界に聖女様はいない。子どもの頃読む絵本に出てくる憧れのキャラクターだ。
 だけどもしかしたら実在しているのかもしれない。男として。いや、ヤバイな自分、混乱してる。

 「あにゅーれぇ!」
 って、クイン家のルゼル様がリゼル様に駆け寄った。あれ、駆け寄ってるんだよな?自分の歩きでも追い越せる遅さだけど、あれ全力だよな?「くうっ」あ、声出ちゃった。てか「あにゅーれ」って何?兄上のこと?可愛くない?
 「ルゼル!アニューレを見に来てくれたの?」
 うわっ。リゼル様もルゼル様の前では一人称アニューレなの?何?クイン家の家族愛の深さは有名だけどこんな?クイン兄弟可愛くない?
 どこまで可愛いの?いや、可愛いに上限はないんだった。
 その横でリオン様がユリアン様に
 「兄ゆえ!えいっえいってかっこいいでしゅ!父ゆえと母ゆえに、おはなしちましゅ」ってかかと上げ下げして話しかけている。
 「騎士様たちが上手に教えてくださるからだよ」
 「はい!きしさまみんな、かっこいいでしゅ」
 うわーっ、なんてできた兄弟。コーク家は秀才揃いだと言われてるけどマジなんだな。ユリアン様5歳だけど絶対自分より賢いってのがわかるもんな。

 「可愛いなぁ」
 近くでマグヌス殿下がつぶやかれた。ヤベ、殿下の存在忘れて天使たちを見ていた。てか、近くの騎士たちみんな練習の手が止まって見てる。…副団長も天使たち見ていて気づいてないからまぁいいか。
 「より良い国にしなければな…」
 …殿下がポツリと仰った。
 はあああっ‼︎殿下‼︎今、天使たちを見て、その向こう側の市井までを見ていましたね!殿下の国を思う気持ちに触れました!感動です!
 天使だ、可愛い、癒されるぅ、だけしか思っていなかった自分が恥ずかしい。だって殿下もまだ5歳だよ。何うちの王族上位貴族の御子息方。素晴らしすぎじゃないか。
 そうだよ、自分たちの使命は国の平和を維持するだけじゃなくて、もっと良くしていくことなんだよ。
 殿下、自分もっと精進します。
 殿下のお役に立てるように。国のために。みんなのために。

 この日、多くの騎士が自分たちが守るべき平和とは何かを具体的に意識した。
 同時に「聖女様実在」とか「聖女様男性説」とか「見るだけで元気になる薬がある」とかいう噂話も世の中に広まって行った。
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