金に紫、茶に翡翠。〜癒しが世界を変えていく〜

かなえ

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第二章

閑話 あの日の『納得』を確かめる兄ユリアン〜ついでに弟が天使なことも再確認

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 私は弟リオンの反応が引っかかっている。
 マード国第二王子ヴァジュラ様に初めてお目もじした日、リオンは赤子はどこから来るのかと問い、兄である自分は母の腹から子は生まれると教えた。その時の弟の反応のことだ。
 感嘆でもキョトンでもなく、「お腹の前は?」と更に聞いてきたのだ。それに対し執事長の受け売りで「神様のところ」と答えたら妙に納得して「神様?ああ」と言ったのだ。2歳の子が。
 2歳の子が「ああ」って何?自分も5歳だが…。
 それにしても従兄弟のルゼルの心配は可愛かった。神様の国に坂はあるのかなどと…。うちのリオンも神様の国のお天気を聞くなど可愛かったが…とにかくあの2人は最強に可愛い。可愛すぎて心配だ。絶対悪い大人たちや怖い女の子たちに狙われてしまうだろう。おそらく父上も叔父上もその危険に気づいているはずだ。今度しっかり対策について話し合わないと…。
 あ、そうだ、神様の話だった。気になるから明日の朝食の時に聞いてみよう。

 翌朝。今日は大人の休みの日。お休みの日の父上と母上は私たち子どもに朝食の時間を合わせてくださる。いつもより少し遅めということ。
 「おはようございます」食卓につく時にはもう父上と母上がお席に着いて何やら楽しげにお話をしていた。うちの両親は仲良しだと思う。最近友達になったバークレイの父上と母上は滅多に一緒にいないと言っていた。貴族とはそういうものなのだそうだ。…違うと思うけど言わなかった。
 あ、うちの天使が登場した。眠そう。可愛い。
 外では2歳のわりにしっかりしていると言われるけど、家では普通の2歳の姿を見せてくれる。この油断した寝ぼけまなこが可愛い。紫の瞳が半分しか見えない。寝癖が酷かったのか、金髪もいつもよりフワッと広がっていて天使度が上がっている。うちの弟、可愛いばっかり。可愛いしかない。
 「父ゆえ、母ゆえ、兄ゆえ、おはよござましゅ」ぺこり。つむじまで可愛いって何事か。
 この頃『あにゅうえ』から『兄ゆえ』と呼ばれるようになった。舌足らずの言い方が可愛かったのに少し残念。その点リゼルは良いなぁ。ルゼルはまだまだリゼルを「あにゅーれ」って呼んでる。
 
 「いただきます」でしばらく歓談。父上と母上が今週のあれこれについて話している。執事たちから聞いた話や父上がお仕事中に私たちが母上とお出かけした話とか、とにかくお2人のお話は私たち兄弟の事が多い。時々私たちに「そうなのか?」とか「そうよね?」とか確認的に振られたり、詳しいことを聞かれたりする。それでお2人はニコニコしている。やっぱりバークレイは間違っていると思う。
 おっとそうそう、忘れずに聞くことがあったんだ。
 「リオン」「あい。…はい」咄嗟の返事が舌足らず。可愛い。
 「ヴァジュラ様にお会いした日にリオンと神様のところのお話をしたよね」
 「はい、しまちた」あ、舌足らず、可愛い。
 「あの時、お腹にくる前の赤子は神様のところにいると話したら『ああ』って言ったよね」
 「はい、言いまちた」あぁ、可愛い。
 「あれはなんの『ああ』だったの?」
 父上も母上もにこやかに聴いている。そんななかリオンは何でもないように言った。
 「ゔぁじゅらしゃま、うまれたひ、あめだったでしゅ。おうひしゃま、おなかくるまえ、おそといたら、あめなの」
 「あぁ」と、これは父上。「お前はヴァジュラ様が雨に濡れなかったか心配だったのか?」
 「はい、そうでしゅ」
 確かにあの日は雨が降っていた。というか、お帰りになった父上がヴァジュラ様が生まれたとお話になった時、雨が降っていた。王妃様のお腹に来る前に雨の中にいたら濡れただろうと心配していたら外にはいなくて神様のところにいたとわかっての『ああ』だったのか。うちの弟、優しくて可愛い。最強。
 「くぅっ」可愛さに耐えきれず声が出てしまった。でも私だけではなかった。父上も給仕の者たちも執事たちも従者たちも皆それぞれの「くぅっ」を出していた。母上だけが扇で口元をお隠しになっているけれど絶対心の中で「くぅっ」と仰っているはず。
 あ、そうか。ハタと気づいた。
 「だからヴァジュラ様に神様のところはお天気かと聞いたの?」
 「はいでしゅ。あ、はい、そうでしゅ」激カワ。リオンは続ける。
 「でも、ゔぁじゅらしゃま、おそらのこと、いわないでした。しゃかもあるって。きっときっと、おしろがいいでしゅ」
 うんうん、神様のところよりお城が安全て思っているのだね。と思っていたら…。
 「りろん、母ゆえのおなかくるまえ、わかんないの。ここがだいしゅきで、わしゅれてしまったの。おしろ、おうしゃまも、おうひしゃまも、まぐにゅしゅしゃまもいて、あめもだいじょぶなの。きっと、ゔぁじゅらしゃま、おしろだいしゅきに、なるましゅ」
 一気に持論を語り、ですよねみたいにこちらを見るリオン。外も内も天使‼︎え?『最強』の上の言葉って何?何?絶対それ!あとでバトラーに教えてもらおう。
 ずきゅーん、からの、ほわわわわぁん。効果音をつけるとしたら今の食堂はこれ一択。
 可愛い。うちの天使は今日も天使。
 この天使の天使らしさを引き出した私の投げかけ、絶対良かったはず。後で父上と母上に「今日のリオンも可愛かったですね」ってお話に行こう。きっとお2人はうんうんて言って「お前が良い質問をしたからだ」と褒めてくださる。もしかしたらお膝に乗せてくださるかも。頭もなでてくださるかも。いつもはそんなおねだりしない。もう5歳だし兄上だからね。でも本当はもう少し甘えたいんだ。まだ5歳だからね。だけどそこにリオンが居たらお膝もなでなでもリオンにゆずるよ。だって私は兄上だし、私の方がリオンをお膝に乗せてなでたいんだから。
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