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第七話 巻き込み追放
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「余は開拓など命じておらぬ。其方が勝手に騒いでいるのみ。――いや、それはそれで一興。彼の地の開拓は、我が王国の悲願であるからな」
「悲願であると仰るのであれば、適任の者を派遣すべきと存じますが……いいえ、そもそも適任者がおらず、何度も開拓に失敗しております。あの地の開拓など無謀なのです」
「適任と言うのであれば、其方の言う勇者こそが適任ではないか。魔王討伐最大の功労者であれば、開拓も余裕であろう?」
第一王女は十七歳で、第二王女は十五歳だ。
たった二つの違いでも、この若さで二年の人生経験の差は大きいようで、第一王女は第二王女の言葉を上手く拾いつつ、それを利用して口撃に利用している。
そして俺の死亡フラグは、第二王女が俺を庇えば庇うほど強固に……。
もはや第二王女の援護は有難迷惑だ、黙ってほしい。
「世界をお救いになった勇者様の適任が、開拓な訳がございません」
「魔王討伐では役立たず、開拓でも役立たず。では其方の勇者が活躍する場はどこにある?」
「ですから、ワルター様は先の魔王討伐戦で活躍――」
「もうよい」
第一王女は第二王女の言葉を遮った。
「魔王討伐が成され、その後に関する神託も既に降った。これでしばらく神託が降る事もあるまい。であれば神託の巫女……いや、姫巫女であったか? とにかく、其方が王都に付きっきりである必要もなかろう」
なんだか雲行きが怪しくなってきた。
まるで、『神託が降りないのであれば、”神託の姫巫女は役立たず”』と言ってるような気がする。
「ツェツィーリア、其方の余に対する数々の暴言、これは不敬罪に当たる。よって今このときより、其方の王族権を剥奪、王族からの除籍処分とし、国外追放を言い渡す。――追放先は、ガルゲン方面だ」
言い方はどうであれ、第一王女は妹である第二王女をお払い箱にしたのだ。
「なっ! 姉妹の会話で不敬罪など、おかしいではないですか!」
「余は国王代理であり、ここは玉座の間。家族が団欒する場ではない。――弁えよ!」
「―――っ!」
「しかし余とて鬼ではない。……うむ、其方は其方の信じる勇者と共に、彼の地を開拓してみよ。見事成功させた暁には、彼の地を其方の国、つまり独立国家となる事を認めよう」
「何を仰っているのですか? 彼の地の開拓はレーアツァイト王国にとって悲願だと仰ったばかりではないですか。それを独立国家などと」
「もちろん、レーアツァイト王国の属国としての国家だ。頑張れば、其方は余より先に王になれるやもしれぬぞ。其方の言う勇者がおれば簡単であろう?」
役立たずな俺と、神託を授かる能力しかない、ある意味役目を終え役立たずとなった第二王女が、厄介な魔物が跋扈する地を開拓するなどまず不可能だ。
そもそも、ただ生き残ることすら絶望的だと思われる。
第一王女は無理なのをわかっていて、成功報酬に王の地位を与えるなどと言い、自分の寛大さを喧伝しているのだろう。
それにしても、俺の事は百歩譲って我慢しよう。――我慢したくないけど。
しかしこれでは、なんの罪もない第二王女がただ追放される……まさかっ!
もしかすると、第一王女は自分の地位を脅かす存在を、俺を使ってここぞとばかりに追放したんじゃ……。
仮にそうだとしても、俺に覆す力はない。
当初、俺を庇ってくれる第二王女を、心の中では半ば迷惑だと思っていた。
しかしこうなってしまうと、第二王女に申し訳ない気持ちを抱いてしまう。
だが現状はどうにもならない。
「何を仰っているのですか? 遥か彼方の昔より今この時まで、人が近寄れぬ魔境となった地を人の住める環境にするのですよ? そのような地を開拓したのであれば、レーアツァイト王国の属国ではなく、対等な立場の独立国家となるのが当然ではありませんか?」
諦めの境地に達していた俺の耳に、それこそ耳を疑うような第二王女の声が。
「出来もせぬ事を」
「出来もしないような事を、国王代理殿下は命じたのですか? ――とはいえ私は、勇者ワルター様が成し遂げてくださると信じていますので」
この淫乱ピンクの巫女コス……ではなく、神託の姫巫女は何を言ってるんだ?
ってかこいつ、気遣いのできる優しい女の子だと思ってたのに、煽り耐性の低い頭お花畑の疫病神だったのか!?
俺が第二王女を巻き込んでしまったようで、申し訳ない気持ちになったばかりだというのに、今や俺が巻き込まれたような状況になっている。
否! 巻き込まれたようなではなく、この女に俺が巻き込まれたのだ。
いや、しかし、追放先がそんな場所だった時点で、俺は既に詰んでいた。
それを考えれば、やはり俺が巻き込んだと言えなくもない……。
「情けない。そのような役立たずのインチキ勇者に丸投げとは」
「ワルター様は、役立たずでもインチキでもございません! 立派な勇者様です! そして私は、丸投げする気などございません。勇者様をお支えし、共に未来を切り開くつもりです」
ダメだこいつ……。
役立たずと役立たずが手を組んだところで、無理なもんは無理だから……。
もっとこう、役に立つ味方を引き入れる交渉とかできないもんかね。
「面白い。ならばやってみせよ。――ふっ、無事に成し遂げる事を期待しておるぞ」
それ以上の交渉はなく、ポンコツ第二王女のせいで俺の命は風前の灯火。
こうなったら以上、どうにかして逃げねば……。
こうして俺は、棺桶に片足を突っ込んだ状態で、第二王女と共に王都から追放されるのであった。
「悲願であると仰るのであれば、適任の者を派遣すべきと存じますが……いいえ、そもそも適任者がおらず、何度も開拓に失敗しております。あの地の開拓など無謀なのです」
「適任と言うのであれば、其方の言う勇者こそが適任ではないか。魔王討伐最大の功労者であれば、開拓も余裕であろう?」
第一王女は十七歳で、第二王女は十五歳だ。
たった二つの違いでも、この若さで二年の人生経験の差は大きいようで、第一王女は第二王女の言葉を上手く拾いつつ、それを利用して口撃に利用している。
そして俺の死亡フラグは、第二王女が俺を庇えば庇うほど強固に……。
もはや第二王女の援護は有難迷惑だ、黙ってほしい。
「世界をお救いになった勇者様の適任が、開拓な訳がございません」
「魔王討伐では役立たず、開拓でも役立たず。では其方の勇者が活躍する場はどこにある?」
「ですから、ワルター様は先の魔王討伐戦で活躍――」
「もうよい」
第一王女は第二王女の言葉を遮った。
「魔王討伐が成され、その後に関する神託も既に降った。これでしばらく神託が降る事もあるまい。であれば神託の巫女……いや、姫巫女であったか? とにかく、其方が王都に付きっきりである必要もなかろう」
なんだか雲行きが怪しくなってきた。
まるで、『神託が降りないのであれば、”神託の姫巫女は役立たず”』と言ってるような気がする。
「ツェツィーリア、其方の余に対する数々の暴言、これは不敬罪に当たる。よって今このときより、其方の王族権を剥奪、王族からの除籍処分とし、国外追放を言い渡す。――追放先は、ガルゲン方面だ」
言い方はどうであれ、第一王女は妹である第二王女をお払い箱にしたのだ。
「なっ! 姉妹の会話で不敬罪など、おかしいではないですか!」
「余は国王代理であり、ここは玉座の間。家族が団欒する場ではない。――弁えよ!」
「―――っ!」
「しかし余とて鬼ではない。……うむ、其方は其方の信じる勇者と共に、彼の地を開拓してみよ。見事成功させた暁には、彼の地を其方の国、つまり独立国家となる事を認めよう」
「何を仰っているのですか? 彼の地の開拓はレーアツァイト王国にとって悲願だと仰ったばかりではないですか。それを独立国家などと」
「もちろん、レーアツァイト王国の属国としての国家だ。頑張れば、其方は余より先に王になれるやもしれぬぞ。其方の言う勇者がおれば簡単であろう?」
役立たずな俺と、神託を授かる能力しかない、ある意味役目を終え役立たずとなった第二王女が、厄介な魔物が跋扈する地を開拓するなどまず不可能だ。
そもそも、ただ生き残ることすら絶望的だと思われる。
第一王女は無理なのをわかっていて、成功報酬に王の地位を与えるなどと言い、自分の寛大さを喧伝しているのだろう。
それにしても、俺の事は百歩譲って我慢しよう。――我慢したくないけど。
しかしこれでは、なんの罪もない第二王女がただ追放される……まさかっ!
もしかすると、第一王女は自分の地位を脅かす存在を、俺を使ってここぞとばかりに追放したんじゃ……。
仮にそうだとしても、俺に覆す力はない。
当初、俺を庇ってくれる第二王女を、心の中では半ば迷惑だと思っていた。
しかしこうなってしまうと、第二王女に申し訳ない気持ちを抱いてしまう。
だが現状はどうにもならない。
「何を仰っているのですか? 遥か彼方の昔より今この時まで、人が近寄れぬ魔境となった地を人の住める環境にするのですよ? そのような地を開拓したのであれば、レーアツァイト王国の属国ではなく、対等な立場の独立国家となるのが当然ではありませんか?」
諦めの境地に達していた俺の耳に、それこそ耳を疑うような第二王女の声が。
「出来もせぬ事を」
「出来もしないような事を、国王代理殿下は命じたのですか? ――とはいえ私は、勇者ワルター様が成し遂げてくださると信じていますので」
この淫乱ピンクの巫女コス……ではなく、神託の姫巫女は何を言ってるんだ?
ってかこいつ、気遣いのできる優しい女の子だと思ってたのに、煽り耐性の低い頭お花畑の疫病神だったのか!?
俺が第二王女を巻き込んでしまったようで、申し訳ない気持ちになったばかりだというのに、今や俺が巻き込まれたような状況になっている。
否! 巻き込まれたようなではなく、この女に俺が巻き込まれたのだ。
いや、しかし、追放先がそんな場所だった時点で、俺は既に詰んでいた。
それを考えれば、やはり俺が巻き込んだと言えなくもない……。
「情けない。そのような役立たずのインチキ勇者に丸投げとは」
「ワルター様は、役立たずでもインチキでもございません! 立派な勇者様です! そして私は、丸投げする気などございません。勇者様をお支えし、共に未来を切り開くつもりです」
ダメだこいつ……。
役立たずと役立たずが手を組んだところで、無理なもんは無理だから……。
もっとこう、役に立つ味方を引き入れる交渉とかできないもんかね。
「面白い。ならばやってみせよ。――ふっ、無事に成し遂げる事を期待しておるぞ」
それ以上の交渉はなく、ポンコツ第二王女のせいで俺の命は風前の灯火。
こうなったら以上、どうにかして逃げねば……。
こうして俺は、棺桶に片足を突っ込んだ状態で、第二王女と共に王都から追放されるのであった。
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