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九、任務遂行
十五
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文を手に立つ女官……どころか、誰もいない。
不思議に感じた美雨は、身を乗り出して左右を確認した。
しかし、廊下はしんと静まり返っていて、まったく人の気配がなかった。
確かに扉を叩く音がしたはずなのにと、美雨は首を傾げる。
その時、不意にヒュッと風が吹き込むのを感じた。
奇妙な話である。どこの窓も閉じたままなのに。
美雨は訝しげな表情で、ゆっくりと扉を閉めた。
そして振り返った刹那、戦慄する。
「ひっ……!?」
美雨は目の前の光景に、小さな悲鳴を上げてたじろいだ。
誰もいなかったはずの空間に、突如として現れた人物。
全身を漆黒の衣で包んだ彼女に、美雨は青ざめた。
「そんなに驚かなくていいじゃない、あんたが私を呼んだんだから」
その言葉に、美雨は後退りをやめ、頭を働かせた。
闇に溶けそうな黒づくめの姿に、あっという間に部屋に入り込んだ技。
その上、美雨が呼んだとなれば、指す人物は一人しかいなかった。
「……まさか、韻の者……? 実行人は暗殺に失敗して、内密に処分されたと、凛玲に聞いたけれど」
凛玲は今際の際に、翠玉のことを伝えていた。
処分されたと言えば、美雨の牙が実行人に向くことはないと考えたからだ。
『翠玉には本当に、幸せになってほしいんだ』
そう言っていた凛玲が、翠玉の脳裏に浮かんだ。
「そう……凛玲は、気遣いのできる優しい子だったわ……」
韻の者だとわかった美雨は、警戒心を解いて少し前のめりになった。自分の味方だと思っていたからだ。
「実行人が生きているということは、今宵陛下に仕掛けるの? 金ならいくらでも用意するわ、早く済ませてちょうだい」
他に暁嵐を消すよい案が浮かばなかった美雨は、鼻息を荒くして言った。
しかし、その黒い希望は、翠玉の台詞に打ち砕かれる。
「残念ながら、あんたはもう、依頼人じゃないのよ」
美雨は動きを止め、怪訝な顔で頭を捻った。
「なにを言っているの?」
「あんたは重大な契約違反をしたわ……請負人を殺すという」
この声、どこかで聞いたことがあるような――?
美雨はなにをバカなことをと考えながら、黒づくめの女の顔を凝視した。
不思議に感じた美雨は、身を乗り出して左右を確認した。
しかし、廊下はしんと静まり返っていて、まったく人の気配がなかった。
確かに扉を叩く音がしたはずなのにと、美雨は首を傾げる。
その時、不意にヒュッと風が吹き込むのを感じた。
奇妙な話である。どこの窓も閉じたままなのに。
美雨は訝しげな表情で、ゆっくりと扉を閉めた。
そして振り返った刹那、戦慄する。
「ひっ……!?」
美雨は目の前の光景に、小さな悲鳴を上げてたじろいだ。
誰もいなかったはずの空間に、突如として現れた人物。
全身を漆黒の衣で包んだ彼女に、美雨は青ざめた。
「そんなに驚かなくていいじゃない、あんたが私を呼んだんだから」
その言葉に、美雨は後退りをやめ、頭を働かせた。
闇に溶けそうな黒づくめの姿に、あっという間に部屋に入り込んだ技。
その上、美雨が呼んだとなれば、指す人物は一人しかいなかった。
「……まさか、韻の者……? 実行人は暗殺に失敗して、内密に処分されたと、凛玲に聞いたけれど」
凛玲は今際の際に、翠玉のことを伝えていた。
処分されたと言えば、美雨の牙が実行人に向くことはないと考えたからだ。
『翠玉には本当に、幸せになってほしいんだ』
そう言っていた凛玲が、翠玉の脳裏に浮かんだ。
「そう……凛玲は、気遣いのできる優しい子だったわ……」
韻の者だとわかった美雨は、警戒心を解いて少し前のめりになった。自分の味方だと思っていたからだ。
「実行人が生きているということは、今宵陛下に仕掛けるの? 金ならいくらでも用意するわ、早く済ませてちょうだい」
他に暁嵐を消すよい案が浮かばなかった美雨は、鼻息を荒くして言った。
しかし、その黒い希望は、翠玉の台詞に打ち砕かれる。
「残念ながら、あんたはもう、依頼人じゃないのよ」
美雨は動きを止め、怪訝な顔で頭を捻った。
「なにを言っているの?」
「あんたは重大な契約違反をしたわ……請負人を殺すという」
この声、どこかで聞いたことがあるような――?
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