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九、任務遂行
十一
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「もしも、雲嵐様が皇帝になられていたら、どんな国になったでしょうか」
「翠風殿は、どのような国になったと思いますか?」
雲嵐は翠玉の後頭部を持ち、引き寄せた。
翠玉は雲嵐に身を任せながら、三日月型に目を歪めた。
「そうですね……雲嵐様が陛下であれば、きっと――」
翠玉は雲嵐の頭を抱き込むように固定し、深く口づけた。
そして、奥歯に備えた、あるものを発動させる。
唇が離れた後、雲嵐の目に映ったのは、知っている翠玉ではなかった。
「とっくに国は滅びているでしょうね」
あっけに取られた雲嵐を置いて、翠玉はすっと立ち上がる。
そして、冷ややかな目で、布団に仰向けに寝たままの雲嵐を見下ろした。
「悪知恵ばかり働いて、本質を見抜く力がない、あんたみたいな愚かな男に、騙された女も女だわ」
「なっ……なにを――……っ!?」
ようやくハッとした雲嵐は、布団から急いで起き上がろうとした。
しかし、突然胸元を抑えて苦しみ始める。
「が……な、んだ……れ、はぁ……!」
雲嵐は胸が焼けるような感覚に襲われながら、血走った目で翠玉を見上げた。
その瞬間、先ほどのやり取りを思い出す。
もしも私が、暗殺者であったなら――。
まさか、まさか、なぜ私がと、朦朧とする意識の中で繰り返しても、その答えを聞く時間は雲嵐には残されていなかった。
「あら、さっきまでの威勢のよさはどこに行ったのかしら、まるで兄よりも、自分の方が利口だと言いたげだったけど」
翠玉は膝をついて涎をたらす雲嵐の額を、上げた片足の指先で突いた。
「あのお方には、こんな小細工は通用しなかったわよ」
いとも簡単に倒れた雲嵐は、最後まで暁嵐に勝てなかった自身を呪いながら果てた。
口から泡を吹かない、即効性のある毒薬だ。
翠玉が暁嵐奇襲の時に、口内に仕込んでいたものが、こんなところで役立つとは。
ちなみにこれを保管していたのは司馬宇だった。だから翠玉は司馬宇から受け取ったため、暁嵐はこの殺し方について知らない。
意外とヤキモチ妬きなので、色仕掛けについては暁嵐には内緒である。
翠玉は脱ぎ捨てた衣を裏返しに一気に着ると、身体に張りつく漆黒の衣に変わる。
表は煌びやかな衣装、裏は暗殺の正装になるこれは、暁嵐が用意した特注品だ。
翠玉は机に置かれた自分用の盃を手にすると、秘密の通路の出入り口を開けた。
「乾杯、そしてさようなら」
翠玉の手から離れた盃が、灰色の階段に落下する。
二度と使われないであろう出入り口を塞ぐと、翠玉は黒い布で目元から下を隠し、雲嵐の部屋の窓から出ていった。
「翠風殿は、どのような国になったと思いますか?」
雲嵐は翠玉の後頭部を持ち、引き寄せた。
翠玉は雲嵐に身を任せながら、三日月型に目を歪めた。
「そうですね……雲嵐様が陛下であれば、きっと――」
翠玉は雲嵐の頭を抱き込むように固定し、深く口づけた。
そして、奥歯に備えた、あるものを発動させる。
唇が離れた後、雲嵐の目に映ったのは、知っている翠玉ではなかった。
「とっくに国は滅びているでしょうね」
あっけに取られた雲嵐を置いて、翠玉はすっと立ち上がる。
そして、冷ややかな目で、布団に仰向けに寝たままの雲嵐を見下ろした。
「悪知恵ばかり働いて、本質を見抜く力がない、あんたみたいな愚かな男に、騙された女も女だわ」
「なっ……なにを――……っ!?」
ようやくハッとした雲嵐は、布団から急いで起き上がろうとした。
しかし、突然胸元を抑えて苦しみ始める。
「が……な、んだ……れ、はぁ……!」
雲嵐は胸が焼けるような感覚に襲われながら、血走った目で翠玉を見上げた。
その瞬間、先ほどのやり取りを思い出す。
もしも私が、暗殺者であったなら――。
まさか、まさか、なぜ私がと、朦朧とする意識の中で繰り返しても、その答えを聞く時間は雲嵐には残されていなかった。
「あら、さっきまでの威勢のよさはどこに行ったのかしら、まるで兄よりも、自分の方が利口だと言いたげだったけど」
翠玉は膝をついて涎をたらす雲嵐の額を、上げた片足の指先で突いた。
「あのお方には、こんな小細工は通用しなかったわよ」
いとも簡単に倒れた雲嵐は、最後まで暁嵐に勝てなかった自身を呪いながら果てた。
口から泡を吹かない、即効性のある毒薬だ。
翠玉が暁嵐奇襲の時に、口内に仕込んでいたものが、こんなところで役立つとは。
ちなみにこれを保管していたのは司馬宇だった。だから翠玉は司馬宇から受け取ったため、暁嵐はこの殺し方について知らない。
意外とヤキモチ妬きなので、色仕掛けについては暁嵐には内緒である。
翠玉は脱ぎ捨てた衣を裏返しに一気に着ると、身体に張りつく漆黒の衣に変わる。
表は煌びやかな衣装、裏は暗殺の正装になるこれは、暁嵐が用意した特注品だ。
翠玉は机に置かれた自分用の盃を手にすると、秘密の通路の出入り口を開けた。
「乾杯、そしてさようなら」
翠玉の手から離れた盃が、灰色の階段に落下する。
二度と使われないであろう出入り口を塞ぐと、翠玉は黒い布で目元から下を隠し、雲嵐の部屋の窓から出ていった。
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