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九、任務遂行
二
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「大丈夫ですか、翠風殿」
「はい、ありがとうございます、雲嵐様……」
名を呼び、さも恋しい瞳で雲嵐を見上げる翠玉。
潤んだ瞳に見つめられた雲嵐は、今すぐにでも手を出してしまいたい衝動を抑える。
そしてその代わりに、例の話を口にする。
「……翠風殿には、秘密の場所をお教えすると言っておりましたね」
「ええ、そう、でしたわね」
以前、雲嵐がチラつかせていた『秘密の場所』の話。
これこそが、翠玉が聞き出したかったことだ。
自ら教えろとは言わず、雲嵐から話すように煽る。少し興味なさそうに、男の狩猟本能をくすぐる。
すると、雲嵐は、翠玉を抱き止めたまま、翠玉の耳に唇を寄せた。
「後宮の門の横です、旺玖院に近い方の、門の隅……」
周りには誰もいないというのに、あえて忍ぶように、雲嵐はひっそりと囁いた。
「誰も見抜きもしないような、忘れられた場所に、古い井戸があります……そこが私の部屋に繋がっているのですよ」
翠玉は息を詰め、目を見開いた。
二割は驚き、八割はやはりという衝撃だ。
翠玉が気にしていたあの古い井戸――あそこが、旺玖院にある、雲嵐の城に繋がっていたのだ。
「まぁ……そんなところが……」
「女官も寝た後の夜更けなら、皇妃は一人で屋敷を出られます」
翠玉の瞳に映る雲嵐は、善人のように微笑んでいる。
「見回りの門番や宦官は?」
「彼らが確認するのは表通りが主です、建物の裏側を通れば十中八九見つかりません、仮に見つかったなら、私の名を出せばいい、そうすれば、問い詰める者はおりません、私が上皇の気に入りだということは、皆知っておりますから、事を荒立てはしませんよ」
「なるほど……」
用意周到、手練れの確信犯だ。
罪悪感など微塵もない。
翠玉は雲嵐の腕に収まったまま、上目遣いを続けた。
「ですが、どのようにして抜け道を作られたのです?」
「祭典の時などに、大道芸の者が来るでしょう、それのツテで、土木を生業にしている者に頼んだのですよ。夜な夜な穴を掘らせれば、一月足らずでできました、井戸から私の部屋まで、そう距離はありませんので」
翠玉の頭に宮中の地図が浮かぶ。
井戸から雲嵐の城までは直線になっている。門と庭園を挟んでいるが、真っ直ぐに歩けば二、三分で着くだろう。
確かに水道や通路を作ったり、地面に関することを生業にしている者なら、それくらいでやって退けるかもしれない。
しかし、女のためにそこまでやるとは、この男こそ本物の好色漢だと翠玉は思った。
「はい、ありがとうございます、雲嵐様……」
名を呼び、さも恋しい瞳で雲嵐を見上げる翠玉。
潤んだ瞳に見つめられた雲嵐は、今すぐにでも手を出してしまいたい衝動を抑える。
そしてその代わりに、例の話を口にする。
「……翠風殿には、秘密の場所をお教えすると言っておりましたね」
「ええ、そう、でしたわね」
以前、雲嵐がチラつかせていた『秘密の場所』の話。
これこそが、翠玉が聞き出したかったことだ。
自ら教えろとは言わず、雲嵐から話すように煽る。少し興味なさそうに、男の狩猟本能をくすぐる。
すると、雲嵐は、翠玉を抱き止めたまま、翠玉の耳に唇を寄せた。
「後宮の門の横です、旺玖院に近い方の、門の隅……」
周りには誰もいないというのに、あえて忍ぶように、雲嵐はひっそりと囁いた。
「誰も見抜きもしないような、忘れられた場所に、古い井戸があります……そこが私の部屋に繋がっているのですよ」
翠玉は息を詰め、目を見開いた。
二割は驚き、八割はやはりという衝撃だ。
翠玉が気にしていたあの古い井戸――あそこが、旺玖院にある、雲嵐の城に繋がっていたのだ。
「まぁ……そんなところが……」
「女官も寝た後の夜更けなら、皇妃は一人で屋敷を出られます」
翠玉の瞳に映る雲嵐は、善人のように微笑んでいる。
「見回りの門番や宦官は?」
「彼らが確認するのは表通りが主です、建物の裏側を通れば十中八九見つかりません、仮に見つかったなら、私の名を出せばいい、そうすれば、問い詰める者はおりません、私が上皇の気に入りだということは、皆知っておりますから、事を荒立てはしませんよ」
「なるほど……」
用意周到、手練れの確信犯だ。
罪悪感など微塵もない。
翠玉は雲嵐の腕に収まったまま、上目遣いを続けた。
「ですが、どのようにして抜け道を作られたのです?」
「祭典の時などに、大道芸の者が来るでしょう、それのツテで、土木を生業にしている者に頼んだのですよ。夜な夜な穴を掘らせれば、一月足らずでできました、井戸から私の部屋まで、そう距離はありませんので」
翠玉の頭に宮中の地図が浮かぶ。
井戸から雲嵐の城までは直線になっている。門と庭園を挟んでいるが、真っ直ぐに歩けば二、三分で着くだろう。
確かに水道や通路を作ったり、地面に関することを生業にしている者なら、それくらいでやって退けるかもしれない。
しかし、女のためにそこまでやるとは、この男こそ本物の好色漢だと翠玉は思った。
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