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八、戒めを解き放つ命令
九
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「美雨は暗殺を依頼した口封じに凛玲を殺したわ、だけどその罪を被ったのは、美雨に仕えていた女官の青静」
「凛玲とやらの腕に痣のようなものが残っておったな、あれは無理やり毒を食わされた証であろう、美雨はわざわざ毒味役を後宮から連れてきたと言っておったが、そんなことは旺玖院におる宦官に頼めば済むこと、不自然なことが多すぎると思っておったが、翠玉の話で合点がいった」
暁嵐はなにも翠玉の話を鵜呑みにしているわけではない。
自身の考えによる裏づけにより、正しい判断をしているのだ。
翠玉はふと凛玲の顔を思い浮かべた。
そして心の中で謝った。
だが、きっと凛玲は許してくれると思った。
今まで翠玉たちの周りには、暁嵐のように信頼に値する主はいなかったのだから。
「……私は、判断を間違えたんだわ、初めからあなたにすべて話しておけば、もっと違う結果があったかもしれない」
「人を信用できぬのは、生い立ちゆえであろう、わしも似たようなもんじゃがな……本気で信頼しておるのは、側近の司馬宇をおいて他にない。どれだけ長い付き合いの者でも、気を張り出方を見ておる」
「なら、どうして私をそばに置くの?」
翠玉は本心から問うた。
人間関係に細心の注意を払っているなら、自身がどれだけその枠からはみ出ているのか、自覚があったからだ。
「あなたを殺しに来た人間よ、任務のためなら平気で人を殺す……一番信用ならない人間でしょう、なのに、なぜ……」
翠玉は胸に手のひらをあて、柄にもなく声を荒げて言った。
すると暁嵐は、少し目を丸くした後、腕を組んで答えを探した。
先ほどまでの鬼神のような猛りは、一旦なりを潜める。
「お前のことは信じるとはまた、少し別物やもしれん。出会ったあの日から今日まで、もしや寝首をかかれるやも、また命を狙ってくるやもと、僅かでも考えなかったと言えば嘘になる。しかしのぉ……」
暁嵐は凛々しい眉を下げ、困ったように微笑んだ。
その翠玉を見つめる目は、愛おしさに溢れていた。
「気づいたらお前のことを考えておるのじゃ、勝手に足が向き、顔を見れば触れたくなり、抱けば愛しさが増し、他のことはどうでもよくなってしまう……わしは心のどこかで、お前になら殺されてもよいと思っておるのかもしれんの」
国のためにまだ死ねない――そんなふうなことを、今し方言った口で、お前になら殺されてもいいと宣う。
翠玉には暁が見えた。
どんな深い闇をも照らす、紅い光。
翠玉は一粒だけ、涙を流した。
なぜ出てきたのかわからない。
それは、探し求めた君主に対する、忠誠の証だったかもしれない。
「凛玲とやらの腕に痣のようなものが残っておったな、あれは無理やり毒を食わされた証であろう、美雨はわざわざ毒味役を後宮から連れてきたと言っておったが、そんなことは旺玖院におる宦官に頼めば済むこと、不自然なことが多すぎると思っておったが、翠玉の話で合点がいった」
暁嵐はなにも翠玉の話を鵜呑みにしているわけではない。
自身の考えによる裏づけにより、正しい判断をしているのだ。
翠玉はふと凛玲の顔を思い浮かべた。
そして心の中で謝った。
だが、きっと凛玲は許してくれると思った。
今まで翠玉たちの周りには、暁嵐のように信頼に値する主はいなかったのだから。
「……私は、判断を間違えたんだわ、初めからあなたにすべて話しておけば、もっと違う結果があったかもしれない」
「人を信用できぬのは、生い立ちゆえであろう、わしも似たようなもんじゃがな……本気で信頼しておるのは、側近の司馬宇をおいて他にない。どれだけ長い付き合いの者でも、気を張り出方を見ておる」
「なら、どうして私をそばに置くの?」
翠玉は本心から問うた。
人間関係に細心の注意を払っているなら、自身がどれだけその枠からはみ出ているのか、自覚があったからだ。
「あなたを殺しに来た人間よ、任務のためなら平気で人を殺す……一番信用ならない人間でしょう、なのに、なぜ……」
翠玉は胸に手のひらをあて、柄にもなく声を荒げて言った。
すると暁嵐は、少し目を丸くした後、腕を組んで答えを探した。
先ほどまでの鬼神のような猛りは、一旦なりを潜める。
「お前のことは信じるとはまた、少し別物やもしれん。出会ったあの日から今日まで、もしや寝首をかかれるやも、また命を狙ってくるやもと、僅かでも考えなかったと言えば嘘になる。しかしのぉ……」
暁嵐は凛々しい眉を下げ、困ったように微笑んだ。
その翠玉を見つめる目は、愛おしさに溢れていた。
「気づいたらお前のことを考えておるのじゃ、勝手に足が向き、顔を見れば触れたくなり、抱けば愛しさが増し、他のことはどうでもよくなってしまう……わしは心のどこかで、お前になら殺されてもよいと思っておるのかもしれんの」
国のためにまだ死ねない――そんなふうなことを、今し方言った口で、お前になら殺されてもいいと宣う。
翠玉には暁が見えた。
どんな深い闇をも照らす、紅い光。
翠玉は一粒だけ、涙を流した。
なぜ出てきたのかわからない。
それは、探し求めた君主に対する、忠誠の証だったかもしれない。
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