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七、真実

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「そして、極めつけには……」

 枕里は浅く息を吸った。
 そして、勇気とともに声を絞り出す。
 
「皇后様は、皇妃様を殺しています」

 枕里は自分で言っておきながら、泣き出しそうに苦しげな表情をした。
 以前からわかっていたが、言葉にすることで、改めてその恐ろしさを痛感したのだ。
 翠玉はやや眉を動かしたが、取り乱すことはなかった。
 数えきれないほど人を殺めてきた翠玉にとって、知りもしない人間の死は、動揺に値しない。
 肝心なのは、目的を果たすことなのだから。

「なぜ、そう言いきれるの?」

 他の皇妃なら恐怖に慄くであろう事実にも、さして驚きもせず淡々と対応する翠玉。
 そんな冷静さに感化された枕里は、頭がすっと冴えるような心地になった。

「私が以前お仕えしていた、皇妃様も、そのお一人だったのです」

 枕里は翠玉の目をしかと見つめ、自分が言うべきことを頭でまとめた。

「とても可愛らしい、野花のような方でした。ですがある日突然……亡くなられました。毒だと思います。私はその時、席を外していたのです。皇后様付きの女官である、青静に頼まれたことがあって……。そして戻ってきた時には、皇妃様はもう……倒れて、息をされていなかったのです。そのそばには白茶の入った湯呑みが転がっておりました。白茶は珍しいものですから、お裾分けですとか、上手く誘導して青静が飲ませたのだと思います……皇后様はお茶がお好きなのです、美容にとても気を使っていらっしゃるので……」

 お茶という言葉に、翠玉はあの光景を思い出した。
 翠玉が後宮入りした初日、美雨の城を訪れた時も、芳しい香りが漂っていたことを。

「そういえば私が挨拶に行った時も、お茶を楽しんでいたわ……それも雲嵐様を想うがゆえなのかしら」
「恐らくは。皇后様は暁嵐様と同い年ですから、雲嵐様よりだいぶ年上になりますので……」

 若い男に釣り合うように、常に美容に気を配る。
 どうやら美雨は、雲嵐を繋ぎ止めようと必死なようだ。
 雲嵐は他の女――翠玉にも手を出そうとしているので、美雨に夢中というほどではなさそうだが。本命は美雨で、他は遊びの可能性もある。ただ……本当に愛されている自信があるなら、躍起になって他の女を殺す必要はないのでは……と、翠玉は考えた。
 
「その時、誰が犯人か調査はされなかったの? 珍しいお茶なら、そうたくさん持っている人はいないでしょうに」
「表向きは突発性の病死ということになっておりますので……」
「心筋梗塞や心不全とか、そういう類?」
「さようでございます、皇后様ほどの権力者なら、逆らえない臣下もたくさんいるでしょうし、見解を改竄するのも容易いのでしょう」
「なるほどね……」

 翠玉は顎に手を添え呟いた。
 自然死なら調査は行わないので、何事もなかったのと同じことだ。
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