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三、翠玉の友

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 十月半ば、秋風が肌に心地よい季節、楊国、五代目皇帝、紅暁嵐の生誕祭が開かれた。
 旺玖院の奥、皇族の城の先に建つ、横長の広々とした御殿。
 祝い事など行事のためだけに作られた、立派な建物だ。
 大きな扉を開ければ、向かって突き当たりに階段のような段差がある。
 その段差は扇状に広がっており、奥に行くほど高くなっている。
 一番高い部分は、当然、皇帝である暁嵐の席だ。その隣には妻の皇后である美雨の席。
 他の者たちは左右に分かれ、二人の両脇に席を並べている。
 美雨側には上皇と皇太后、その下に暁嵐の子を生んだ位の高い、御生母と呼ばれる皇妃たち。 
 暁嵐側には、暁嵐の兄弟に、子供たちが続いていた。
 皆、来た順に暁嵐の前でお辞儀をし、自分に用意された席についていく。
 前の席に座る者たちは、誰もが普段より豪華に着飾っていた。
 暁嵐の前には広々とした踊り場がある。金箔を織り込まれた真紅の絨毯を、天井にぶら下がった豪華な行燈が照らしている。
 その両脇に並んだ低い机には、贅沢な料理が次々と運ばれていた。
 女官たちは料理作りに配膳にと忙しいが、皇妃は暇なので特になにもすることがない。
 皇妃たちに与えられた空間で、皇妃同士話をしたり、牽制し合ったりしているだけだ。
 しかし、そこに翠玉の姿はない。
 そして、いつも暁嵐を見守っている司馬宇の姿もなかった。
 暁嵐はいつも以上に絢爛な衣を纏いながら、翠玉に会えるのを心待ちにしていた。
 皆が自分の場所につくと、頂将軍が立ち上がる。甲冑姿の髭を蓄えた中年男は、暁嵐の武道の師であり、ともに死線をくぐり抜けてきた仲だ。
 頂将軍は酒の入った杯を右手に持つと、天井に向けて掲げた。

「皇帝陛下、二十八度目の生誕を祝って……かんぱーい!」

 頂将軍に続いて、皆一斉に「かんぱーい!」と声を上げる。
 皆、こぞって暁嵐に酒や食事を献上しに行くので、暁嵐の前にはあっという間に長蛇の列ができた。
 暁嵐はしかと相手の目を見て話し、にこやかに献上品を受け取る。
 その上名前まで呼び、感謝の気持ちまで伝えるのだから、臣下たちはたまらないのだ。
 このお方についていこうという、忠誠心が湧き上がる。暁嵐は人を使うのが実に上手かった。
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