後宮の暗殺者~殺すつもりで来たのに溺愛されています~

碧野葉菜

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二、後宮入り

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「……それって、ありなんですか?」
「ありじゃろ、わしが決めたんじゃからの」
「なんだか、皇帝陛下って……やりたい放題、ですわね」

 あっけらかんとした暁嵐に、思わず変な敬語が出る翠玉。
 だが、皇帝である暁嵐が、なにも考えていないはずがなかった。

「そうでもないぞ、これでも気を使っておるんじゃ。後宮内のことはすべて把握できぬゆえ、せめて皇妃たちに寂しい思いはさせぬようにと、平等に回るようにしておる……とはいえ千人近くじゃからの、拾いきれぬ皇妃がおるのも事実じゃ」

 暁嵐は腕を組み、眉尻を下げて話した。
 世間では無類の女好きだと言われている暁嵐だが、そこには彼の、女性への気配りがあったのだ。
 しかし、一人の男に対して、千人の女がいるとは。正気の沙汰ではないと翠玉は思った。
 一年は三百六十五日しかない。毎日別の皇妃を訪れたとして、三年に一度ほどの頻度しか夜伽に恵まれない計算になる。
 そう考えた翠玉は、ホッとしたような残念なような、複雑な気持ちを抱えた。

「そうですか……なら次に私のところへ来られるのは、ずいぶん先になりそうですね」
「いや、今宵も参るぞ」

 翠玉の言葉に被せ気味に答える暁嵐。
 これには翠玉も、申し立てせずにはいられない。

「……たった今、平等に、とおっしゃいましたよね?」
「それは今までの話じゃ、お前は別じゃろ、今日も明日も明後日もその次も、よほど切羽詰まった勤めがあるか、体調でも悪くない限りは毎日来るぞ」

 自信満々に言いきる暁嵐に、翠玉は頭痛がしてきた。
 先ほどの複雑な気持ちを返してほしい。

「いや、毎日はちょっと、たまにでいいです」
「なんじゃ、釣れんのお」

 と、一瞬不服そうにした暁嵐だったが、すぐにあることに気づくと、ニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。

「……たまには来てもよいのだな?」

 その台詞に、翠玉は自分が言ったことを思い返した。
 たまにでいいです。なんて……無意識のうちに、暁嵐を招くような発言をしてしまった。
 これではまるで暁嵐に、たまには会いに来てくださいと言っているようだ。
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