後宮の暗殺者~殺すつもりで来たのに溺愛されています~

碧野葉菜

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二、後宮入り

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「とりあえずその口の利き方をなんとかしろ、でなければ後宮ではやっていけんぞ」
「大きなお世話だこと」
「陛下が選んだ皇妃が不遜だと、陛下の評判にも関わるだろうが」
「うるさいわね、心配ご無用よ」

 小声で口喧嘩をしながら、二人は暁嵐の部屋を出ると、長い階段を降りた。
 しんと静まり返っていて、誰もいない様子だ。
 二人が外に出ると、翠玉は初めて、明るい宮廷を目の当たりにする。とはいえ、正面に見えるのは、背の高い門だ。
 翠玉が入ってきた、後宮側の正門に似ている。門の周りは高い塀で仕切られており、中に入ったが最後、二度と外に出られないような圧を感じる。
 この塀を難なく飛び込えてきた翠玉は別として、後宮入りする女には、ずいぶんの覚悟が必要だろう。

「この先が後宮ね」
「ああ、特別な用事でもない限り、後宮と旺玖院おうきゅういんを行き交うことはできん」
「旺玖院?」
「陛下の城がある、こちら側のことだ」

 司馬宇が振り向いた先を、翠玉もともに振り返る。
 するとそこには、今し方二人が出てきた建物がある。
 真っ赤な屋根が特徴的な三階建ての豪奢な城、これが暁嵐――皇帝陛下の住処だ。

「陛下の城の後ろに、三つ並んだ城があるだろう」

 司馬宇に言われ、翠玉は用意された布靴を履くと、歩いて暁嵐の城の端まで行き、その後ろを覗いた。
 すると司馬宇が言った通り、三つの城が等間隔に、横並びに建っている。
 凛玲から城の配置も知らされていた翠玉は、なるほどこれがねぇと、心の中で呟いた。

「向かって左側の城に、陛下の母君である皇太后様と、女兄妹、皇太女様がお住まいで、中央……陛下の城の真後ろが正室の皇后様のお住まいになっている、そして右側が陛下の父君である上皇様と男兄弟、皇太子様がお住まいの城だ」
「なるほど、皇族とそうでない者たちとで、綺麗に分かれてるわけ」
「元は皇后様は後宮の御殿にお住まいだったが、少し前に意義を唱えられてな、中央に城を建てたのだ」

 よく見てみると、中央の城だけやや小さい。
 後から無理やり作ったと言われれば、なるほどと納得できる。
 みんな三階建てで、竜宮城のような平らな造りをしている。
 しかし屋根の色はそれぞれ違い、皇太后は金、上皇は銀、そして皇后は銅色をしていた。

「ふぅん、じゃあ元々は左右のお城だけだったのね」
「そういうことだ」

 再び門の方を振り向き、歩き出す司馬宇についていく翠玉。
 甲冑姿の門番は司馬宇の姿を見ると、黙って両脇に下がり、門を開いた。
 司馬宇の位の高さと、信頼が伝わってくる一幕だ。
 解放された門の先、明るい後宮は深夜とはまた別の表情を見せている。
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