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第三章、夜伽ってなんだろう。
三
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「以前、この辺りは皇帝の側室が住む後宮でした。煌びやかな建物に着飾った婦人たちが数多く暮らしていたのです」
煌びやかな建物に、着飾った婦人たち――。
童話のお姫様や、竜宮城の乙姫様。そんな綺麗な女の人たちが、お城みたいな家に住んでたのかな。
今は花々に満たされた場所を眺めながら、以前いた女の人たちの暮らしを想像した。
だけどあたしにはまだ、わからないことがたくさんあるみたい。
ソクシツって、前に呉の二人も言ってたけど、なにをする人なのか知らないし、コウキュウなんて言葉も、ここに来て初めて聞いた。
「その……ソクシツ? の方たちは、今は……?」
「いませんよ。今の陛下が解体してしまいましたからね」
「カイタイ……? 全部なくしてしまったということですか?」
「ええ。建物の維持や婦人たちに金がかかるので、すべて不要と潰して、庭園にされたのです。側室たちは皆、尼寺行きか実家に帰されました。どの道、皇帝が代替わりすれば、同じ運命ですしね」
アマデラって言葉も初めて聞いた。
要するに、女の人たちにお金を使うくらいなら、庭園を作った方がいいと考えられたってことかな。
それにしても一声で今まであったものを壊して、作り替えてしまえるなんて、皇帝様の力って本当にすごいんだな。
「しかし、後宮を解体されるとは前代未聞でした。後宮は陛下の癒しだけではなく、子孫繁栄の重大な責務の場でもあったというのに。そのような変わったことをされるので、他国の権力者や昔ながらの臣下たちから奇人変人などと囁かれるのです。ただでさえ仮面つきというだけで敬遠されがちなのに」
眉間に皺を寄せて、ハァとため息をつくミハイロさん。
奇人変人なんて悪い言葉を使ってはいるけれど、その横顔はどことなく柔らかく見える。
嫌いで言ってるんじゃない、大切だから心配になるという感じだ。
「……ミハイロさんは、皇帝様のこと、お好きなんですね」
「……好き、という言い方はいかがなものかと」
横目であたしを見たミハイロさんは、片眉を下げて、なんとも複雑な表情をしている。
「あっ、変でしたか!? ごめんなさい! いや、あの、おかしな意味ではなく……ミハイロさんが、皇帝様のことをお話しする様子が、とても、温かい、感じがしたので……」
表現の仕方を間違えたのかと、焦って顔の前で両手をブンブン振る。
するとミハイロさんは、少し瞼を伏せた。
煌びやかな建物に、着飾った婦人たち――。
童話のお姫様や、竜宮城の乙姫様。そんな綺麗な女の人たちが、お城みたいな家に住んでたのかな。
今は花々に満たされた場所を眺めながら、以前いた女の人たちの暮らしを想像した。
だけどあたしにはまだ、わからないことがたくさんあるみたい。
ソクシツって、前に呉の二人も言ってたけど、なにをする人なのか知らないし、コウキュウなんて言葉も、ここに来て初めて聞いた。
「その……ソクシツ? の方たちは、今は……?」
「いませんよ。今の陛下が解体してしまいましたからね」
「カイタイ……? 全部なくしてしまったということですか?」
「ええ。建物の維持や婦人たちに金がかかるので、すべて不要と潰して、庭園にされたのです。側室たちは皆、尼寺行きか実家に帰されました。どの道、皇帝が代替わりすれば、同じ運命ですしね」
アマデラって言葉も初めて聞いた。
要するに、女の人たちにお金を使うくらいなら、庭園を作った方がいいと考えられたってことかな。
それにしても一声で今まであったものを壊して、作り替えてしまえるなんて、皇帝様の力って本当にすごいんだな。
「しかし、後宮を解体されるとは前代未聞でした。後宮は陛下の癒しだけではなく、子孫繁栄の重大な責務の場でもあったというのに。そのような変わったことをされるので、他国の権力者や昔ながらの臣下たちから奇人変人などと囁かれるのです。ただでさえ仮面つきというだけで敬遠されがちなのに」
眉間に皺を寄せて、ハァとため息をつくミハイロさん。
奇人変人なんて悪い言葉を使ってはいるけれど、その横顔はどことなく柔らかく見える。
嫌いで言ってるんじゃない、大切だから心配になるという感じだ。
「……ミハイロさんは、皇帝様のこと、お好きなんですね」
「……好き、という言い方はいかがなものかと」
横目であたしを見たミハイロさんは、片眉を下げて、なんとも複雑な表情をしている。
「あっ、変でしたか!? ごめんなさい! いや、あの、おかしな意味ではなく……ミハイロさんが、皇帝様のことをお話しする様子が、とても、温かい、感じがしたので……」
表現の仕方を間違えたのかと、焦って顔の前で両手をブンブン振る。
するとミハイロさんは、少し瞼を伏せた。
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