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第二章、お近づきの朝食
十
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「は、はい、知りません」
「これは箸だ、二本を動かして、この先で料理を挟んで食べる」
「うわぁ、そうなんですね……!」
皇帝様は怒らなかった。
それどころか、ちゃんと答えを返して、会話してくれた。
あたしはそれが嬉しくて、ちょっとワクワクしながら、また別の質問をしてみたくなる。
「あの、皇帝様」
「ピケ様、なにかご不便がありましたら、この雷華に――」
言葉を遮られて、あたしは一瞬固まった。
あ、まずい、余計なことしたかなって。
だけど、すぐに雷華さんも言葉を切ってしまった。
不思議に感じて、あたしの隣に立つ雷華さんを見ると、青い顔をして頭を下げていた。
「と思いましたが、余計なお世話でしたね、失礼いたします」
そう言った雷華さんは、気持ち一歩下がる。
その傍らに立つ雹華さんは、細めた目でじとっと雷華さんを見てる。
余計なこと言わないのって、言いたげな顔だ。
呉の二人から皇帝様に視線を戻すと、皇帝様の目が険しくなってるのがわかる。
けっこう距離があるし、仮面のせいで細かい表情までは読み取れないけど、雷華さんを睨んでいたのはわかった。
なにも言ってないのに、目や雰囲気だけで人を動かせるってすごいって思う。
だけどそんな圧の強い目は、あたしには向けられなかった。
瞬きをした目があたしを見た時には、さっき会話をした様子に戻っていた。
「なんだ、ピケ、申してみよ」
「は、はい、皇帝様……これは、なんという食べ物でしょうか?」
皇帝様のお許しが出たから、あたしはチャーハンの右手、斜め前を指差した。
楕円形の白いお皿に、丸くて大きなものがのってる。足みたいなのが四つついていて、こんがり茶色に焼かれてる。
そしてその横には、細長く切られた、きゅうり、ニンジン、もやし……とかと一緒に、茶色い皮みたいなやつが並んでた。
とっても存在感があるこの一品が、あたしは気になって仕方がなかったのだ。
「北京ダックだ」
「ぺきん、だっく……」
「アヒルを丸ごと炉で焼いた料理だ、薄餅……わかるか、薄い餅と書いてバオビンと言う、これにアヒルの皮と野菜をのせて、巻いて食べるのだ」
皇帝様は説明しながら、他の皿にのった、白くて丸い皮を指差した。
ペラペラで薄い、パンの生地みたいだ。
それにしても、アヒルを丸ごと焼いた料理なんて、贅沢すぎて考えられない。
今までまともにお肉を食べたことがないあたしからしたら、その味は未知の領域だった。
「これは箸だ、二本を動かして、この先で料理を挟んで食べる」
「うわぁ、そうなんですね……!」
皇帝様は怒らなかった。
それどころか、ちゃんと答えを返して、会話してくれた。
あたしはそれが嬉しくて、ちょっとワクワクしながら、また別の質問をしてみたくなる。
「あの、皇帝様」
「ピケ様、なにかご不便がありましたら、この雷華に――」
言葉を遮られて、あたしは一瞬固まった。
あ、まずい、余計なことしたかなって。
だけど、すぐに雷華さんも言葉を切ってしまった。
不思議に感じて、あたしの隣に立つ雷華さんを見ると、青い顔をして頭を下げていた。
「と思いましたが、余計なお世話でしたね、失礼いたします」
そう言った雷華さんは、気持ち一歩下がる。
その傍らに立つ雹華さんは、細めた目でじとっと雷華さんを見てる。
余計なこと言わないのって、言いたげな顔だ。
呉の二人から皇帝様に視線を戻すと、皇帝様の目が険しくなってるのがわかる。
けっこう距離があるし、仮面のせいで細かい表情までは読み取れないけど、雷華さんを睨んでいたのはわかった。
なにも言ってないのに、目や雰囲気だけで人を動かせるってすごいって思う。
だけどそんな圧の強い目は、あたしには向けられなかった。
瞬きをした目があたしを見た時には、さっき会話をした様子に戻っていた。
「なんだ、ピケ、申してみよ」
「は、はい、皇帝様……これは、なんという食べ物でしょうか?」
皇帝様のお許しが出たから、あたしはチャーハンの右手、斜め前を指差した。
楕円形の白いお皿に、丸くて大きなものがのってる。足みたいなのが四つついていて、こんがり茶色に焼かれてる。
そしてその横には、細長く切られた、きゅうり、ニンジン、もやし……とかと一緒に、茶色い皮みたいなやつが並んでた。
とっても存在感があるこの一品が、あたしは気になって仕方がなかったのだ。
「北京ダックだ」
「ぺきん、だっく……」
「アヒルを丸ごと炉で焼いた料理だ、薄餅……わかるか、薄い餅と書いてバオビンと言う、これにアヒルの皮と野菜をのせて、巻いて食べるのだ」
皇帝様は説明しながら、他の皿にのった、白くて丸い皮を指差した。
ペラペラで薄い、パンの生地みたいだ。
それにしても、アヒルを丸ごと焼いた料理なんて、贅沢すぎて考えられない。
今までまともにお肉を食べたことがないあたしからしたら、その味は未知の領域だった。
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