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第二章、お近づきの朝食

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「あ、お、お恥ずかしいところを……も、申し訳ありません」
「学習しておるようだな」

 下げたての頭をそっと上げると、皇帝様はもう着席されていた。
 木目が美しい、濃い茶色の、背もたれが高い椅子。
 きっと皇帝様専用の特別な席だ。

「いつまで突っ立っておるのだ、早く座れ」
「ひゃっ!? は、あ、えぇと」
「席は一つしかなかろう」

 どこに座ろうかと慌てふためいてると、皇帝様が指を差して言った。
 それは、皇帝様が座った席の真っ直ぐ先。
 横長いテーブルのもう一つの先端だ。
 こんなにテーブルは広いのに、左右の端っこしか使わないなんて、偉い人の生活ってわからない。
 かといって、意義を唱えるわけにもいかないから、とにかく言われた通りにしなくちゃ。

「あっ、は、はい、し、失礼します……」

 結局まともな挨拶もできないまま、指示された椅子に腰を下ろす。
 こちらの椅子も背もたれが高い。きっといい木を使ってるんだろうけど、お尻は痛くない。ふわふわのクッションみたいなやつが置いてあるから。
 だけど今、椅子よりも気になるのは、目の前の食事だ。
 たくさんの種類があって、量も多い。
 一体、何人分なんだろうって思うくらいだ。
 甘いような、辛いような、食欲をそそる香りが漂ってる。
 どれも初めて見る料理ばかりで、名前がわからない。
 そんな中であたしが、一番最初に注目したのは――。

「す、すごい、金色のご飯……!」

 平らなお皿にこんもり、丸いお山みたいに盛られたご飯。
 赤い粒々はニンジンかな。緑のは、たぶん細かく切ったネギだけど、なんでこんな金色をしているのだろう。
 いい匂いを放つそれを、あたしは姿勢を低くしてマジマジと観察する。
 天井にぶら下がった照明を浴びて、折り重なったご飯粒がキラキラ輝いてる。

「チャーハンだ」
「ちゃ、ちゃーはん……」
「珍しいか?」
「は、はい、金色のご飯なんて初めてです」
「金色……言われてみればそうだな、醤油や卵を使っておるゆえ、このような色合いになるのだろう」

 皇帝様はそう言って、お皿の端に置かれた、スプーンみたいなものを手に取った。
 みたいなって言ったのは、あたしが知ってるスプーンと違ったから。
 皇帝様はそのスプーンみたいなもので、チャーハンを掬うと、ゆっくりと口に運ぶ。
 姿勢を正したまま、綺麗な持ち方で、パクリと一口食べる。
 こんなに静かな部屋でも、噛んでる音がしない。ほっぺに米粒もつかない。
 できるかな、あたしに。こんなに上品な食べ方。
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