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第一章、初めて会った日

十四

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「ユニ族の方はみんなお若く見えるのですか?」
「他の国の方を知らなかったので、よくわかりませんが……壮国の方はとても大人っぽく見えます」

 へーそうなのねって、二人は顔を見合わせて頷く。
 そんな二人の同じ顔が、だんだん二つ、三つ、四つに分かれて見えてくる。
 視界と一緒に頭もぼんやりしてくる。
 
「お召し物はまた仕立てておきますので、先に湯浴みを……」

 どちらかの話し声が、耳を通り抜けてゆく。
 うつらうつら、あたしは気づくと船を漕いでいた。

「お疲れになられたでしょう、今日のところはお休みください」
「ごゆるりと、また明日、迎えに上がりますね」

 あたしの様子に気づいた二人が、優しい言葉を残して、そっと部屋を出ていった。
 おやすみを言うこともできず、あたしは瞼を擦りながら、ゆらゆらする頭でベッドに向かう。
 そうだ、靴は脱がなきゃと、横着して足だけで靴を脱ぎ捨てる。
 それから全身の力を抜いて、目の前の白い海に身を投げる。
 そしたらボフッと音がして、適度な弾力があたしを迎えてくれた。
 いい匂いがする。
 皇帝様もそうだったけど、壮の人はなにか香りづけでもしてるのかな?
 白い枕とシーツに寝転がり、ふわふわに柔らかい布団を被ると、温かくって、さらにいい匂いが広がる。
 優しくて、ほんのり甘い匂いだ。
 皇帝様とは違う。
 皇帝様はもっと、すっと頭が冴えるような、澄んだ水みたいな匂いがした。
 こんな気持ちのいい寝床は初めてだ。
 おばあちゃんがいた頃は、ちゃんとベッドはあったけど。
 おばあちゃんが亡くなって、あたしに力がないってわかってからは、固い地面に薄い敷布団、かけ布団や枕も穴だらけだった。
 ユニは日中は暑いけど、夜はすごく冷える。
 だから寒いし身体は痛いしで、まともに眠れた記憶がない。
 それに比べて、このベッドは天国だ。
 そんなことを思いながら、あたしはあっという間に夢の世界に落ちていった。
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