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薔薇の耽血
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――――めまぐるしく日々は過ぎ、雪溶けを迎え、桜の開花する季節となった。
四月、冬の寒さに別れを告げ、肌に心地よい春風が訪れると、学生たちは皆一つ大人になった。
学年が上がることを祝う式が終わると、生徒たちは仲のいい友人同士で会話を楽しみながら帰路に向かう。
そんな中、新しくなったクラスの教室で、窓際の席に座るみちるがいた。
彼女は机に頬杖をつき、物憂げな表情で外に目をやっていた。
「よお、みちる。なんだよ、親友……好きな子に彼氏ができたからって拗ねてんのか?」
近寄り難い空気をもろともせず、声をかけたのは圭太だ。
「うるさいわね、ほっといてよ」
「……あのさぁ、みちるって、女の子しかダメなのか?」
「そんなの、まだ十六年しか生きてないからわからないわよ」
「だよな!? ……ならまだ俺にもチャンスが」
「何か言った?」
「いや、こっちの話」
圭太は一つ咳払いをすると、みちるの前の席に腰をもたれされて立った。
「なんだか機嫌がいいんじゃない?」
「お、わかる? 同胞っつうか、仲間っつうか……可愛いコウモリの弟たちができて、さ」
「何それ」
いつかみちるに本当の自分を話せる日が来たらいいなと思いながら、圭太は笑った。
「……綺麗だな」
「そうね。何もないところだけど、澄んだ空気とこの景色だけはどこにも負けないわ」
みちると圭太は、青空の下に広がる桜のキャンパスを眺めていた。
四月、冬の寒さに別れを告げ、肌に心地よい春風が訪れると、学生たちは皆一つ大人になった。
学年が上がることを祝う式が終わると、生徒たちは仲のいい友人同士で会話を楽しみながら帰路に向かう。
そんな中、新しくなったクラスの教室で、窓際の席に座るみちるがいた。
彼女は机に頬杖をつき、物憂げな表情で外に目をやっていた。
「よお、みちる。なんだよ、親友……好きな子に彼氏ができたからって拗ねてんのか?」
近寄り難い空気をもろともせず、声をかけたのは圭太だ。
「うるさいわね、ほっといてよ」
「……あのさぁ、みちるって、女の子しかダメなのか?」
「そんなの、まだ十六年しか生きてないからわからないわよ」
「だよな!? ……ならまだ俺にもチャンスが」
「何か言った?」
「いや、こっちの話」
圭太は一つ咳払いをすると、みちるの前の席に腰をもたれされて立った。
「なんだか機嫌がいいんじゃない?」
「お、わかる? 同胞っつうか、仲間っつうか……可愛いコウモリの弟たちができて、さ」
「何それ」
いつかみちるに本当の自分を話せる日が来たらいいなと思いながら、圭太は笑った。
「……綺麗だな」
「そうね。何もないところだけど、澄んだ空気とこの景色だけはどこにも負けないわ」
みちると圭太は、青空の下に広がる桜のキャンパスを眺めていた。
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