131 / 142
薔薇の耽血
11
しおりを挟む
「聞いてよ、圭太。穏花ったらまだ寝ぼけてるみたいで、黒川君か、みよちゃんって子を探してるみたい」
みちるにそう言われると、圭太は一瞬キョトンとした後、穏花を見て豪快に笑った。
「ははっ! そうなんだ? 起きてくださいよ穏花姫~、そんな生徒聞いたことありませんよーぉ」
おどけるように言う圭太に、穏花は身体を硬めた。
鼓動が少しずつ、早くなり、耳に響いていくのがわかる。
担任教師が教室に入り朝のホームルームが始まっても、美汪はまだ来なかった。
出席を取る際、黒川の名字は呼ばれなかった。
礼が終わると、穏花は教室から出て行く担任を急いで追い、声をかけた。
「あのっ、先生!」
「うん? どうした萌木」
「あ、あの……黒川美汪、君は、今日は休み、なんでしょうか? なぜか、出席を取る時も名前を呼ばれなかったですけど……」
若い男の担任教師は怪訝そうに眉を寄せた。
「……何言ってるんだ、うちのクラスに……いや、この校内にそんな名前の人間はいないぞ。くだらない冗談を言ってないで、しっかり勉強しなさい」
そう言って、教師は穏花に背を向けると廊下を歩いて行った。
無慈悲に放たれたその言葉は穏花の胸を冷たく貫き、地面に根っこが生えたように、そこから動けなくなった。
穏花は出口のない暗い迷路に迷い込んだようだった。
みちるにそう言われると、圭太は一瞬キョトンとした後、穏花を見て豪快に笑った。
「ははっ! そうなんだ? 起きてくださいよ穏花姫~、そんな生徒聞いたことありませんよーぉ」
おどけるように言う圭太に、穏花は身体を硬めた。
鼓動が少しずつ、早くなり、耳に響いていくのがわかる。
担任教師が教室に入り朝のホームルームが始まっても、美汪はまだ来なかった。
出席を取る際、黒川の名字は呼ばれなかった。
礼が終わると、穏花は教室から出て行く担任を急いで追い、声をかけた。
「あのっ、先生!」
「うん? どうした萌木」
「あ、あの……黒川美汪、君は、今日は休み、なんでしょうか? なぜか、出席を取る時も名前を呼ばれなかったですけど……」
若い男の担任教師は怪訝そうに眉を寄せた。
「……何言ってるんだ、うちのクラスに……いや、この校内にそんな名前の人間はいないぞ。くだらない冗談を言ってないで、しっかり勉強しなさい」
そう言って、教師は穏花に背を向けると廊下を歩いて行った。
無慈悲に放たれたその言葉は穏花の胸を冷たく貫き、地面に根っこが生えたように、そこから動けなくなった。
穏花は出口のない暗い迷路に迷い込んだようだった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蛇に祈りを捧げたら。
碧野葉菜
キャラ文芸
願いを一つ叶える代わりに人間の寿命をいただきながら生きている神と呼ばれる存在たち。その一人の蛇神、蛇珀(じゃはく)は大の人間嫌いで毎度必要以上に寿命を取り立てていた。今日も標的を決め人間界に降り立つ蛇珀だったが、今回の相手はいつもと少し違っていて…?
神と人との理に抗いながら求め合う二人の行く末は?
人間嫌いであった蛇神が一人の少女に恋をし、上流神(じょうりゅうしん)となるまでの物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる