125 / 142
薔薇の耽血
5
しおりを挟む
僅かな空中遊泳の後、美汪が着地したのは王域で作り上げられた巨城の屋上だった。
「フルムーンの夜は特別なことが起きると言われている。今夜そうであることを、あえて運命的だと思いたい」
そこから見えるものは、真っ暗な空と月のみである。
穏花は抱きかかえられた体勢のまま、冷たい石の地面にそっと降ろされた。
「服を脱いで」
「――エッ!?」
美汪の口から出たとは思えない台詞に、穏花は相変わらず素直な反応を示した。
「えっ、え!? い、いいきなりどうしたの!?」
「僕のことが好きなんでしょ? なら我慢しなよ」
「いやっ、す、好きだけど、好きだから嫌というか、恥ずかしいというか、私ペチャパイだし、今日の下着可愛くないし……」
このシリアスな雰囲気で、なぜそんな発想が浮かぶのかと疑問な美汪だったが、的外れな言動をする穏花も可愛いと思ってしまう自身にあきれた。
仕方がない、愛してしまったのだ。
人を好きになるのは理屈ではなく、もはや本能だと美汪は身を持って知った。
「……恐らくは、棘病を完治させる方法を見つけたんだ。そのために必要なことなんだよ」
「――えっ!? ほ、本当に? そう、なんだ……!?」
「何? いやらしい展開でも期待した?」
「は、ひやふえへあえあ……」
からかうようにニヒルな笑みを浮かべた美汪は憎らしいほど色っぽく、穏花は顔から火が出る勢いで解読不可能な文字を連ねていた。
「下着はつけたままでかまわない、王域で守られているから寒くはないはずだよ」
「う、うん、わかった……!」
穏花は意を決して、美汪に言われた通り下着以外の衣類を脱ぎ払った。
「フルムーンの夜は特別なことが起きると言われている。今夜そうであることを、あえて運命的だと思いたい」
そこから見えるものは、真っ暗な空と月のみである。
穏花は抱きかかえられた体勢のまま、冷たい石の地面にそっと降ろされた。
「服を脱いで」
「――エッ!?」
美汪の口から出たとは思えない台詞に、穏花は相変わらず素直な反応を示した。
「えっ、え!? い、いいきなりどうしたの!?」
「僕のことが好きなんでしょ? なら我慢しなよ」
「いやっ、す、好きだけど、好きだから嫌というか、恥ずかしいというか、私ペチャパイだし、今日の下着可愛くないし……」
このシリアスな雰囲気で、なぜそんな発想が浮かぶのかと疑問な美汪だったが、的外れな言動をする穏花も可愛いと思ってしまう自身にあきれた。
仕方がない、愛してしまったのだ。
人を好きになるのは理屈ではなく、もはや本能だと美汪は身を持って知った。
「……恐らくは、棘病を完治させる方法を見つけたんだ。そのために必要なことなんだよ」
「――えっ!? ほ、本当に? そう、なんだ……!?」
「何? いやらしい展開でも期待した?」
「は、ひやふえへあえあ……」
からかうようにニヒルな笑みを浮かべた美汪は憎らしいほど色っぽく、穏花は顔から火が出る勢いで解読不可能な文字を連ねていた。
「下着はつけたままでかまわない、王域で守られているから寒くはないはずだよ」
「う、うん、わかった……!」
穏花は意を決して、美汪に言われた通り下着以外の衣類を脱ぎ払った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。
蛇に祈りを捧げたら。
碧野葉菜
キャラ文芸
願いを一つ叶える代わりに人間の寿命をいただきながら生きている神と呼ばれる存在たち。その一人の蛇神、蛇珀(じゃはく)は大の人間嫌いで毎度必要以上に寿命を取り立てていた。今日も標的を決め人間界に降り立つ蛇珀だったが、今回の相手はいつもと少し違っていて…?
神と人との理に抗いながら求め合う二人の行く末は?
人間嫌いであった蛇神が一人の少女に恋をし、上流神(じょうりゅうしん)となるまでの物語。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる