121 / 142
薔薇の耽血
1
しおりを挟む
怖いくらい、満月の美しい夜だった。
何か、普通ではないことが起きるような、期待と物悲しさを孕む――。
穏花はうっすらと、瞼を持ち上げた。
遠くの天井に飾られた豪華なシャンデリアには明かりがついておらず、広々としたこの洋室を照らすのはカーテンを閉められていない窓から射し込む月の光だけだった。
また閉じそうになる目を手で擦りながら、穏花はゆっくりと身体を起こした。
――私、あれから、どうして……?
覚醒しきらない頭で今までのことを思い出そうとした穏花は、ふと近くに気配を感じ、視線をやった。
するとそこにあった光景に、目玉を落っことしそうなほど驚く。
――み、美汪……っ!?
今座っている穏花の隣には、横になっている美汪がいたのだ。しかもあの切れ長の目を閉じ、枕に頭を預け、安らかに眠っていたのである。
穏花は知らないうちに、キングサイズのベッドで美汪と二人寝ていたのだった。
中世ヨーロッパのお妃様に似合うような、贅沢なフリルとレースに薔薇の刺繍が施された柔らかな寝具。
美汪が起きないのをいいことに、穏花はその綺麗な寝顔を存分に堪能した。指通りのよさそうな髪に凛々しい眉、くっきりとした二重に長いまつ毛、高い鼻、その下にある薄い唇からは……少し尖った歯が覗いていた。
「……ん」
息を漏らし、やや眉を寄せると、徐々に瞼が持ち上がっていく。
その隙間から露になったのは、濃い紅色の瞳だった。
何か、普通ではないことが起きるような、期待と物悲しさを孕む――。
穏花はうっすらと、瞼を持ち上げた。
遠くの天井に飾られた豪華なシャンデリアには明かりがついておらず、広々としたこの洋室を照らすのはカーテンを閉められていない窓から射し込む月の光だけだった。
また閉じそうになる目を手で擦りながら、穏花はゆっくりと身体を起こした。
――私、あれから、どうして……?
覚醒しきらない頭で今までのことを思い出そうとした穏花は、ふと近くに気配を感じ、視線をやった。
するとそこにあった光景に、目玉を落っことしそうなほど驚く。
――み、美汪……っ!?
今座っている穏花の隣には、横になっている美汪がいたのだ。しかもあの切れ長の目を閉じ、枕に頭を預け、安らかに眠っていたのである。
穏花は知らないうちに、キングサイズのベッドで美汪と二人寝ていたのだった。
中世ヨーロッパのお妃様に似合うような、贅沢なフリルとレースに薔薇の刺繍が施された柔らかな寝具。
美汪が起きないのをいいことに、穏花はその綺麗な寝顔を存分に堪能した。指通りのよさそうな髪に凛々しい眉、くっきりとした二重に長いまつ毛、高い鼻、その下にある薄い唇からは……少し尖った歯が覗いていた。
「……ん」
息を漏らし、やや眉を寄せると、徐々に瞼が持ち上がっていく。
その隙間から露になったのは、濃い紅色の瞳だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
猫の罪深い料理店~迷子さんの拠り所~
碧野葉菜
キャラ文芸
アラサー真っ只中の隅田川千鶴は仕事に生きるキャリアウーマン。課長に昇進しできない男たちを顎で使う日々を送っていた。そんなある日、仕事帰りに奇妙な光に気づいた千鶴は誘われるように料理店に入る。
しかしそこは、普通の店ではなかった――。
麗しの店主、はぐれものの猫宮と、それを取り囲む十二支たち。
彼らを通して触れる、人と人の繋がり。
母親との確執を経て、千鶴が選ぶ道は――。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
蛇に祈りを捧げたら。
碧野葉菜
キャラ文芸
願いを一つ叶える代わりに人間の寿命をいただきながら生きている神と呼ばれる存在たち。その一人の蛇神、蛇珀(じゃはく)は大の人間嫌いで毎度必要以上に寿命を取り立てていた。今日も標的を決め人間界に降り立つ蛇珀だったが、今回の相手はいつもと少し違っていて…?
神と人との理に抗いながら求め合う二人の行く末は?
人間嫌いであった蛇神が一人の少女に恋をし、上流神(じょうりゅうしん)となるまでの物語。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる