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薔薇の耽血
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怖いくらい、満月の美しい夜だった。
何か、普通ではないことが起きるような、期待と物悲しさを孕む――。
穏花はうっすらと、瞼を持ち上げた。
遠くの天井に飾られた豪華なシャンデリアには明かりがついておらず、広々としたこの洋室を照らすのはカーテンを閉められていない窓から射し込む月の光だけだった。
また閉じそうになる目を手で擦りながら、穏花はゆっくりと身体を起こした。
――私、あれから、どうして……?
覚醒しきらない頭で今までのことを思い出そうとした穏花は、ふと近くに気配を感じ、視線をやった。
するとそこにあった光景に、目玉を落っことしそうなほど驚く。
――み、美汪……っ!?
今座っている穏花の隣には、横になっている美汪がいたのだ。しかもあの切れ長の目を閉じ、枕に頭を預け、安らかに眠っていたのである。
穏花は知らないうちに、キングサイズのベッドで美汪と二人寝ていたのだった。
中世ヨーロッパのお妃様に似合うような、贅沢なフリルとレースに薔薇の刺繍が施された柔らかな寝具。
美汪が起きないのをいいことに、穏花はその綺麗な寝顔を存分に堪能した。指通りのよさそうな髪に凛々しい眉、くっきりとした二重に長いまつ毛、高い鼻、その下にある薄い唇からは……少し尖った歯が覗いていた。
「……ん」
息を漏らし、やや眉を寄せると、徐々に瞼が持ち上がっていく。
その隙間から露になったのは、濃い紅色の瞳だった。
何か、普通ではないことが起きるような、期待と物悲しさを孕む――。
穏花はうっすらと、瞼を持ち上げた。
遠くの天井に飾られた豪華なシャンデリアには明かりがついておらず、広々としたこの洋室を照らすのはカーテンを閉められていない窓から射し込む月の光だけだった。
また閉じそうになる目を手で擦りながら、穏花はゆっくりと身体を起こした。
――私、あれから、どうして……?
覚醒しきらない頭で今までのことを思い出そうとした穏花は、ふと近くに気配を感じ、視線をやった。
するとそこにあった光景に、目玉を落っことしそうなほど驚く。
――み、美汪……っ!?
今座っている穏花の隣には、横になっている美汪がいたのだ。しかもあの切れ長の目を閉じ、枕に頭を預け、安らかに眠っていたのである。
穏花は知らないうちに、キングサイズのベッドで美汪と二人寝ていたのだった。
中世ヨーロッパのお妃様に似合うような、贅沢なフリルとレースに薔薇の刺繍が施された柔らかな寝具。
美汪が起きないのをいいことに、穏花はその綺麗な寝顔を存分に堪能した。指通りのよさそうな髪に凛々しい眉、くっきりとした二重に長いまつ毛、高い鼻、その下にある薄い唇からは……少し尖った歯が覗いていた。
「……ん」
息を漏らし、やや眉を寄せると、徐々に瞼が持ち上がっていく。
その隙間から露になったのは、濃い紅色の瞳だった。
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