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あふれる想い
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「もう三日間お預けだ、君の血だけが欲しくてたまらない、僕はどうかしてしまった」
首筋に顔を埋めながら訴える美汪に、穏花は歓喜の涙を落としその広い背中を思いきり抱きしめた。
「美汪、好き、大好き、全部あげるから、他の女の人に、触らないで……」
「――言われなくても……ッ」
切羽詰まったように告げて、美汪は穏花のコートとセーターの襟を強く引っ張ると、露になる白い首筋に牙を突き立てた。
もはや、穏花に痛みなどまったくなかった。
それどころか、美汪が入り込んだ傷口が甘美な熱を持ち、快楽が全身を駆け抜けてゆくようだった。
美汪は夢中で穏花の血を飲んだ。
今までで最も美味に感じた。
「……美、汪」
――穏花――
吸血を終え、美汪が呼びかけに応えようとした時だった。
「う、ぐっ、う、うぅ……!」
穏花が手で口を押さえ、低い声で呻き始めたのだ。
「穏花!?」
胸を押さえるように前のめりになりながら、穏花は大量の薔薇を吐き出した。
地面に散らばる花弁は、どれも真紅に近い色に染まっていた。
穏花は内臓すべてが焼かれるような激痛と呼吸困難に襲われ、泣きながら霞みゆく目に美汪を映していた。
「い、たい、た、すけ、み、お……」
「穏花、穏花!!」
意識を失い倒れる穏花を、美汪は腕に抱き懸命に呼びかけたが、反応はなかった。
なぜ三日間も彼女の血を吸わなかったのか、そのせいで一気に病状が悪化したのではと、美汪はこの上なく後悔し自分を責めた。
しかし、そんなことは大した問題ではなかった。
所詮、棘病の進行を食い止める行為など、気休め程度にしかならなかったのだ。
目に見えないところで病は穏花の身体を蝕み続け、たまたまこのタイミングで末期を迎えたに過ぎなかった。
人間が吸血族を滅ぼし、吸血族が人間を呪い、その因果は何の罪もない二人を破滅へと導いていた。
首筋に顔を埋めながら訴える美汪に、穏花は歓喜の涙を落としその広い背中を思いきり抱きしめた。
「美汪、好き、大好き、全部あげるから、他の女の人に、触らないで……」
「――言われなくても……ッ」
切羽詰まったように告げて、美汪は穏花のコートとセーターの襟を強く引っ張ると、露になる白い首筋に牙を突き立てた。
もはや、穏花に痛みなどまったくなかった。
それどころか、美汪が入り込んだ傷口が甘美な熱を持ち、快楽が全身を駆け抜けてゆくようだった。
美汪は夢中で穏花の血を飲んだ。
今までで最も美味に感じた。
「……美、汪」
――穏花――
吸血を終え、美汪が呼びかけに応えようとした時だった。
「う、ぐっ、う、うぅ……!」
穏花が手で口を押さえ、低い声で呻き始めたのだ。
「穏花!?」
胸を押さえるように前のめりになりながら、穏花は大量の薔薇を吐き出した。
地面に散らばる花弁は、どれも真紅に近い色に染まっていた。
穏花は内臓すべてが焼かれるような激痛と呼吸困難に襲われ、泣きながら霞みゆく目に美汪を映していた。
「い、たい、た、すけ、み、お……」
「穏花、穏花!!」
意識を失い倒れる穏花を、美汪は腕に抱き懸命に呼びかけたが、反応はなかった。
なぜ三日間も彼女の血を吸わなかったのか、そのせいで一気に病状が悪化したのではと、美汪はこの上なく後悔し自分を責めた。
しかし、そんなことは大した問題ではなかった。
所詮、棘病の進行を食い止める行為など、気休め程度にしかならなかったのだ。
目に見えないところで病は穏花の身体を蝕み続け、たまたまこのタイミングで末期を迎えたに過ぎなかった。
人間が吸血族を滅ぼし、吸血族が人間を呪い、その因果は何の罪もない二人を破滅へと導いていた。
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