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あふれる想い
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「なあ、穏花、今からでも遅くない、こんな奴はやめて、俺に」
「やめて、圭太」
ようやく発された穏花の声に、美汪も我に返った。
「美汪を悪く言わないで……圭太のこと、嫌いになりたくないから……私の大事な、友達なんだもん」
圭太は脳内に閃光が走った気がした。
幾分か落ち着きを取り戻し、目をやった先にいた穏花は、怪我をし、服を汚し、涙を溜めながら、それでも憎悪を感じさせない、ただ悲しみと親しみを込めた目で彼を見ていた。
圭太の鈍い紫色の瞳から、雫が一筋、頬を伝い落ちた。
「穏花……俺は、なんてことを……」
正気を取り戻した圭太は、眼前の惨状に後悔し、激しい自責の念に囚われた。
その時、遠くから羽ばたきやって来た二匹のコウモリが、圭太の頭を牙でつついた。
「いっ、痛て、痛てっ!」
「アベル君、ヨハン君、やめて、もう大丈夫だから」
穏花に制止された二人は、渋々攻撃をやめると人間の姿に戻った。
それを見た圭太は、目を疑った後で、彼らが同胞であることを理解した。
「……お前らって、もしかして、俺と同じ混血、か?」
「そうだ、美汪に感謝するんだな。理性飛ばして思いっきり血なんか吸えばあの姉ちゃんは命が危なかっただろうし、あんたは吸血族の体質に傾いて二度と人間らしい生活ができなくなるとこだったんだぜ」
「なっ……」
「うん。我慢できずに血を吸ってしまった僕たちがこの有様だから、間違いないよ」
隣に立ち自分を見据えながら言う二人に、圭太は衝撃を受けた。
高校生くらいの育った身体で本能のまま吸い込んでしまえば、穏花の致死量を越えていた可能性が高い。
アベルとヨハンは幼少期に吸血し、量が少なかったため、誰かの命を奪うことはなかったが。
「やめて、圭太」
ようやく発された穏花の声に、美汪も我に返った。
「美汪を悪く言わないで……圭太のこと、嫌いになりたくないから……私の大事な、友達なんだもん」
圭太は脳内に閃光が走った気がした。
幾分か落ち着きを取り戻し、目をやった先にいた穏花は、怪我をし、服を汚し、涙を溜めながら、それでも憎悪を感じさせない、ただ悲しみと親しみを込めた目で彼を見ていた。
圭太の鈍い紫色の瞳から、雫が一筋、頬を伝い落ちた。
「穏花……俺は、なんてことを……」
正気を取り戻した圭太は、眼前の惨状に後悔し、激しい自責の念に囚われた。
その時、遠くから羽ばたきやって来た二匹のコウモリが、圭太の頭を牙でつついた。
「いっ、痛て、痛てっ!」
「アベル君、ヨハン君、やめて、もう大丈夫だから」
穏花に制止された二人は、渋々攻撃をやめると人間の姿に戻った。
それを見た圭太は、目を疑った後で、彼らが同胞であることを理解した。
「……お前らって、もしかして、俺と同じ混血、か?」
「そうだ、美汪に感謝するんだな。理性飛ばして思いっきり血なんか吸えばあの姉ちゃんは命が危なかっただろうし、あんたは吸血族の体質に傾いて二度と人間らしい生活ができなくなるとこだったんだぜ」
「なっ……」
「うん。我慢できずに血を吸ってしまった僕たちがこの有様だから、間違いないよ」
隣に立ち自分を見据えながら言う二人に、圭太は衝撃を受けた。
高校生くらいの育った身体で本能のまま吸い込んでしまえば、穏花の致死量を越えていた可能性が高い。
アベルとヨハンは幼少期に吸血し、量が少なかったため、誰かの命を奪うことはなかったが。
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