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あふれる想い

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「……俺はさあ、穏花、親から、昔話を聞いて、育った……自分も、吸血族の血が、少し、入っているって、だから、前兆があれば、身を隠さなきゃ、ならねえって……おかしいだろ、何も悪いことなんか、してねえのに、なんで、俺たちが、逃げ隠れしなきゃ、なんねえんだ、なあ、そうだろ、お前もそう、思うよなぁ……」

 圭太は吸血族と人間のクォーターであった。そのため吸血族の血は薄く、今まで前兆など微塵もなかった。
 しかし、吸血族の血の濃さを誇る美汪が現れ、穏花が棘病を患った……吸血族に深くまつわるこの二点がすぐ側で起きたことにより、圭太の中に眠っていた血が呼び起こされてしまったのだ。

 圭太はゆらり、立ち上がると、穏花を視界に捕らえようと必死に目玉を動かしていた。
 
「穏花、頼むよ……血を吸わせてくれ、一度でいいんだ、もう、あいつに、黒川に、やってるんだろ? なら、いいだろ? 抵抗だって、ないよな?」

 信じ難い台詞に、穏花は砂利道を後退りした。
 圭太であって圭太でない。
 気が触れたように“血”のことしか考えられなくなった圭太は、まさに化け物のようであった。
 迫り来る圭太に、穏花は震撼し、生命の危機を察知した。
 こんなことは、美汪には一度も思わなかった。それはどれだけ乱れようとも、命を奪うまではしないという美汪の理知をどこかに感じていたからだ。
 しかし今目の前にいるのは、そんな根底理性のない、肉に飢えた獣であった。
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