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あふれる想い

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 ――ヨハンの言ったことは、美汪の穏花への気持ちを指していた。
 しかし、そんなはずはない、と、穏花は自分の中で必死に否定していた。
 淡い期待を抱いて、もしまた打ち砕かれたら……? きっと今度こそ立ち直れないと、ヨハンの言葉を満足に受け取るのが怖かったのだ。

「……美汪がお姉ちゃんにどんな風に接してるかはわからないけど、悪戯に人を弄んだりしないと思うよ。一度、ちゃんと話してみた方がいいんじゃない、かな?」

 穏花はようやく、ヨハンの話を聞き入れることができた。
 
 ――そうだ……逃げずにきちんと、話してみよう。冷たくされるの怖いけど、勇気を出して、美汪と向き合ってみたい。

 穏花は臆病な自身を奮い立たせた。

「うん、私……行く。美汪に会いたい」
「本当!? やった! ありがとうお姉ちゃん!」

 ヨハンが飛び上がりそうな勢いで喜んだ時だった。
 ベッド横のテーブルに置かれたスマートフォンが、音を立てて振動した。

「あ、電話みたい、ちょっと待ってね」

 二人に一言告げると、穏花は急いでスマートフォンを手にした。
 その画面に映った発信者の名前は――『圭太』――。

「もしもし、圭太?」
『ああ、穏花か。……大丈夫か? しばらく学校に来てないって、みちるから聞いてさ』
「うん、少しだるいくらいだから大丈夫だよ……あれ? 聞いて、って……圭太も学校休んでるの?」
『おお、ちょっと、な』

 電話口の向こうにいる彼は、いつもと違い歯切れの悪い話し方だった。
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