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あふれる想い

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「コーエンは別として、美汪が人間を城に連れて来ること自体、初めてだったしな」
「棘病になった人は? 研究をしてるってコーエンさんが言ってたけど」
「棘病についてはコーエンが主にやってるから、美汪はほぼノータッチだ。美汪が直々に儀式をしたり血を吸ってやるなんてことはまずねえよ、城に住んでる混血の血だって手をつけたことねえのに……なのにあんたのは飲んでるんだろ? 意味わかんねえ」

 アベルとヨハンはコーエンから穏花についてある程度のことを聞いていた。

「美汪は冷たく見えて博愛主義だと思うんだ。だから僕たち混血にも平等に接してくれて……誰か一人だけを特別扱いするってこと自体が、信じられないんだよ」
「……特別、扱い……」
「そうだよ。ねえ、お姉ちゃん、お願いだから、今からまたお城に来てくれない? 僕らじゃダメでも、きっとお姉ちゃんが来たら美汪は部屋から出て来てくれる気がするんだ」

 ヨハンの濡れたようなコバルトブルーの瞳に懇願されたが、穏花は複雑な心境であった。

「……ごめんね、私が行っても、役に立てないと思う」
「どうして?」
「美汪が私の血を吸ってるのは、私の血が……特段に美味しいから、なんだ。最初の頃にそう言ってたから。ただ、味が好きってだけなんだと思う。だから私は、特別でもなんでもないの……期待に応えられなくて、ごめんね」

 その台詞を聞いた美少年二人は顔を見合わせた。

「ヨハン……血の味に違いなんて感じたことあるか?」
「う、ううん、ない……誰でも同じだったよ」
「俺たちは何人も血を飲んだことがあるんだ。そのせいで吸血族の方に体質が傾いちまったんだけど……。そんな俺らが言うんだから間違いねえよ」
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