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あふれる想い

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 ――あれから三日、穏花は体調を崩し、家に閉じこもっていた。

 本当は学校に行けないほど具合が悪かったわけではないが、どうしても美汪に会わせる顔が見当たらず、部屋に引きこもってしまった。
 症状は微熱と身体のだるさ、軽い目眩。
 これが棘病のせいなのか、単なる風邪なのか、美汪のことを考えすぎた精神面から来る知恵熱なのか、原因は定かではなかった。
 花弁は昨日、昼間に一枚、そして今朝に、三枚吐いた。美汪に血を吸われず数日経過したからだろう、枚数が増え、しかも淡いピンクのような色がつき始めた。
 しかし穏花は、美汪から「進行が遅かった」と言われていたため、それを信じきり、きっと大丈夫だろうと悠長にかまえてしまった。

 今の穏花の心はすべて美汪のものだった。
 不治の病への恐怖さえ、入り込む隙間がないほどに。
 美汪の吸血痕が薄くなると心細くなり、もっと深く刻んでほしいと彼の名残を指でなぞった。

 学校を休んだ穏花は、連日、美汪に渡された書物を読むことに没頭していた。
 古くに作られたものなのだろう、硬い表紙に書かれた文字はやや霞んでおり、中のページには黄ばみが見られた。
 それでも折れや破れはなく、美汪がどれだけ丁寧に扱っていたのかがよくわかった。

 不器用な穏花は何をするにも人より時間がかかるため、本を読むのも苦手で、相当な時間を要する。
 そんな穏花が一言一句誤らないように、噛みしめるように文字を追っていた。

 そこに書かれていたのは、吸血族、そして雑食族と呼ばれた者たちの真実の歴史だった。
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