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あふれる想い

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「……圭太……あの軽薄そうな奴のことだよね」
「あ、う、うん? 今時な感じだからちょっと軽そうには見えるかも? でも明るくて優しいし、すごくいい――」

 友達……
 そう続けようとした穏花の唇は、張りついたように動かなくなった。
 
 空気が凍る。
 先ほどまでの穏やかさが嘘のように、目の前の美汪が切れるような冷たい視線を向けていることに穏花はようやく気がついた。

 この睥睨のすべてを込めたような眼差しは、一体いつぶりだろう。
 穏花が美汪の正体を知った、あの日以来かもしれない。

「そうか、君は、あいつのことが好きなんだよね」

 俯き、独り言のように呟く美汪。
 穏花は激しく否定したかったが、巨山のような威圧感に声を発することすらできず、微かに身体を震えさせるだけだった。

 顔を上げた美汪の瞳は鮮血より紅く染まり、憤怒の熱が燃え盛るまま穏花を捕らえていた。
 穏花は意図せず、一歩、足を引こうとした。
 ――その時。
 美汪の手に思いきり肩を突かれ、大理石の床に派手に背中から倒れ込んだ。

「ご苦労なことだね、生き延びたいがために好きでもない男に血を吸われに来て」

 地に横たわる穏花を見下ろしながら、美汪はあえて傷つく言葉を選び浴びせた。

「……ち、がう、の、美汪……お、怒らな」
「うるさい、黙れ」

 美汪の言葉は氷の剣となり穏花を貫く。
 しかし、次の美汪の行動は、その冷たささえ、溶かすこととなる。
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