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吸血族の城
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「純血狩りはひどいものでした。今から六十年以上前……私はそれを目の当たりにしました。土は吸血族たちの血で赤黒くしめり、道は息絶えた彼らの死骸で埋め尽くされました。そして辺り一面、ほのかに甘く五感を刺激するようなかぐわしい香りが充満したのです。――吸血族たちの血液は、薔薇のような匂いがしました」
美汪が持つ香りは、純血の吸血族に共通したものでもあった。
折り重なる亡骸に、優雅な匂い。その矛盾が生み出しだ異様な光景……コーエンは当時に思いを馳せていた。
「吸血族の虐殺……それからです、花を吐く奇病が現れたのは。人間たちは『吸血鬼の呪いだ』とのたまいました。真相はわかりません。癌の起源が明確でないように、ある日突然昨日まで健康だった人間が花弁を吐く……確かにそれは、ただ静かに暮らしていた彼らが、自らの血の海に最期にかけた呪いだったのかもしれません」
穏花はコーエンの物語の中に入り込んだ気がしていた。
自身が当事者である今、疑う余地などなかった。
「私は十六歳の時……吸血族の女性と恋に落ちました。もちろん許されるはずがありません。当時、すでに吸血族は忌み嫌われる弾圧対象でしたから。誰にも内緒で彼女の家に通いました。しかしついに政府にそれがバレ、私は軟禁されました。どうにか牢屋から逃げ出し、彼女の元へ辿り着いた時には……もう……、彼女は胸に十字架を突き立てられ、朽ちていました。……私はその十字架を持ち、監視の目を掻い潜り、命からがらある場所に向かいました。彼女から教えられていた、吸血族の聖地である古い教会です。年に一度、吸血族の会合があるそこに行けば、生き残っている者が訪れるかもしれない、と」
美汪が持つ香りは、純血の吸血族に共通したものでもあった。
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「吸血族の虐殺……それからです、花を吐く奇病が現れたのは。人間たちは『吸血鬼の呪いだ』とのたまいました。真相はわかりません。癌の起源が明確でないように、ある日突然昨日まで健康だった人間が花弁を吐く……確かにそれは、ただ静かに暮らしていた彼らが、自らの血の海に最期にかけた呪いだったのかもしれません」
穏花はコーエンの物語の中に入り込んだ気がしていた。
自身が当事者である今、疑う余地などなかった。
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